幼保一体化問題について








《幼稚園と保育園(保育所)と認定こども園》
《子ども・子育て支援新制度と小規模保育所について》

《保育所は1947年に成立した児童福祉法で制度化された》
《幼稚園と保育所の機能を併せ持つ「認定こども園」をめぐって》



 幼稚園と保育所の一体化問題はこれまでも議論されてきたことですが、保育所であれ幼稚園であれ、その取り組む目標は、次代を担う子どもの健やかな成長発達を願うという点では同じはずです。

 保育園と幼稚園は、就学前の人間的成長発達に関わる一番大切な基礎の部分であり、本来的には一体的なものでなければならないはずです。所管が分かれていること自体に問題があると考えた方が自然ではないでしょうか。

 人が人としてよく育ち、よく生きるという意味の教育であり、福祉であるならば、教育も福祉も別々のものではないはずです。


 文部科学省:幼保一体化について(平成23年2月)





《幼稚園と保育園(保育所)と認定こども園》


  認定こども園と幼稚園・保育所
   幼稚園 保育所  認定こども園 
年 齢  3~5歳対象  0~5歳対象  0~5歳対象 
運営費補助の所管
文部科学省 厚生労働省 内閣府
特 色  利用に親の就労などの要件はない
幼児教育が充実 
親の就労など保育の必要性が要件
長時間預かってくれる
親の就労状況に関わらず利用可
幼稚園と保育園の利点を併せ持つ

※親が働いているかどうかにかかわらず、0歳~就学前の子どもが利用できる「認定こども園」の数は16年度は4001 で、14年度の1360から急増している。


幼稚園とは
 幼稚園の管轄は文部科学省で、満3歳から、小学校就学の始期に達するまでの幼児を対象とする学校教育法に定める学校に含まれます。
 幼稚園の「先生」は、教育職員免許法に定める幼稚園教諭免許状を有することが資格要件となっています。

保育園と保育所
 保育園(所)の管轄は厚生労働省で、0歳から小学校入学前までの乳幼児を対象とする児童福祉法に定める児童福祉施設のことです。
 保育園と保育所の名称が混在していますが、施設の規模や公立か私立かによって呼称も違うようです。
 保育職に従事するには児童福祉法に定める「保育士」の資格を有することが条件となっています。

認定こども園(4つの種類がある)
 所管は内閣府で、親が働いているかどうかに関わらず、0~5歳児が利用できる施設で、在園中に親が働き始めても子どもは同じ園に通い続けられます。
 幼児教育の充実した幼稚園と、長時間預かる保育所の利点を併せ持っています。
 2006年度に導入され、その数は、 内閣府子ども・子育て本部によれば 2015年4月1日時点で 2836件で、 次の4種類ある。
    ①認可保育所と幼稚園が連携する「幼保連携型
    ②幼稚園が保育機能を備えた「幼稚園型」 
    ③認可保育所が保育が不要な子も受け入れる「保育所型」 
    ④認可された幼稚園・保育園がない地域の「地方裁量型」 

内閣府:認定こども園について




《子ども・子育て支援新制度と小規模保育所について》


 保育所のひとつに、定員が19人以下の小人数を預かる施設がある。家庭的な保育が特徴で、認可外ですが、平成27年4月からの「子ども・子育て支援新制度」では、「小規模保育所」として自治体から補助を受ける「認可」の対象になります。


<子ども・子育て支援新制度とは>
 幼児期の教育や保育、地域での子育てを総合的に支援する施策。保育所を増やすほか、幼稚園と保育所の両方の機能を持つ「認定こども園」を増やしたり、家庭で子育てする親の支援として一時預かりなども充実させたりする。
 消費税が10%に引き上げられた場合、増税分のうち年間7千億円が新たにあてられる。

 内閣府:子ども・子育て支援新制度の概要


従来の認可保育所と小規模保育の違い  国の有識者会議で決まった基準。これをもとに市区町村が条例で定める
    従来の認可保育所                     小規模保育  
   A 型   B 型  C 型 
対 象  0~5歳  0~2歳  
定 員 20人以上  6~19人  6~10人
(当面の間は15人まで)
職 員 0歳児⇒3人につき1人
1、2歳児⇒6人につき1人
保育所の配置基準(左記)に加えて1人   0~2歳児⇒3人につき1人
(補助者を置く場合5人につき2人)
職員の
資 格 
保育士   保育士が2分の1以上  市区町村長が認めた家庭的保育者 
1人あたり
の面積 
0、1歳⇒乳児室
(1.65平方メートル)
ほふく室
(3.3平方メートル)が必要 
2歳以上⇒保育室など
(1.98平方メートル)


0、1歳⇒3.3平方メートル
2歳⇒1.98平方メートル 
0~2歳⇒3.3平方メートル 
給 食  自園で調理  自園で調理(連携施設などからの搬入可) 


◆準認可保育所どうなる 基準満たせず閉園も
 仙台 3年後に助成廃止  東京「認定を補完」継続   
朝日新聞 2014(平成26)年12月4日

 国の基準を満たした認可保育所のほかに、自治体独自の基準で認定して運営費も助成する「準認可」の保育所があります。(名称も自治体によって異なる)こうした「準認可」の保育所は、子ども・子育て支援新制度が始まるとどうなるのでしょうか? 自治体によって対応は異なるようです。
 自治体が認定する「準認可」の保育所は、横浜市が1997年に「横浜保育室」、東京都が2001年に「認証保育所」を始めるなど待機児童の多い都市部で広がった。来年4月に始まる「子ども・子育て支援新制度」では助成対象が認可保育所や小規模保育事業などに限られ、「準認可」は対象外だ。
 「準認可」の事業者が助成を受けるには、新制度の枠組みに入る必要がある。国は待機児童解消加速プランで「準認可」を含む認可外保育所に対して改修費などを補助する制度を設けており、認可化を促す自治体も多い。


 移行、ゆとり持って 
 「保育園を考える親の会」の普光院(ふこういん)亜紀代表の話
 独自の助成制度を縮小する自治体もあるが、全体的には継続する自治体が多いようだ。待機児童の多い自治体では「準認可」制度を積極的に活用してきた。在園中の子どもにしわ寄せが来ないように、いきなり制度を打ち切るのは避けるべきだ。保護者にとっては、保育所に入るための「保活」が大きな負担となっている。制度を廃止する場合はゆとりを持って移行し、廃園になる保育所があるなら、自治体が責任を持って園児の転園先を確保してほしい。

                                                  (伊藤舞虹)


※待機児童対策で認定こども園が急増するなかで、保育施設の不正が相次いでおり、自治体の関わり方が問われている。

こんな問題が発生!!

◆こども園認定取り消しへ 全国初 定員の1.5倍の園児を受け入れ 
 兵庫県姫路市の 私立認定こども園「わんずまざー保育園」 朝日新聞 2017(平成29)年3月20日
 給食40食70人に分配 定員超過で常態化  朝日新聞 2017(平成29)年3月21日 

 姫路市によると、園は定員46人に対し0~5歳児を計約70人受け入れていた。市は2月2日に定期監査に入ったが、園は定員通りの園児数が記載されたうその出席簿を提出していた。
 園長によると、市から監査の事前連絡を受け、当日は定員超過になる園児は休ませていたといい、「定員超過をごまかしていた。保育園に預けられない保護者が困っていたので、本当はいけないが、助けたかった」と釈明した。 また、園は給食を約40人分しか外注せず、約70人で分けることが常態化。
 同園は2003年11月に認可外保育園として開設され、15年3月に県からの認定を受けた。15年度は国、県から計5千万円の運営費を交付されている。同園では保育士数を実際よりも多く報告して給付金を水増し請求していたことも明らかになっており、月内にも県が認定を取り消す方針。さらに水増し請求分の返還なども求めるという。

◆「遅刻に罰金」「時間外手当出ず」
 姫路のこども園 労基法違反の疑い 保育士訴え
   朝日新聞 2017(平成29)年3月22日

 複数の保育士が「遅刻に罰金を科せられる」などと姫路市に訴えていたことがわかった。 市は不当労働契約で労働基準法違反の疑いもあるとして、姫路労働基準監督署に報告した。市によると、県と市が2月23日に抜き打ちで実施した特別監査で判明した。保育士から「遅刻をしたら給与から罰金1万円を引かれる」「時間外手当をもらっていない」などの訴えがあったという。


◆こども園での指導 特例延長
  幼稚園教諭と保育士 どちらでも可能 朝日新聞 2018(平成30)年10月10日

 内閣府は9日の「子ども・子育て会議」で、幼稚園教諭の免許か保育士の資格のどちらかがあれば、幼保連携認定こども園で教育・保育する「保育教諭」と認める特例を、2024年度末まで5年間延長する方針を示し、了承された。


 子ども・子育て支援新制度の主な施策の見直し
幼保連携型認定こども園では、幼稚園教諭免許か保育士資格のどちらか一つがあれば保育教諭と認める特例措置
24年度末まで延長
認定こども園での3歳児以上の8時間保育は「子ども35人に対し職員1人」との経過措置 20年度から「3歳児は20対1、4歳以上は30対1」に
 乳児4人以上が利用する幼保連携型認定こども園では、保健師、看護師、准看護師のうち1人に限って保育教諭とみなす 24年度末まで延長





《保育所は1947年に成立した児童福祉法で制度化された》

◆自立支えた手作り保育所
「苦い思い、次世代にはさせぬ」 高まる需要 整備追いつかず
 朝日新聞 2015(平成27)年1月4日

 保育所は1947年に成立した児童福祉法で制度化された。当時、保育所は不足。 このため出版社に勤める東京の女性らが中心となって1954年に結成した「働く母の会」は自分たちで共同保育所をつくり、共同保育所づくりが各地に広がった。高度経済成長とともに保育所を求める母らの声はさらに高まり、自治体は整備を進めてきた。
 1990年には前年の出生率が過去最低となる「1.57ショック」があり、少子化時代の到来を示す一方、共働き世帯数が専業主婦世帯数を上回るようになり、都市部を中心に待機児童が増えた。
 政府は1994年、初の総合的な少子化対策「エンゼルプラン」を策定。その後も待機児童対策を打ち出してきたが、保育所の増加をニーズが上回る状況が今も続く。 2014年4月現在、全国の待機児童数は2万1371人。0~2歳児が8割以上を占める。


  ■戦後の保育史

1947年 児童福祉法成立。49年まで第1次ベビーブーム 
  60年代半ば
    「ポストの数ほど保育所を」という合言葉が生まれるなど、保育所を求める運動が盛んに
  71年 第2次ベビーブーム。74年まで
  90年 前年の合計特殊出生率が、「ひのえうま」だった66年を下回って過去最低となり、「1.57ショック」と言われた
  92年 育児休業法施行
  94年 保育所の拡充などをうたうエンゼルプランを策定
2001年 東京都独自の認証保育所開始
      国が待機児童ゼロ作戦
  15年 4月に子ども・子育て支援制度が始まる


担当記者:北村有樹子

◆小規模保育所「3歳の壁」
 卒園後、認可保育所・幼稚園と連携なく・・・  
朝日新聞 2016(平成28)年2月26日 

 0~2歳児が対象の小規模保育所には、卒園児がエスカレーター式に入れる受け入れ園(連携施設)を用意する必要があります。しかし確保できていないケースが多く、たくさんの親子が卒園時点でもう一度、保育園探し(保活)を強いられる「3歳の壁」に直面しています。



《幼稚園と保育所の機能を併せ持つ「認定こども園」をめぐって》

◆こども園 補助金増額 減収で認定返上の動き受け
  3府省方針 財源確保 課題   
朝日新聞 2014(平成26)年10月25日 
 幼稚園と保育所の機能を併せ持つ「認定こども園」をめぐり、一部の事業者が補助金減額を理由にこども園の認定を返上しようとしている問題で、内閣府など関係3府省は24日、補助金を増やす方針を明らかにした。
 認定こども園はいま、文部科学省と厚生労働省から補助を受けている。 来年度(平成27年度)からの子ども・子育て支援新制度で内閣府所管の補助に一本化され、仕組みも変わる。
 現在、幼保連携型認定こども園では施設長の給与補助は2人分出ている。幼稚園と保育所部分にそれぞれ施設長が必要とされているからだ。これが一本化で1人分に減る。また園児が多ければ事務の人件費などを効率化できるとし、園児1人あたりの単価を大規模な園ほど低く設定している。
 結果として、大規模なこども園を中心に減収が見込まれる施設が相次ぎ、認定を返上して保育所や幼稚園に戻ろうとする動きが表面化した。内閣府などは、施設長の2人分の給与補助を継続する経過措置や、定員規模に応じた加算方法の見直しで、大規模な園の補助を拡充する方針。
 全国認定こども園協会と全国認定こども園連絡協議会の2団体の委員らは「対処方針をありがたい」と評価した。ただ「財源がとれないと新制度そのものがスットプする」といった、財源確保を不安視する意見もあった。事業者からは対応の遅さを指摘する声もあがる。  

(畑山敦子)


◆園長2人分給与補助継続へ
 最長5年 認定こども園巡り政府
   朝日新聞 2014(平成26)年12月26日 

 「認定こども園」をめぐり、一部事業者が補助金減額を理由にこども園の認定を返上しようとしている問題で、政府は補助制度を見直して減額を緩和する具体策をまとめた。 主な内容は、施設長の給与と教諭の人件費加算制度の見直しだ。
 認定こども園はいま、文部科学省と厚生労働省から補助を受けている。それが来年度から始まる子ども・子育て支援制度で一本化され、幼保連携型の認定こども園に2人分出ている施設長の給与補助が1人分に減る予定だった。これを最長5年間、2人分の補助を継続する。
 また、新制度では大規模なこども園ほど事務の人件費などを効率化できるとし、子ども1人あたりの補助額が低く設定された。この仕組みで減額が見込まれる園がある。その対応策として、教諭を基準より多く配置した場合に人件費を加算する制度の対象となる教諭の数を、4人分から6人分まで拡大する。 

 (畑山敦子)








































copyright ⓒ2012 日本の「教育と福祉」を考える all rights reserved.