気になる障害者関連ニュース






知的障害者施設の

不妊処置提示問題を考える

《結婚や同居を望む男女に不妊処置を提案》


2022.12.23/2022.12.28/2023.1.5/2023.4.9





 2022(令和4)年12月20日、北海道の社会福祉法人が運営する知的障害者が利用する施設(グループホーム)で、結婚や同居を望む男女に不妊処置を求める提案をしていたことが報道されました。

 北海道は、本格的な調査に乗り出し、手術の経緯などについて調べているとし、厚生労働省は、事実関係を把握して必要な対応を検討するということです。
 障害者団体は、権利の侵害だとして、実態解明が急務だする声明を出しました。

 報道は、いわゆる「優生思想」の問題だとする見方でとらえているようですが、そうだとすれば、それはちょっと違うと思います。何が違うかという点が、これからの日本の障害者福祉にかかわる問題を考える上でとても重要なことではないかと思います。



報道内容の概略
何が問題かを考える
*********
*******





報道内容の概略

 北海道の社会福祉法人が運営する知的障害者施設で、施設を利用する男女が結婚や同居を望んだ場合、本人や家族の同意を得て、パイプカット手術や避妊リング装着などの不妊処置を提示していた。
 25年ほど前から同様の対応をとり、1996年以降、8組16人が応じたという。このうち6組は現在、同じ法人の運営するグループホームで同居し、残る2組は結婚し、通所しながら就労支援を受けていたが、1組は自立のためすでに退所したという。




知的障害者に不妊処置提示
 北海道の施設 8組16人応じる  
朝日新聞 2022(令和4)年12月20日
 19日に記者会見した(グループホームを運営する社会福祉法人の)理事長らによると、知的障害のある男女が結婚や同居を希望した場合、障害者カップルが子育てをすることの困難さなどを、保護者同席のもとで説明。その上で「子どもはほしくない」との意向であれば、男性にはパイプカット手術、女性には避妊リングなどの不妊処置法を紹介してきたという。
 1996年ごろ以降、8組16人が応じた。このうち6組は現在、運営するグループホームの個室で同居している。1組は自立のためすでに退所したという。

 理事長は「障害者同士の自由な付き合いを尊重しつつ、現実にある様々な障壁を包み隠さず、真摯に家族や本人に説明するのが我々の責務。その中で不妊処置を提案してきた。本人の意向に反して強制したことはない」と説明。不妊処置が施設利用の条件ではないとする一方で、「障害者である親の面倒は見られるが、子どもが生まれてもサービスの対象外。きれいごとでは済まされない」とも語った。

 厚生労働省の担当者は、障害などを理由とした不妊手術は認められないとした上で「北海道を通じて事実関係を確認し、国として必要な対応を検討したい。他の施設への調査の必要性も含めて検討するという。
 グループホームは原則18歳未満の子どもは入所できない。仮に入所者に子どもが生まれても自身で育てられない場合には、社会的養護施設に入れるなどの選択を迫られることになり、入所者の出産などを想定した制度が未整備となっている実態もある。

(安倍弘明、石川友恵、平岡春人)


障害者施設で不妊処置提示
 当事者団体「実態解明を」  
朝日新聞 2022(令和4)年12月21日
 北海道の社会福祉法人が運営するグループホームで、知的障害がある利用者の男女が結婚や同居を望んだ場合に不妊処置を提示ていた問題について、障害者団体からは20日、「権利侵害」として厳しい声があがった。加藤勝信厚生労働相は同日、「仮に本人の意思に反して不妊手術などを(入所の)条件とするようなことがあれば適切ではない」との考えを示した。

 障害者や家族らでつくる日本障害者協議会は同日、声明を発表。今回の不妊処置について「けっして看過できない。暮らしの場や働く場を提供することと引き換えに、子どもをもつ権利が奪われた」と指摘。全国規模での被害の実態解明が急務だとした。
 加藤厚労相は同日の閣議後会見で「結婚、出産、子育ても含めて、障害者の方々がどのような暮らしを送るか、本人が決めるのが前提。意思決定を丁寧に支えていくことが重要だ」と指摘。「事実関係の把握を行い、どう対応をとるべきか検討したい」と述べた。
 北海道庁が19日、現地調査やヒアリングなどを行い、事実確認をしている。
(森本美紀、石川友恵)

公益財団法人日本知的障害者福祉協会
 声明「グループホームにおける不妊処置の報道を受けて」令和4年12月22日






何が問題かを考える

 報道は、いわゆる「優生思想」の問題だとする見方でとらえているようですが、そうだとすれば、それはちょっと違うと思います。何が違うかという点が、これからの日本の障害者福祉にかかわる問題を考える上でとても重要なことではないかと思います。

 それは、結婚や同居を望む知的障害者施設を利用している男性と女性への施設側の対応は、確かに人権を侵害するとして問題視されることかもしれません。しかし、障害者カップルが子育てすることの困難さなどを保護者同席のもとで説明してきたという施設側の対応にも実情を踏まえたという理由があり、その理由も確かなことであり、その点を直視し、うやむやにしてはならないところにこの問題の重要性があると思うからです。

 子をもつ権利を尊重するということは、これから生まれてくる子の権利をないがしろにすることではないはずですから、生まれてくる子が健やかに育つ(育てられる)権利の確保もきわめて重要な問題だと思います。どちらも含めてどう考え、どう対応するかというところに「共生社会」にかかわる問題があり、障害者権利条約でいう「合理的配慮」にかかわる問題があるということではないでしょうか。






「不妊強要は違法」厚労相通知  朝日新聞 2023(令和5)年1月24日
 北海道の社会福祉法人が運営する知的障害者施設で、結婚や同居を望んだ利用者に不妊処置を提示していた問題をめぐり、加藤勝信厚生労働相は23日、全国の自治体に対し、障害者の意思と人格を尊重した適切なサービス提供を求める通知を出した。サービス利用の条件として不妊処置を求めるといった事案を把握した場合は、速やかに同省に報告することも要請した。

 通知は20日付。結婚や出産、子育ては障害者本人が決めることが前提とした上で、事業者がサービス利用の条件に避妊処置を求めたり、利用者に処置を強要したりすることは法律違反にあたると指摘。「障害があることを理由に子どもを産み育てられないものとして支援することはあってはならない」とし、障害者の立場に立ったサービス提供の徹底などを求めた。法令違反が疑われる事案があれば、事実確認や指導監査を徹底することも要請した。

 加藤氏は2023年度から「障害者の結婚・妊娠・出産・子育てについて、現場の実態や好事例を把握し研究を進めることを検討したい」とも表明。同省の担当者は「これまで制度のはざまで実態を十分把握できていなかった」と話し、今後、望ましい支援のあり方を検討していく考えだ。

(中村靖三郎)





厚生労働省:令和5年1月20日
 「障害福祉サービス事業者における障害者の希望を踏まえた適切な支援の徹底等について(事務連絡)

 令和5年1月20日に厚生労働省より標記の事務連絡が、各都道府県・市町村障害保健福祉担当部局、児童福祉担当部局、母子保健担当部局に宛て発出されました。

別添:参考資料 (意思決定支援・子育て支援・母子保健関係施策)






~~以下準備中~~


 




















copyright ⓒ2012 日本の「教育と福祉」を考える all rights reserved.