特定非営利活動促進法とNPO法人    
 
 2018.7.28/2019.1.12/2020.3.30/2021.2.6/2023.1.22


 平成10年3月に成立し、同年12月に施行された特定非営利活動促進法(NPO法)により設立された法人をNPO法人(特定非営利活動法人)という。NPOとは、Non-Profit Organization(非営利組織)の頭文字をとった言葉です。
 
NPO法人は一般企業とは異なる非営利組織であり、柔軟な発想で地域社会において求められる多様な事業への参入が期待されている。
 その数は、平成29年度現在5万を超えているという。
NPO法が施行された意義とは........、NPO法人による活動の実態とは........、




NPO法制定の目的とNPO法人の活動
 NPO法人(特定非営利活動法人)は、NPO法(特定非営利活動促進法)に基づく「特定非営利活動」を行うことを目的とする団体・法人のことをいいます。
 特定非営利活動とは、不特定多数の人の利益に寄与することを目的とする活動のことで、法に定める20の活動分野に該当することが条件となっています。
 なお、特定非営利活動に支障のない限り、その他の事業も行うことができ、その他の事業により利益が生じた場合は、その利益を特定非営利活動事業のために使用しなければならないと規定されています。
 



 特定非営利活動促進法 (平成10.3.25 最新改正:平成28年)

(目的)
第1条
 
この法律は、特定非営利活動を行う団体に法人格を付与すること並びに運営組織及び事業活動が適正であって公益の増進に資する特定非営利活動法人の認定に係る制度を設けること等により、ボランティア活動をはじめとする市民が行う自由な社会貢献活動としての特定非営利活動の健全な発展を促進し、もって公益の増進に寄与することを目的とする。

(定義)
第2条
 この法律において「特定非営利活動」とは、別表に掲げる活動に該当する活動であって、不特定かつ多数のものの利益の増進に寄与することを目的とするものをいう。
 この法律において「特定非営利活動法人」とは、特定非営利活動を行うことを主たる目的とし、次の各号のいずれにも該当する団体であって、この法律の定めるところにより設立された法人をいう。
 次のいずれにも該当する団体であって、営利を目的としないものであること。
イ 社員の資格の得喪に関して、不当な条件を付さないこと。
ロ 役員のうち報酬を受ける者の数が、役員総数の三分の一以下であること。
 その行う活動が次のいずれにも該当する団体であること。
イ 宗教の教義を広め、儀式行事を行い、及び信者を教化育成することを主たる目的とするものでないこと。
ロ 政治上の主義を推進し、支持し、又はこれに反対することを主たる目的とするものでないこと。
ハ 特定の公職(公職選挙法第三条に規定する公職をいう。以下同じ。)の候補者(当該候補者になろうとする者を含む。以下同じ。)若しくは公職にある者又は政党を推薦し、支持し、又はこれらに反対することを目的とするものでないこと。

附則
別表
(第二条関係)
一 保健、医療又は福祉の増進を図る活動
二 社会教育の推進を図る活動
三 まちづくりの推進を図る活動
四 観光の振興を図る活動
五 農山漁村又は中山間地域の振興を図る活動
六 学術、文化、芸術又はスポーツの振興を図る活動
七 環境の保全を図る活動
八 災害救援活動
九 地域安全活動
十 人権の擁護又は平和の推進を図る活動
十一 国際協力の活動
十二 男女共同参画社会の形成の促進を図る活動
十三 子どもの健全育成を図る活動
十四 情報化社会の発展を図る活動
十五 科学技術の振興を図る活動
十六 経済活動の活性化を図る活動
十七 職業能力の開発又は雇用機会の拡充を支援する活動
十八 消費者の保護を図る活動
十九 前各号に掲げる活動を行う団体の運営又は活動に関する連絡、助言又は援助の活動
二十 前各号に掲げる活動に準ずる活動として都道府県又は指定都市の条例で定める活動



内閣府 npo ホームページ

法律・制度改正

 令和2年12月2日に「特定非営利活動促進法の一部を改正する法律(令和二年法律第七十二号)」が成立し、12月9日に公布されました。
施行日は令和3年6月9日で、今後随時お知らせを掲載していきます。






◆NPO法成立から20年 社会を変えた非営利の活動  朝日新聞 2018(平成30)年3月19日 
 20年前の今日、NPO法(特定非営利活動促進法)が成立した。社会課題の解決に、行政や企業にはない柔軟さで取り組む非営利組織。その数は5万を超え、ちょっと大げさに言えば、私たちの生き方や価値観にも影響を与える存在になった。NPOという器を得て、社会はどう変わったのか。
2度の大震災 復興の支えに
 来年秋から、NPOの活動に大きく弾みをつけそうな制度が始まる。休眠預金の活用だ。休眠預金は金融機関に預けたまま10年以上出し入れのないお金のこと。年約700億円発生し、今は金融機関の収入になっている。
 2016年に成立した休眠預金活用法にもとづき、払い戻しに備える分を除いた年500億円ほどが、NPOなど民間の公的な活動に生かされるようになる。
 NPO法ができたのは1998年。それまでは市民活動団体は法的な地位を得にくく、不動産を借りるのも銀行口座を開くのも難しかった。公的な活動を行う公益法人の法制度には財団法人や社団法人があったが、官庁による許認可制で、縛りが大きかった。
 転機となったのは1995年の阪神大震災。被災地には延べ100万人以上のボランティアが駆けつけて救援活動を行い、「ボランティア元年」と呼ばれ、民のパワーを見せつけた。
 要望の大きかったNPOへの寄付控除は2001年に実現。認定NPO法人になれば、寄付した個人や企業の税金が戻ってくるようになったが、認定のハードルをいかに下げるかが宿題として残されている。

起業・働き方も多様化
 NPOができる前も、社会に異議を申し立てる市民運動や、暮らしに根ざした消費者運動などはもちろんあった。 だがNPOという器を得て、市民活動はより多様化。ボランティアや補助金頼りではなく、活動から収益を得る「事業型」NPOも増えてきた。
 誤解されがちだが、NPOは営利を目的とはしないが、活動により利益をあげてよい。ただそれを分配してはならず、次なる事業の活動費として使う。

ネット通じ資金調達
 多くのNPOの悩みは資金難だ。財政規模が数十億円の団体もあるが、内閣府が15年度に行った調査で、NPOの収益規模は1千万~5千万円が約4割を占める。課題として60%が「収入源の多様化」を挙げた。




朝日新聞 「NPOで社会を変える」
  ― 記事と掲載日ー (全8回)

 未来の課題 先取り  関わり方人それぞれ  2018(平成30)年6月20日
 本当にNPOで社会を変えることなんて、できるのでしょうか。全8回で社会の変え方、教えます。
 4月末現在、NPO法人の数は5万1千を超える。法人の数は右肩あがりに増えてきた。NPOは社会課題を解決したいという思いが出発点にあるため、目的やミッションが明確だ。この目的やミッションが事業を進める際の設計図になる。
 また、NPOが掲げる目的やミッションに共感する仲間が集まって来やすいのも特徴だ。最近では株式会社や社団法人も簡単にできるようになったが、NPO法人はとりわけ低いコストで法人を設立できるというメリットもある。
 自らNPOを立ち上げなくても、活動に参加することはできる。同じ課題に取り組んでいるNPOがないか探してみるのも手だ。同じ課題に取り組むNPOが見つかれば、NPOの職員や会員になったり、ボランティアで手伝ったりする「仲間になる」ほか、署名活動をしたり寄付をしたりして「応援する」など、様々な関わり方がある。

 見つけた課題、行政任せにせず 先駆性と柔軟性 生かして  2018(平成30)年6月21日

 どんな社会課題に取り組むか。その「気づき」がNPOを立ち上げる出発点になる。原動力になるのは、企業や行政に頼らず、市民の力で何とかしようという「思い」だ。
 NPOの強みは先駆性と柔軟性にある。行政はリスクを恐れて新たな社会課題にすぐに対応できない面があるが、NPOなら「まずやってみる」という「実験」ができる。特定の人々のニーズに応じて弾力的に対応できる点も、公平性が求められる行政との大きな違いだ。
 NPOが持つネットワークや人脈を生かせば顧客が増える可能性がある。NPOにとっても、企業のノウハウが生かせれば活動の幅が広がる。


 仲間巻き込み、共感の輪 広げる  助けられ上手になって  2018(平成30)年6月22日
 NPOは志を持った人がつくる。でも少人数では、できることが限られる。目的を成し遂げるには、自分たちの思いを理解し、支援してくれる人が必要だ。
 会社員でも夜間や休みを使えば、NPO活動に取り組むことができる。勤務先とは違う名刺を持つ人も多く、付き合いの範囲は格段に広がっている。畑違いの世界を知ることで本業に生かせることもある。
 NPOは関わり方の間口が広い組織です。寄付や場所・施設の提供、ボランティアなど様々な支援で成り立っています。その点からいうと、どれだけ上手に助けてもらえるかも大事なポイント。

 思いを形に 事業で活動資金も  お金は汚い意識 捨てて  2018(平成30)年6月23日
 NPOの活動を続けるうえで「思い」の共有や「仲間」集めとともに、活動資金の確保は大切な仕事だ。NPOは「非営利組織」と称するため誤解されやすいが、無報酬ではなく、事業を通じて利益を得ても問題ない。ただ、利益を配当などで株主に分配する企業と異なり、活動目的のために使うように決められている。
 内閣府の2017年度調査によると、NPO法人の約半数は総収益が1千万円以下だった。こうした規模の小さなNPOの収益源は仲間が出し合う会費が中心のことが多い。このほか寄付金や補助金・助成金も活用できる。事業収益を通じ支援者を増やす団体もある。
 NPOは社会をよりよくするために存在する。その活動を続けるための資金は不可欠だ。少人数のお金持ちではなく、大勢の人から集めることが大切。資金集めの過程で活動に共鳴してくれる人が増えれば社会によい変化が生じる。

 初心と成功体験 活動続けるコツ  地域の信頼に支えられて   2018(平成30)年6月28日
 企業だって設立して数十年後に生き残っているものはわずか。NPOを立ち上げても、活動を続けていくことは意外と難しい。NPO法人の数は4月末現在で5万1千を超えているが、その一方で解散した法人も1万5千を超す。
 当初の目的やミッションを無事達成して解散するケースもあるが、 中には 「目的とする事業が達成できなかった」「倒産」 という解散事例もある。 長く活動を続けるNPOとそうでないNPOの違いはどこにあるのか。
 「助成金頼りになったり、助成金が切れた途端に事業をやめたりというNPOもあるが、NPOは何のためにやるのかというテーマが大切。そこでぶれてはいけない」

 世に伝え、「自分ごと」に  理解広がり 自殺対策前進   2018(平成30)年6月29日
 おかしいと気づいた課題にNPOをつくって取り組んでも、多くの人たちにとってはまだどこか遠い話。社会の中で「見える化」し、解決の道すじに乗せていくには、世の中に広く知ってもらう必要がある。
 当事者の声を議員や役所に届けて法制度づくりを働きかけたり、当事者が体験を伝えて一般の人たちに理解を促したりする、アドボカシーと呼ばれる政策提言の視点は欠かせない。
 現場に近いNPOこそ、多くの人に共感してもらえるビジョンを示し、幅広い参加のプラットフォームを提示すべきだ。解決策は現場にあるからだ。

 ノウハウ共有、新たな活動の芽に 学び合える関係性築こう   2018(平成30)年6月30日
 現在、そして未来の社会課題を見つけ、立ち上がっていくNPO。しかし潜在的なニーズはあるのに活動の幅が広がらなかったり、創業者がいなくなると団体も活動を終えてしまったりするケースが少なくない。
 社会的課題の解決には時間がかかるので、仕組みをオープンにして、各地でまねをしてもらうことが大事。ある種の機密や心にしまっておきたいこともさらけ出してコーチングを受けられる関係性が重要。研修も複数の団体で一緒にやれば安くなるし、NPO同士で刺激し合える利点がある。

 戦略的な寄付集め 米国から学ぶ  セクター越えて協力   2018(平成30)年7月4日

 最終回は番外編として、NPO大国・米国のいまを見てみよう。NPOという言葉は、開拓時代から地域の自治を住民自らが担ってきたこの国で生まれた。米国のNPOには大学や病院なども含まれ、シンクタンクのアーバン・インスティテュートの調査によれば、2013年に内国歳入庁に登録した分で計約141万団体。日本でのNPOに近い「パブリック・チャリティー」はこのうち95万団体以上あり、寄付した人が税控除を受けられる。
 米国でNPOが盛んなのは、他の産業化社会に比べて人々が政府の関与を嫌い、自分たちのことは自らやりたいという建国の歴史や背景があるからです。そのため教育や健康管理、福祉事業などは、一義的に政府の責任とは思われていません。




朝日新聞 社説 2019.1.6 
 NPOと社会 「参加」の原点を大切に

 行政や企業ではない、社会の第3セクターとしての非営利組織(NPO)の意義は何か。
 NPOが法人として組織を整え、活動しやすくすることをを狙った特定非営利活動促進法(NPO法)が施行され、昨年末で20年が過ぎた。それを機に、1990年代に超党派による議員立法を呼びかけ、実現させた市民団体などが、各地で勉強会を開いている。 

 非営利法人に関しては、NPO法から10年遅れで公益法人制度も改革され、設立が簡単な一般法人制度ができた。法人の新設はNPO法人から一般法人へと中心が移ったが、両者に公益法人を加えた総数は10万を大きく超え、環境や福祉などの問題に取り組む主体として非営利法人はすっかり身近になった。

 「非営利」は無償のボランティアに限らない。活動を継続するには、寄付や会費、事業収入を組み合わせ、法人としての経営を安定させることが大切だ。ただ、株式会社の配当のような利益の配分はしない。
 そうした理解がこの20年で少しずつ浸透する一方で、非営利法人にも活動の成果が問われるようになってきた。かたや、もっぱら収益で評価される企業にも社会的責任への意識が高まり、「課題解決の一翼を担ってこそ発展できる」との経営者の発言が目立つ。若者らの間では、企業的な手法で社会課題に挑む「ソーシャルビジネス」への関心も高い。

 そんななかで、「非営利」の意義と特徴はどこになるのか。改めて注目されているのは、「参加」や「努力」だ。非営利法人が課題解決に取り組み、困っている人が支援を受けるという一方的な関係にとどまっては、企業と消費者の関係と大差ない。双方が当事者として集い、広く参加を募りながらともに考え、行動することにこそ非営利法人の存在意義がある、という問題意識である。
 こうした姿勢は、社会に新たな視点や価値観を示すことにもつながる。

 80年代から不登校問題に取り組む「東京シューレ」は、親に学び合いの場を、子どもには学校外の居場所をつくってきた。90年代末にNPO法人となり、フリースクールを展開。異端視されていたフリースクールは着実に社会に根を張り、「どうやって学校に通わせるか」から「無理に通う必要はない」への意識の転換を促してきた。

 一人ひとりの多様な取り組みを重ね、暮らしやすい社会をつくっていく。NPO法に込めた理念を大切にしていきたい。





世代交代「進まず」
 本社アンケート 回答の半数超   
朝日新聞 2023(令和5)年1月17日(1面)
 「ボランティア元年」と呼ばれる阪神・淡路大震災をきっかけに、特定非営利活動促進法(NPO法)が成立して今年3月で25年になる。朝日新聞は、震災を機に被災者の支援を目的に設立されたNPO法人など77団体にアンケートし、現状と課題を探った。

 その結果、回答した51団体の半数超で世代交代が思うように進んでいないことがわかった。18団体では60歳以上のスタッフが半数以上を占め、長年、スタッフが固定化している団体もあった。主な収入源として「自主事業」を挙げる団体が最も多く、資金不足に悩む団体が目立った。ニーズは高まる一方、資金不足で若い人材を雇えず、世代交代が進まない――。浮かんだのは、そんな実態だ。

(田添聖史、稲垣大志郎、岩本修弥)

未来の支え手 どう確保
 「若者もボランティア精神で、とはいかない」  朝日新聞 2023(令和5)年)1月17日(2面)
 行政の手が届かないところに目配りして支える。そんな市民の動きを後押しするために、特定非営利活動促進法(NPO法)は生まれた。阪神・淡路大震災で活動した団体などへのアンケートから浮かぶのは、資金不足で世代交代が進まない実態だ。一方で、次世代へつなげようと独自の取り組みを続ける団体もある。  (稲垣大志郎、田添聖史、岩本修弥)

特定非営利活動促進法(NPO法)阪神・淡路大震災をきっかけに、超党派の議員立法で1998年3月に成立した。2022年11月末時点で全国で5万502法人が認証されている。

法人格「事業報告に手間」
 朝日新聞のアンケートに回答した51団体の規模は1~101人と幅広く、10~19人が18団体で最も多かった。大半は兵庫県内に拠点を置く。
 現在の課題(複数回答)を尋ねると、半数超の団体が「活動資金」「人手不足」を選び、4割超が「世代交代」を挙げた。世代交代については、半数超の計27団体が「進んでいない」「どちらかというと進んでいない」とし、「進んでいる」「どちらかというと進んでいる」の計24団体を上回った。

 背景に浮かぶのは資金不足だ。高齢者や女性を支援する団体は「人材確保のため給与を上げたいがままならない」。地域の交流の場をつくる団体は「若手を採用したいが収益事業が少なく、世間並みの給料を払えない」とした。
 世代交代が進まないことについて、災害時の支援計画づくりをサポートする団体は「このままでは将来はない」とした。
 「これまでの歴史を短期間で伝えにくい」「事業スピリットの継承が危惧される」など、震災当時からの思いや理念を共有する難しさも浮かんだ。

 NPO法についても尋ねた。「法人格をもつことで信頼度が向上した」「市民が社会課題に関与する枠組みができた」といったプラス面とともに、「事業報告などで手間がかかる」「委託事業で行政の下請けになっている」とマイナス面を挙げる団体が多かった。
 主な収入源については「自主事業」を選ぶ団体が最も多く、「会費」「寄付」などが続いた。最も必要なこととして「寄付文化の醸成」を挙げる団体が目立った。
































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