教員の資質
教育現場の危機的事態

2019.10.11/2020.3.28/2020.12.27/2021.3.7/2022.8.7




「教員のいじめ」問題について(報道内容)
教員のわいせつ行為について(報道内容)
教員の性暴力防止法 成立(報道内容)
文部科学省:教員をめぐる現状







「教員間のいじめ」問題について



 神戸市立東須磨小学校で、30代から40代の教員が20代の教員に対し、たたいたり、暴言を浴びせたり、激辛カレーを無理やり食べさせるなどのいじめ行為を繰り返していたという。それは単にいじめという言い方では収まらないような事態であることが明らかに。
 被害教員は体調を崩して療養中、教壇に立つことができない状態だが、できるだけ早く復帰することを望んでいるという。

 
東須磨小学校の校長は、神戸市役所での会見で謝罪。(2019年10月9日)
 久元喜造市長は会見で、激しい怒りを感じるとし、第三者の有識者による調査チームを発足させ、年内にも調査結果をまとめる方針を明らかにした。(2019年10月10日)



市立東須磨小学校の「教員間のいじめ」の概略
 神戸市立東須磨小学校の30代の男性教員3人と40代の女性教員1人が、同僚の教員4人にいじめ行為などを繰り返していた。特に20代の男性教員に対して、ロール紙の芯で尻をたたいたり、男性の車の上に乗ったりしたほか、性的なメッセージを同僚女性に送ることを強いたり、羽交い絞めにして激辛カレーを無理やり食べさせ、嫌がる様子を撮影するなどしたという。
 神戸市教育委員会の調査に対して、加害教員の一部は「悪ふざけだった」と釈明したという。
 被害を受けた男性教員は昨年度(2018年度)以前から被害にあっていたと訴えている。
 
 10月9日の市教委と東須磨小学校の仁王美貴(におうみき)現校長(55)の会見での説明によると、昨年度の3学期、被害にあった男性教員とは別の教員が前校長に「(男性教員への)からかいが度を過ぎている」と相談していた。
 前校長は、被害教員から状況を聞き取ったが、本人が「大丈夫です」と説明したとして、加害教員4人を個別に注意して済ませたという。当時教頭だった現校長は、こうした経緯は知らなかったとしている。

 今年7月に、被害教員が加害教員による暴力行為を別の上司に相談した。現校長は、尻をたたかれミミズ腫れしたことなど複数の暴力行為を把握したが、前校長と同じように口頭で指導し、市教委に詳しい状況を伝えなかった。
 被害教員は9月に入って体調不良で欠勤。家族からの相談で市教委の調査が始まり、一連の問題が明らかになった。



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教員いじめ 撮影か
  神戸市教委 写真を把握  
朝日新聞 2019(令和元)年10月6日
 神戸市立東須磨小学校の教諭4人が、同僚の教員4人にいじめ行為を繰り返していた問題で、被害を受けた20代の男性教員が、いじめ行為を受けている様子を写真に撮られたと訴えていることが、市教育委員会への取材でわかった。
 市教委も写真の存在を把握。
今後加害者の4人から聞き取り調査を進める。

 市教委によると、加害側の教諭4人は30代の男性3人と40代女性1人。調査に対し、一連の行為について「悪気はなかった」「相手が嫌がっていると思っていなかった」などと説明しているという。

(川嶋かえ、笹山大志)



校長「隠蔽の意図なかった」
  神戸教員いじめ 経緯説明
  朝日新聞 2019(令和元)年10月10日
 神戸市須磨区の市立東須磨小学校の教員間で暴力や嫌がらせが繰り返されていた問題で、同校の仁王美貴校長(55)が9日、神戸市役所で会見した。学校側の対応の遅れについて反省の言葉を繰り返したが、「隠蔽の意図はなかった」と強調した。

 仁王校長は今年4月に東須磨小の教頭から昇任。その直後から、加害教員4人について、複数教員から「同僚を侮蔑的なあだ名で呼んでいる」などの相談を受けていたことを明らかにした。6月には市教委に教員間の人間関係の懸念を伝えたが、担当者は「何か手伝えることがあれば言って」と応じるにとどまった。
 7月に入り、被害者の一人である20代の男性が教頭との面談で「ハラスメント行為」を訴えた。校長は加害側教員にも聞き取り、ロール紙の芯で尻をたたく、背中や脇腹をこづく、男性教員の車の上に乗ったり車内で飲み物をわざとこぼしたりする――といった行為を確認した。

 加害教員らは「悪ふざけが過ぎた」と説明。仁王校長は教員らを口頭で指導したが、市教委には詳細を伝えず、「教職員間のトラブルを指導した」と報告したという。しかし、9月から男性教員が学校を休み、家族からの相談で市教委が調査を開始。「激辛カレーを無理やり食べさせる」などの暴力行為の全体像が明らかになった。

(川嶋かえ)



教員いじめ 校長も把握
 神戸の小学校 市教委に報告せず  朝日新聞 2019(令和元)年10月10日夕刊
 市立東須磨小学校の教員間で暴力や嫌がらせが繰り返されていた問題で、被害者のうち20代の男性教員に対する問題行為を前校長も把握していたのに、加害教員への注意にとどめ、市教育委員会に報告していなかったことがわかった。
 男性教員は昨年度以前から被害にあっていたと訴えているといい、市教委は調査対象を広げて確認を進める。

 市教委と同校の仁王美貴・現校長(55)が9日の会見で明らかにした。仁王校長は昨年度、前校長のもとで教頭を務めており、今年4月に校長に昇任した。

 説明によると、昨年度の3学期、別の教員が前校長に「(男性教員への)からかいが度を過ぎている」と相談していた。前校長は、被害教員から状況を聞き取ったが、本人が「大丈夫です」と説明したとして、加害教員4人を個別に注意して済ませたという。当時教頭だった現校長は、こうした経緯は知らなかったとしている。
 一方、今年7月になって、この被害教員が先輩教員からの暴力行為を別の上司に相談した。現校長は、ロール紙の芯で尻をたたかれミミズ腫れしたことなど複数の暴力行為を把握したが、前校長と同じように口頭で指導し、市教委に詳しい状況を伝えなかった。

 被害教員は9月に入って体調不良で欠勤。家族からの相談で市教委の調査が始まり、一連の問題が明らかになった。
 被害教員は「昨年以前から被害に遭っていた」「学校に来るのが精いっぱいだった。途中で何度も引き返したいと思った」という趣旨の説明を手紙につづり、現校長に送ってきたという。
 また現校長によると、男性教員は今年7月の聞き取りで、加害者側の女性教諭について「『反抗して学級をつぶしてしまえ』と子どもたちをけしかけた」とも訴えたという。現校長の聞き取りに、女性教諭は「そんなことはしていない」と否定しているといい、市教委が改めて調査する。

(川嶋かえ)


神戸教員いじめ 児童に宛て  朝日新聞 2019(令和元)年10月11日
 体調を崩して休んでいる被害者の男性教員(25)は10日、代理人の弁護士を通じて、児童と保護者あてのメッセージを市教育委員会に送った。周囲に助けを求められず、欠勤に至ったことをわびる内容。朝日新聞が弁護士からメッセージの全文を入手した。

 弁護士によると、男性教員は教員歴3年目。同校に赴任し、すぐに3年生の担任になった。これまで同じ子どもたちを受け持ち、この春からは5年生の担任に持ち上がっていた。

 児童向けのメッセージは「急に先生が変わってびっくりしたね。ごめんね」と始まり、仲がよく、前向きな子どもたちに「大好きですよ」と呼びかける。男性教員の誕生日に、児童らが手紙を本にとじたプレンゼントを用意してくれたことを振り返り、「これからもずっとずっと君たちの笑顔は先生の宝物であり、生きがいです」とつづった。
 ふだんから「いじめられたら誰かに相談しなさい」と子どもたちに指導していたことにも触れ、「その先生が助けを求められずに、最後は体調まで崩してしまいました。『ごめんなさい』」。その上で「いつか、みんなの前でまた元気になった姿を必ず見せに行きます。その日を夢見て先生も頑張ります」と記した。


 また、関係者によると、男性教員は昨年末、前校長に加害者側の教員4人の問題行動を直接相談しようとした際、「(4人に)お世話になってるやろ」「いじめなんかないやろ」と制止され、話を聞いてもらえなかったと訴えているという。市教委は前校長の対応ぶりについても調査する。

(川嶋かえ)


神戸教員いじめ 被害届提出  朝日新聞 2019(令和元)年10月12日
 東須磨小学校で教諭4人が同僚に暴力や嫌がらせを繰り返していた問題で、体調を崩して休んでいる被害者の男性教員(25)が11日、代理人の弁護士を介し、兵庫県警に暴行容疑で被害届を出した。加害側の教員について市教育委員会が懲戒処分を視野に調査しているが、悪質な行為だとして捜査による全容解明を求める。

 関係者によると、男性教員側は激辛カレーを無理やり食べさせられた際、羽交い絞めにされたことなどを被害として申告。その様子を撮影した動画が残され、加害教員らがせかしたり、被害男性を笑う場面が記録されていた。

(川嶋かえ)



教員間暴力、公務災害申請へ     朝日新聞 2019(令和元)年10月17日
 神戸市須磨区の市立東須磨小学校で起きた教員間の暴力・暴言問題で、9月から心身の不調を訴えて欠勤している男性教員(25)が公務災害(労災)の認定を申請することが関係者への取材でわかった。
 学校内で教員として公務に従事中に受けた被害だとして、通院治療などにかかる費用相当額の給付を求める。専門家によると、教職員同士のトラブルを背景とした労災申請は極めてまれという。



市教委の調査会発足し、弁護士が実態
口頭注意のみ 市教委に報告せず
教員いじめ 悪化防げず
  朝日新聞 2019(令和元)年10月22日
 神戸市立東須磨小学校で横行していた教員間の暴力・暴言問題は、市教委の調査会が発足し、弁護士が実態解明に乗り出した。市教委などによると、一連の加害行為は、被害者の男性教員(25)が2017年の春、新人として同小に着任して間もなく始まったとみられる。学校側が有効な手立てを打たず、行為がエスカレートしていった状況が浮かび上がっている。

 加害教諭4人のうち、30代の男性2人は15年春から同小に在籍。うち1人は18年度、校内でのセクハラまがいの発言のほか、先輩教員へのなれなれしい口調や呼び捨てが問題化した。学校は個別の指導や職員全員への研修をしたが、問題行為はその後も続いた。
 この教諭は、被害教員に対し、プロレス技をかける・ロール紙の芯で殴る・車の上に土足で上がる・同僚女性にLINEで性的なメッセージを送らせる、などの嫌がらせ行為を繰り返した。もう1人の教諭は、この教諭の行為をはやし立て、自らも暴言を浴びせたり、書類を投げて渡したりしていたという。

 被害教員と同じ17年春に着任した40代女性教諭は「クズ」「犬」などの暴言をはき、懇親会の席で飲酒を強要するなどした。翌18年春に着任した30代男性教諭も加わり、暴力や暴言を繰り返した。複数の教諭が、被害教員に激辛カレーを無理やり食べさせたのはこの年9月の出来事だった。
 関係者によると、年末になり、被害教員が意を決して当時の校長(今春に異動)に被害を相談しようとしたが、この前校長は「(加害教諭に)お世話になっているやろ」と話をさえぎり、取り合わなかった。

 市教委の調査では、被害教員が前校長から話を聞いてもらえたのは、翌19年2月、別の教員が前校長に「被害教員へのふざけがひどい」と訴えた後だった。ただ、前校長は被害教員がこのとき「大丈夫です」と説明したとして、具体的な内容は聞き取らず、加害側を口頭での注意にとどめた。
 当時、東須磨小の教頭として前校長のもとで働き、今春に校長に着任した仁王(におう)美貴・現校長に引き継ぎもなかったという。
 今年7月、被害教員は自らの被害を仁王現校長らに訴えたが、現校長も加害側への口頭注意で済ませ、市教委にトラブルの詳しい内容は報告しなかった。

 加害側の4人は児童への指導や若手教員の育成などを中心的に担う中核の教員同士だった。現校長は問題発覚後の記者会見で、「全員が中核でつながりも強く、互いに『そんなことをしたらだめ』と言いにくい状況だったのかなと思う」と振り返っている。

 一連の問題では、25歳の教員以外にも、20代の教員3人(女性2人、男性1人)が被害を受けた。





■男性教員(25)への行為
  ・ロール紙の芯で尻を2回殴る
  ・プロレス技をかける、ジャンプしてぶつかる
  ・女性教員にLINEでわいせつなメッセージを送らせる
  ・車の屋根に土足で上がる、車内でわざと飲み物をこぼす
  ・仕事をしているのに自宅まで送らせる
  ・肩をたたく、わき腹をつつく
  ・書類を投げて渡す
  ・テスト用紙を乱雑に置き、パソコンのキーボードを壊す
  ・嫌がらせ行為をはやしたてる
  ・背中をひじで押し、靴を踏みつける
  ・椅子をける
  ・校長の指導後「謝れと言うなら謝ったるわ」と言いがかり
  ・飲み会で飲酒を強要
  ・プライべート上、秘密にしてほしいと頼んでいたことをばらす
  ・激辛カレーを無理やり食べさせる
  ・プライベートについて誹謗中傷する
  ・「ボケ」「アホ」などの暴言
■他の教員への行為
  ・侮蔑的な呼び名で呼ぶ
  ・悪質なセクハラ行為

(神戸市教委への取材などから)



(川嶋かえ)






神戸の教員間暴力 125件
 ハラスメント含め 調査委が認定   朝日新聞 2020(令和2)年2月22日
 神戸市立東須磨小学校の30~40代の教諭4人が職場の後輩に暴力や暴言を繰り返していた問題で、市教育委員会の外部調査委員会は21日、調査報告書を長田淳教育長に提出した。調査委は管理職からの行為も含む125項目の暴力やハラスメントを認定。こうした状況を容認、助長する職場の空気を管理職が主として作り上げていたと指摘し、市教委に再発防止を求めた。

「管理職が空気助長」
 調査委は被害者の男性教諭に対し、「くず」「死ね」など日常的な暴言、体当たりやひざ蹴りなどの日常的な暴力、激辛カレーを顔に塗りつけ、無理やり食べさせる、プールに放り投げる、自家用車を汚す――などの行為があったと認定。昨春に転任した前校長も、恫喝的な言動で懇親会への出席を強要していたなどと指摘した。
 また、別の20代の男女教員3人も、加害側の教諭から侮蔑的な呼び名で呼ばれ、悪質なセクハラ行為を受けていたとした。

 報告書は、歴代の管理職の責任にも言及し、前校長は「言動が威圧的で、被害教諭らが相談しにくい環境だった」とした。主因は加害側教諭の規範意識やハラスメント意識の低さにあるとしつつ、「間接的とはいえ原因の一端となった」と述べた。現校長は威圧的言動はなかったが、逆に加害教諭らをコントロールできないと受け止められ、職員室の風紀が緩み、ハラスメントを助長したという。

 市教委は今回の報告書を踏まえ、近く加害教諭や前校長らの懲戒処分を正式に決める方針。兵庫県警も男性教諭からの被害届を受け、暴行容疑などで捜査を続けている。


加害側30代教諭 懲戒免職処分へ  朝日新聞 2020(令和2)年2月23日
 神戸市立東須磨小学校の教員間で暴力・暴言が繰り返された問題で、市教育委員会が2月中にも、加害側教諭4人のうち、最も多くの加害行為があったとされる30代の男性教諭を懲戒免職処分とする方向で調整していることが、関係者への取材でわかった。残る3教諭と前・現校長の計5人も処分対象とする方針。加害側教諭は30代男性3人と40代女性1人の計4人。

 市教委が免職処分を検討している加害側の男性教諭は、日常的な暴言や暴行など計89件のハラスメントを報告書で指摘された。市教委は回数の多さや悪質性などをふまえ、免職は免れないと判断した。
 
残る加害者のうち、男性教諭(ハラスメント認定は計34件)は懲戒免職か停職。女性教諭(同13件)は停職か減給。男性教諭(同7件)は減給か戒告――の方向で検討している。

 前校長については、管理職として一連の行為を防げなかったうえ、被害教諭に懇親会への参加を強要するなど自らもハラスメント行為をしていたことから停職か減給処分を視野に入れ、現校長は市教委への具体的報告を怠ったとして戒告以上の処分とする考えだ。
 市教委は今後、処分対象者の弁明を聴き、外部の弁護士らでつくる分限懲戒審査会の意見も踏まえ、処分を最終決定する市教委会議に処分案を提出する。





朝日新聞 社説 2020・2・25
 神戸教員間暴力 
背景と向き合い対策を 
 問題の根深さが浮き彫りになった。関係者の責任を問うだけでなく、常軌を逸した行為を許した背景と向き合い、対策を講じていかねばならない。
 神戸市立東須磨小学校でおきた教員間の暴力や暴言をめぐり、外部の弁護士からなる調査委員会が報告書をまとめた。

 採用3年目の男性教諭(25)の尊厳を傷つけ、教壇に立てなくなるまでに追い詰めた先輩教諭4人によるハラスメントとして、調査委は120を超える行為を認定した。前校長についても被害教諭への2件のハラスメントを指摘した。

 4人の加害教諭は必ずしも集団で暴力・暴言を重ねたわけではなく、被害教諭との関係も時期により変化していた。総じて「ふざけやからかい」と考えていたようだが、言語道断だ。前校長ら管理職も含め、それぞれの悪質度に応じて、定められたルールと手続に従い厳正に処分しなければならない。
 周囲はなぜ止められなかったのか。調査委はそうした疑問に基づき、他の多くの教諭からも聞き取りをした。見えてきたのは、複数の要因が重なり、子どものいじめにも共通する構図ができていた実態だ。

 まず問うべきは、人権と規範への意識を欠いた加害側教諭である。そして前校長の威圧的な姿勢が異様な言動を許す空気をつくり、加害側教諭を指導した現校長も配慮不足で被害教諭への報復的行為を招いた。ハラスメントに関する教育と研修は不十分で、学校外・市教委外への通報窓口も不備だった。報告書から読み取れる概要である。

 先輩との関係を拒めなかった被害教諭は、信頼できる相談相手がおらず、耐えるしかなかった。その様子は関係を受け入れているようにも見えた。他の教諭は多忙さもあってハラスメントに気づかず、気づいてもかまう余裕がなく、見て見ぬふりと言わざるをえない面もあった。
 子どものいじめを察知し、指導・予防することを求められている先生の間に、それと同じ構図ができていた。調査委は、研修や相談窓口の見直しとともに、子どものいじめ問題について学校現場の認識をいま一度確認し、職員室をPTAや地域に開くよう提案している。

 東須磨小では、今回の被害者と加害者以外の教諭の間でも、さまざまなハラスメントがあった。先生同士の関係がおかしくなった学校で、子どもたちが楽しく学び、生活できるはずがない。他の学校もひとごとと片付けず、現状をみつめ、問題の解決に努めてほしい。



加害教諭2人懲戒免職
神戸・教員間暴力 他の2人停職・減給 朝日新聞 2020(令和2)年2月29日
 市教育委員会は28日、加害側の教諭4人のうち、蔀俊
(しとみしゅん)教諭(34)と柴田祐介教諭(34)について、暴力や暴言を日常的に繰り返していたとして懲戒免職処分にし、発表した。前校長(55)を停職3ヵ月とするなど歴代校長3人も処分した。

歴代3校長も処分
 残る2人の加害側教諭は、激辛カレーの強要行為に加わるなど13件を認定された女性教諭(45)が停職3ヵ月、校長の指導後に被害教諭へ報復的言動をするなど7件が認定された男性教諭(37)が減給3ヵ月(10分の1)とされた。
 歴代3校長の処分は、昨春まで勤務した前校長が最も重い停職3カ月。
 外部調査委は前校長について、威圧的な言動が多く、誰も被害を相談できなかったと指摘し、被害教諭に懇親会への参加を強要するなど2件のハラスメント行為も認定していた。現校長(55)は減給3ヵ月(10分の1)、前々校長(62)も戒告とした。

教員いじめ 4人を起訴猶予  朝日新聞 2020(令和2)年3月28日
 神戸市立東須磨小学校の教員間暴力・暴言問題で、神戸地検は27日、暴行や強要の疑いで兵庫県警が書類送検した男女4人について、不起訴処分(起訴猶予)とし、発表した。地検は処分理由について、全員が市教育委員会から懲戒処分を受け、社会的制裁を受けたなどと説明している。
 不起訴になったのは、免職処分を受けた34歳の男性2人と、停職3カ月の女性教諭(45)、減給3カ月の男性教諭(37)。2018年9月、男性教諭(25)の目や口に激辛カレーを塗りつけたり、19年2月、激辛ラーメンを無理やり食べさせたりしたとする容疑などで書類送検されていた。







教員のわいせつ行為について



◆教員わいせつ 子ども守れるか 朝日新聞 2020(令和2)年2月25日

 文部科学省が昨年末に公表した調査で、全国の公立小中高校などで2018年度、わいせつやセクハラを理由に処分を受けた教員は過去最多だった。各地の教育委員会は研修の強化などの対策に乗り出す。学校内の性暴力対策に特化した組織を設ける教委も出てきた。

(山下知子、宮坂麻子)

18年度、最多処分者 各教委が取り組み
 文科省が昨年12月に発表した人事行政状況調査によると、18年に児童生徒らにわいせつな行為などをしたとして処分された公立小中高校などの教員は全国に282人。前年度の210人から大幅に増え、過去最多となった。被害者は、自校の児童生徒が約半数を占めた。
 「SNSの普及で、生徒と先生がつながりやすくなっているのでは?」
埼玉  交際・SNSの私的なやり取り 指針で禁止
千葉  校内の性暴力対応に特化した組織新設


「被害への意識 高まった」
 京都教育大の榊原禎宏教授によると、教員によるわいせつ事案の発生率は高い傾向にある。「教員は未成年に接する機会が多く、指導的関係が生じやすい。裁量も大きい。業務の特殊性を自覚し、校内研修などで振り返りの機会を積極的に設けることが欠かせない」と指摘する。

 増加するわいせつ事案の被害者の約半数は子どもだった。NPO法人スクール・セクシュアル・ハラスメント防止全国ネットワーク(大阪)の亀井明子代表は「スクールセクハラといった言葉も少しずつ広がり、被害に遭った子どもや周囲が、被害だと気付けるようになった面があるのでは」という。
 
 性暴力は、子どもの心身に甚大な影響を与える。自己評価が下がり、その後の社会生活を送ることが難しくなることもある。亀井代表は「文科省の数字はあくまでも処分件数。被害に遭っている子どもの数は件数より多いはずです」。



◆わいせつ教員巡り文科相
 免許取得問題「厳しい仕組みに」 
 朝日新聞2020(令和2)年7月23日
 児童生徒へのわいせつ行為で教員免許を失った教員が、3年後に再び免許を取得できる問題で、萩生田光一文部科学相は22日、「厳しい仕組みに変えていく必要がある」と述べた。教員免許法を改正する法案の速やかな提出を目指す。

 文科省は、児童生徒にわいせつ行為をした教員は原則、懲戒免職とするよう各教育委員会に指導している。しかし、懲戒免職で免許が失効しても、現行法では3年後に再取得できる。文科省は2018年度からデータベースを作成。各教委が免許の失効により官報に載った教員の名前などを検索できるようにした。しかし、人権への配慮から、処分記録の保存は3年分のみ。改名して別の地域で再び教員になるケースを防ぐのは難しい。
 文科省の調査では、児童生徒へのわいせつな行為などで処分された公立小中高校などの教員は18年度、全国で過去最多の282人だった。

(宮崎亮)


◆教員免職歴 閲覧40年に
3年から延長
「わいせつ被害の防止策」 
朝日新聞2020(令和2)年9月16日
 児童生徒へのわいせつ行為などで懲戒免職され教員免許を失った教員について、文部科学省は15日、処分歴などの閲覧期間を現行の過去3年から40年に延ばすと発表した。免許を再取得した教員が処分歴を隠したまま採用されないようにし、同種の被害を防ぐ狙いだ。

 懲戒免職で教員免許を失ったは教員は名前や失効年月日などが官報に載る。文科省は2018年に処分歴が閲覧できる「官報情報検索ツール」を作成。希望する都道府県教育委員会などに採用業務の参考資料として提供している。「機微な個人情報」のため、情報管理の徹底などについての同意書の提出を求めている。
 このツールについて、今年11月から過去5年分、来年2月中に40年分を検索可能にする。

 文科省は、児童生徒にわいせつ行為をした教員は原則、懲戒免職とするよう各教委などに指導してきた。ただ、懲戒免職で失った免許は3年後に再取得できるため、改名して別の地域で再び教員になり、わいせつ行為をするケースがあり、問題になっていた。同省は教員免許法の改正も検討している。
 文科省によると、18年度に公立小中高などで懲戒免職された教員は231人。そのうちわいせつ行為などが理由なのは約7割の163人で、いずれも過去最多だった。

(宮崎亮)


■保育士再取得の厳格化検討  朝日新聞 2020(令和2)年9月19日
 田村憲久厚生労働相は18日の記者会見で、わいせつ行為などで資格を失った保育士について、取り消し処分後から再び資格を取得できるまでの期間を今の「刑を終えて2年間」から延長することを検討する考えを示した。



◆教員わいせつ行為 難しい対策 朝日新聞 2020(令和2)年9月29日
 教員による児童・生徒へのわいせつ行為が後を絶たない。子どもから被害を訴えにくいうえ、教員が懲戒免職で免許を失っても3年後に再取得できる。文部科学省は免許を失った教員のデーターベースを作り、来年から処分歴を40年分検索できるようにするなど対策を強めているが、一筋縄ではいかない。

「教員免許 再交付やめて」 保護者ら5.4万人分署名提出
 小中高生らの保護者でつくる「全国学校ハラスメント被害者連絡会」(東京都)は28日、子どもにわいせつ行為をして懲戒処分となった教員に免許を再交付しないよう求める、約5万4千人分の署名を文部科学省に提出した。
 同会は教員によるわいせつ被害を提訴した保護者ら22人を中心に活動。「性犯罪は再犯率が高い」として、加害教員が処分を受けて免許を失効しても3年で再取得できる仕組みを問題視する。今月始めたインターネット署名には、1週間で5万人以上が賛同した。

 記者会見した共同代表の郡司真子さん(52)は「私たちが声をあげることで、学校で起きていいる性暴力を抑止し、子ども自身が被害に気づくきっかけにしてほしい」と語った。
 文科省によると、2018年度に公立小中高校などで懲戒免職された教員は231人。そのうち、わいせつ行為などが理由なのは約7割の163人で、過去最多だった。停職や減給などの懲戒処分や訓告を含めると282人に上り、10年前の約1.7倍に。被害者は、自校の児童生徒が124人と半数近くを占めた。信頼できるはずの教員による加害は、被害者の心身に深刻な傷を残す。

懲戒免職でも3年後に再取得可能
 文科省は、児童生徒にわいせつ行為をした教員は原則、懲戒免職とするよう各教育委員会などに指導してきた。ただ、教員免許法では、懲戒免職で免許を失っても3年後に再取得できる。保育士は2年後となっており、再取得までの期間が教員だけが際立って短いわけではない。
 教員が処分歴を知られることなく、別の地域で再び教壇に立つことも可能で、各地の教委どうしの情報共有が課題になっていた。

 懲戒免職のケースではないが、13年に児童ポルノ事件で逮捕され罰金刑を受けた埼玉県の小学校教諭が、停職6カ月の懲戒処分を受け依願退職。その後、改名し、愛知県の小学校の臨時講師になり、女児への強制わいせつ容疑で逮捕された例もある。
 懲戒免職で教員免許を失った教員は、名前や失効年月日などが官報に載る。同省は18年に処分歴が閲覧できる「官報情報検索ツール」を作成し、希望する都道府県教育委員会などに教員を採用する際の参考資料として提供してきた。現在、応募者の懲戒免職処分歴を3年分閲覧できるが、同省は15日、来年2月には過去40年分検索できるようにする、と発表した。

 ただし、情報を元に応募者を採用するかどうかは各教委の判断にゆだねられているうえ、元データである官報には処分理由が載らないため、検索ツールでもわいせつ行為が理由なのかがわからないなど、課題も残る。署名を提出した保護者団体などが求めている、教員免許を再交付しないための法改正について、萩生田光一文科相は15日の会見で、「抜本的な仕組みの見直しが必要で、法改正に向けて法制度上の問題など検討を進めている」と述べた。

児童生徒を守る法改正必要 厳罰化には厳正な調査を
専門家の見方

 学校法務に詳しい森本周子弁護士は、「職業選択の自由や更生の可能性という議論もあるが、弱い立場の児童生徒を守る公共の福祉を重く見てもいい。再交付しないという法改正が必要だ」と話す。
 学校での性被害に詳しいNPO法人「スクール・セクシャル・ハラスメント防止関東ネットワーク」代表の入江直子・神奈川大名誉教授(教育学)も、「子どもへのわいせつ行為には再犯性が指摘されており、本来、免許の再交付があってはいけない。採用側が懲戒処分歴を40年分検索できるようになることは意義がある」と評価する。

 ただし、「前提として、行為が起きた時に、弁護士などを含む第三者による調査委員会を設けることが必要だ」と指摘。加害教員が依願退職し、調査や処分があいまいになるといった例もあるからだ。免許を再交付しないことは職業選択の自由を制限することにもつながることからも、「処分歴についての情報共有や法改正による厳罰化は厳正な調査に基づくべきだ」と話す。

(杉原里美、宮崎亮、三島あずさ)



◆わいせつ教員の免許再取得
 文科省 認めぬ法改正見送り 
朝日新聞 2020(令和2)年12月26日

 児童生徒へのわいせつ行為で懲戒免職処分を受けた教員が免許状を再取得できないようにする法改正を検討していた文部科学省は、来年1月の通常国会への法案提出を見送ることを決めた。
 現行の教育職員免許法では、懲戒免職処分を受けても最短3年で免許状を再取得できる。文科省は再取得できない期間を無期限とすることで、学校現場に戻れなくする方向で検討していた。

 だが社会復帰や更生の観点から、刑の執行後、原則10年で刑が消滅するなどと定めた刑法との整合性が取れないと判断した。
 文科省は今後も法改正の可能性を探りつつ、官報に掲載された教員の懲戒免職処分情報を検索するツールを活用し、わいせつ行為をした教員を採用しないよう各自治体などに求める。過去3年間だった検索対象期間は、来年2月までに40年間に延長する。

(鎌田悠)



◆わいせつ教員根絶WT 朝日新聞 2021(令和3)年2月27日
 自民、公明両党は26日、教員による児童・生徒へのわいせつ行為を防ごうと、「わいせつ教員根絶立法検討ワーキングチーム(WT)」の設置を決めた。今国会での法整備を目指す。
 文部科学省が児童生徒へのわいせつ行為で懲戒免職処分を受けた教員について免許状を再取得できないようにする法改正を検討。しかし、刑法の社会復帰や更生の観点との整合性が取れないと判断し、今国会への法案提出を見送った経緯がある。
 自民の下村博文政調会長は「難しい課題はあるが、安心して学校に行けることが大切」と語った。


◆教員の免職歴 共有されず
 官報不掲載 わいせつ事案47人  朝日新聞2021(令和3)年3月6日
 懲戒免職処分を受けて教育職員免許法が定める官報への氏名掲載が行われなかった教員が2019年度までの10年間、10都道府県で61人いたことが、文部科学省のまとめでわかった。このうち47人がわいせつ事案で、取材に対して被害者の保護を不掲載の理由とする自治体もあった。文科省は各教育委員会などに改善を指導し、3日までに不掲載はすべて解消された。

被害者特定の懸念 教委悩む

 教員によるわいせつ事件を防ごうと、自治体は苦慮している。
 神奈川県は、教員と児童生徒のSNSでのやりとりを禁止。「SNSなどで親密になり事件につながる場合もある。子どもの安全を考えるとやむを得ない」という。人目が届きにくい密室をつくらないよう、教科準備室などの窓ガラスに掲示物を貼らないことも求め、2年に1度は県教委職員が学校を巡回して確認する。
 宮城県はメールなどによる私的な連絡を禁じるだけでなく、授業や部活動についての連絡、さらに放課後や休日に私的に会うことも原則禁止している。
 大阪府は今年度の採用選考から願書に「懲戒処分歴欄」を設け、受験案内にも「出願内容などに虚偽記載があった場合は、採用後に懲戒処分を行う場合がある」と明記した。福岡市も採用予定者の刑罰歴について、本人の同意を得た上で本籍地の自治体に照会をかけている。
 わいせつ事案の公表で懸念されるのが、被害者が特定されることだ。対応策として、多くの自治体に「一部または全部を公表しないことができる」といった規定がある。「処分の公表を遅らせ、処分日の属する年度の翌年度に」とする横浜市のようなケースもある。
 ある県の担当者によると、被害者側から事案の情報を公表しないよう依頼されることが多い。官報掲載についても「絶対に載せないで」と要望されることもあり、「被害者への配慮と再発防止の間で毎回悩んでいる」と打ち明ける。現状では、事案への社会的関心が下がったと判断した時期に掲載しているという。

(宮崎亮、阿部明美)







教員の性暴力防止法 成立




◆免許再交付 教委に拒否権 朝日新聞 2021(令和3)年5月29日
 児童生徒とにわいせつ行為をした教員を学校現場に戻さないための新法「教員による性暴力防止法」が28日、参院本会議で可決成立。これまでは、懲戒免職になり教員免許を失効後3年たってから申請すれば自動的に再交付を受けられたが、再交付を拒否できる権限を都道府県教育委員会に与える。公布後1年以内に施行される。自民、公明両党でつくるワーキングチーム(WT)による議員立法。

■新法のポイント
・教員による児童生徒への性交やわいせつ行為などを「児童生徒性暴力」と呼ぶ。同意の有無を問わない
・わいせつ行為により免職となり免許が失効した教員に対し、再交付を拒む権限を都道府県教委に与える
・再交付の判断にあたり、都道府県教委は専門家らでつくる審査会の意見を聴く
・国や自治体に、過去にわいせつ行為をした教員の情報を共有できる新たなデータベースの整備を求める

 文部科学省によると、2019年度は児童生徒へのわいせつ行為で公立小中高校などの教職員121人が免職となった。過去には再交付された免許で別の教委に採用され、再びわいせつ行為をした事例もあった。
 新法では、わいせつ行為による免職で免許が失効した場合、再交付を受けられるのは、更生状況などから適当と認められる場合に限るとした。 免許を授与する都道府県教委が、専門家などでつくる審査会から意見を聴いた上で、その適否を判断する。

 文科省は昨年、再交付が受けられない期間を無期限とする教育職員免許法の改正を検討した。だが社会復帰や更生の観点から、刑の執行後、原則10年で刑が消滅するなどと定めた刑法との整合性が取れないとして、今国会での改正を断念。WTが、わいせつ行為をした教員を排除する仕組みづくりを検討していた。

(鎌田悠、阿部朋美)






 文部科学省:教員をめぐる現状
















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