「9月入学」問題を考える
2020.6.5




 新型コロナウイルへの対応策としての学校の一斉休校が長期化した影響で、
学びの回復などを理由に、一部の高校生や知事らが「9月入学」の導入を訴え、9月入学問題が急浮上しました。

 9月入学問題を考えるということは、
教育とは何か、学びの保障とは何か、を改めて考え直してみるということでなければならないと思います。





 子どもの多様性を考えれば、「4月入学」「3月卒業」のような、一斉に入学し、一斉に卒業する現在の学校教育制度は、もっと子どもの関心や習熟度などに対応できるように見直す必要があるように思います。

 国が定める学習指導要領や確保すべき授業時数はもっと弾力的で柔軟であってよいと思いますし、教える内容が多く、教える時間が長ければよいということでもないと思います。入学時期も「4月入学」と「9月入学」のどちらかを選択し、卒業の時期もそれに合わせた仕組みにはできないのでしょうか。


 新型コロナウイルへの対応策としての学校の一斉休校の長期化で、急浮上した「9月入学」問題を考えるということは、教育とは何か、学びの保障とは何か、を改めて考え直してみるということでなければならないと思います。



◆9月入学 私は思う   
  賛成38% 反対43% 本社世論調査   朝日新聞 2020(令和2)年5月25日

 朝日新聞社が23、24日に実施した全国世論調査(電話)で、政府が検討中の「9月入学」を来年秋から実施することの賛否を聞くと、賛成38%、反対43%で、反対がやや多かった。
 年代別に見ると、18~29歳では賛成が51%で、反対の39%を上回った。30~50代は賛否が拮抗。60代以上は賛成が3割前後にとどまった。
 地域別にみると、大阪では賛成48%、反対34%で、賛成の方が多かった。東京では賛成が41%で、反対は39%。大阪以外の地域では賛成37%に対し、反対の44%の方が多かった。


  「9月入学」をめぐる経緯     朝日新聞(2020.6.3)をもとに作成
 2月27日  首相、小中高校などの3月2日からの一斉休校を要請
 4月 7日  7都道府県で緊急事態宣言、16日に全国に拡大
 28日  萩生田文部科学相が9月入学を「一つの選択肢として考えなければならない」と発言
 29日  首相が「様々な要素を勘案しながら前広に判断していきたい」と表明
 30日  政府、杉田和博官房副長官を中心に省庁の事務次官らによる検討に着手
 5月12日  自民党の検討チームによる検討開始
 14日  39県で緊急事態宣言を解除 、21日に近畿3府県も
 公明党の検討チームも初会合
 19日  文科省が来秋導入した場合の新小学1年生の対象範囲で2案を提示
 22日  自民党若手議員ら61人が「拙速な議論に反対する」と党幹部に提言
 23、24日  両日実施の朝日新聞世論調査で内閣支持率が29%に下落
 6月 1日 公明党が拙速な検討反対を首相に提言 
 2日 自民党が「直近の導入は困難」と首相に提言


◆9月入学「直近は困難」 
  自民WT、提言案まとめる   
朝日新聞 2020(令和2)年6月2日
 「9月入学」を検討する自民党のワーキングチーム(WT 座長:柴山昌彦前文部科学相)は1日、「今年度・来年度のような直近の導入は困難」などとする政府への提言書案をまとめた。直近の導入を困難とした理由について、「幅広い制度改革についての国民的合意やその実施に、一定の期間を要することとなるため」とし、今後については「総理の下の会議体において、各省庁一体となって、専門家の意見や、広く国民各界各層の声を丁寧に聴きつつ、検討すべきである」と記述した。

 「学びの保障」については、学校設置者の判断で今年度を2週間~1カ月など延長▷大学などで1年生の始期のみ遅らせる▷大学入学共通テストを含め大学入試の日程を2週間~1カ月程度後ろ倒し、などの検討を求める。

 柴山氏は29日のWTで意見をまとめようとしたが、導入賛成派の下村博文元文科相らの意見もあり、「総理直轄」などの文案を提示。しかし、慎重派の若手議員らが文言の削除を求め、まとまらなかった。その一人、井林辰憲衆院議員は取材に「9月入学ありきで議論を進めているように思った。それよりも学びの保障や入試の問題を優先してほしいと考えた」と述べた。今回の議論の混乱を国民にわびるべきだとも意見したという。

(宮崎亮)

首相「拙速はない」 公明見送り提言に 
 政府が検討する「9月入学」について、安倍晋三首相は1日、導入見送りを求める提言をまとめた公明党議員と首相官邸で会談し、「新型コロナウイルス(対策)と9月入学は別に考えた方がいい。(9月入学は)選択肢の一つだが拙速に行うことはない」と述べ、早期導入に慎重な姿勢を示した。
 提言では、9月入学は新たな教員確保や就職時期のズレによる労働力不足など「メリットを大きく上回るデメリットやコストが生じる」と指摘し、「拙速に検討を進めるべきではない」と結論づけた。

(大久保貴裕)


◆9月入学失速「レガシー」ならず 
 首相「難しい」事実上の断念 
朝日新聞 2020(令和2)年6月3日 (1面) 
 安倍晋三首相は2日、首相官邸で「9月入学」を議論してきた自民党のワーキングチーム(WT)座長の柴山昌彦前文部科学相と面会した。首相はその場で「法改正を伴う形での導入は確かに難しい」と伝えた。
 柴山氏は「今年度・来年度のような直近の導入は困難」とする党側の提言書を首相に手渡し、首相もこれに同調した形だ。

 9月入学をめぐる政権内の風景は、つい1カ月ほど前まで全く異なっていた。「これぐらい大きな変化がある中においては、前広に様々な選択肢を検討していきたい」。4月29日の衆院予算委員会。新型コロナウイルス禍で学校の再開が見通せない中、9月入学について問われた首相はそう語った。
東京都の小池百合子知事らの賛意も背に政権内の検討機運は高まった。

 来年秋の党総裁任期が近づく中、首相が目指す憲法改正は困難な情勢にある。来夏の東京五輪の開催も政権内で「新型コロナの行方次第」との見方が広がる。「政治的レガシー(遺産)がなくなりつつある。首相本人は前向きだ」。9月入学について、このころ官邸関係者はそう語っていた。だが、5月半ば以降に急落した内閣支持率に合わせるように、その勢いも急激にしぼんでいった。

(石井潤一郎)

◆官邸主導 教育現場置き去り 
  9月入学 党内外から反発続々  朝日新聞 2020(令和2)年6月3日 (2面)

 「子どもの学びの場を保障していく。9月入学は有力な選択肢の一つだ」。首相は記者会見で力を込めた。「総理はやる気だ」(首相に近い党幹部)との雰囲気が政権内を席巻した。9月入学はこの間、官邸幹部や首相側近たちが新型コロナウイルス禍に乗じるように主導してきた。
 首相は4月末、杉田和博官房副長官を中心に課題の洗い出しを指示。大型連休明けに自民党内にワーキングチーム(WT)が立ち上がり、政府と党が同時並行で議論を進めた。WTは首相に近い文部科学相経験者らが牽引。座長の柴山昌彦・前文部科学相は当初「今年はともかく来年導入の方向でまとまるだろう」との見通しを周囲に語っていた。

 だが、こうした見方は、9月入学が社会に及ぼす混乱の大きさが明らかになるにつれ変質していく。
 WTによる有識者の意見聴取では反対論が続出。早稲田大の田中愛治総長らは「教育システムの破壊になりかねない」と警告した。1学年を17カ月としたり、5年かけて段階的に移行したりする文科省の検討案などが報じられると、制度の複雑さや課題を問題視する意見が急速に広がった。反対論を後押ししたのが政権への逆風だった。

 5月下旬の世論調査で、内閣支持率が2012年末の現政権発足から最低水準にまで落ち込むころには、党幹部も表だって慎重論を唱え始めた。25日、政府が緊急事態宣言を全都道府県で解除し、学校再開のめどが見えてくると、導入に向けた機運は一気にしぼんだ。
 WTも「導入見送り」を求める提言内容で最終調整に入った。提言に「総理の下の会議体で検討すべき」と協議継続につながる文言を盛り込むことが精いっぱいだった。

(石井潤一郎、太田成美、楢崎貴司)

入試改革・一斉休校…招いた混乱
 文科省の幹部は、4月末から、検討の推移を冷めた目で見つめていた。厳しい見方が強かった背景には、1980年代の中曽根内閣の臨時教育審議会で、秋入学への移行が議論された経緯がある。文科省内では、すでに論点や課題が臨教審でほぼ整理し尽くされているとの考えが大勢だった。しかも、今回検討するのは臨教審で検討された入学時期の「7カ月前倒し」案ではなく、年度の終わりを5カ月遅らす「後ろ倒し」案。今も諸外国と比べて遅い義務教育の開始年齢が、さらに遅れることになる。

 積み重ねてきた議論を置き去りにするような議論には、専門家からも慎重論が続出。教育関係者らから未就学児童へのしわ寄せや待機児童問題、巨額の財政・家計負担の懸念が示され、反対意見は日に日に強まっていった。

 首相にとって、そもそも教育改革は政策の一つ。これまでも政治主導にこだわってきた。第1次安倍政権では「戦後レジームからの脱却」の象徴として憲法改正とともに「教育再生」を掲げ、教育基本法を改正し「愛国心条項」が盛り込まれた。第2次安倍政権以降で文科相に就任した6人のうち、首相の出身派閥である自民党細田派が5人を占める。信頼できる首相側近を起用してきたのは、政治主導を強める狙いからだ。だが、その政治主導によって、教育現場が混乱する事態も相次いでいる。

 今回の新型コロナをめぐる対応では、文科省が感染者が出た場合の地域限定での臨時休校の検討について通知を出した矢先の2月27日、首相は一斉休校要請を独断ともいえる形で表明した。さらに、9月入学の議論に時間が割かれたことで、今年度の大学入試への対応の検討は大幅に遅れた。
 文科省幹部は、政権分野における政治主導について「入試改革を迷走させた失敗から何も学んでいない。官邸や一部の政治家は専門家の声を聞かず、批判に耳を傾けず、素人の思いつきみたいな議論を続けた」と厳しく批判。「過ちが検証されないまま忘れられれば、またいつか同じことが繰り返される」と嘆いた。

コロナ第2波でも… 一斉休校には慎重 首相方針
 安倍首相は2日、新型コロナウイルスの感染で「第2波」が起きた場合でも、全国的な学校の一斉休校には慎重な見方を自民党議員に伝えた。「9月入学」に関する提言を手渡した同党の柴山前文科相らに首相は「第2波、第3波が来た時でも、今回の経験を生かし、なるべく全国的な休校措置などをとる必要がない形での取り扱いも可能ではないか」などとと説明したという。

(宮崎亮、岡村夏樹、西村圭史)





◆知事会「9月入学検討継続を」  朝日新聞 2020(令和2)年6月20日
 全国知事会長の飯泉嘉門・徳島県知事らは19日、萩生田光一文部科学相とオンラインで面会し、コロナ禍での長期休校を受けた学習の保障や、高校・大学での9月入学導入の検討継続を要望した。
 知事会によると、萩生田氏は9月入学について「直ちに導入しないが」としつつ、政府の教育再生実行会議で検討していくと答えた。












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