教育・福祉の
人材育成確保の重要性










作成 2014.4.20  
更新 2015.2.20/2016.10.10/2017.6.18/2018.12.21/2019.12.7/2020.12.27/2021.12.24/2022.8.7/2023.10。15/2024.3.16

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人権の視点で教育と福祉を考えるということが大切であり、
 教育の視点で福祉を考え、福祉の視点で教育を考えるということが大切だと思います。
 また、そうした教育と福祉に直接的に携わる人材の養成・確保は、
 国民すべての生活の有り様にかかわる重要なことだと考えます。
入試や学歴のための教育ではないはずです。
高齢者も障害者も児童も人々すべてが人としての生活を享受する福祉の対象です。


教育や福祉にかかわる人材の養成・確保は、
国家の重要課題
!! 今、教育や福祉の現場で人材不足が問題と
なっています。それはなぜでしょうか





人として生まれ、人として育ち、人として生きる権利は障害の有無には関係なく同等です。
したがって障害をもつ人のその生涯に沿った支援も当然整備されなければならないものと思います。

教育の分野では、特別支援学校に在籍する児童生徒の数が増加傾向にあります。
福祉の分野では、福祉ニーズの多様化と増大があります。

 障害児者の教育的支援や福祉的支援を考えた場合、教育制度に関しては、教員養成の免許制度のあり方の問題があり、福祉制度に関しては社会福祉士及び介護福祉士制度のあり方の問題があるわけですが、いずれにしても教育や福祉にかかわる人材の養成と確保は現代日本の最重要課題といっても過言ではありません。

 教育現場においては教員の過重な業務の問題があるようです。
 福祉現場においては労働条件の問題があり、離職の原因には、学んだことと現場での実践にギャップがあることも問題のようです。
 学び直しのシステムとそのための機関の再構築、充実を図る必要があると思います。障害児者の教育や福祉に関する現状の制度自体の見直しも必要だと思います。

 しかしその見直しができるようないわゆる専門家や有識者、政治家もいないのかもしれません。また現状の問題は、日本が先進的な文化国家のレベルに到達していない証拠かもしれません。







◆文部科学省の取り組み

  

《教員に何を期待するか》
《教員の過重な業務》
《教員の働き方改革について》
《進まぬ改革》
《教員の資質 教育現場の危機的事態》
《教員の確保と教員免許更新制》
《教員志願 止まらぬ減少》






《教員に何を期待するか》



平成9年7月28日 教育職員養成審議会:新たな時代に向けた教員養成の改善方策について(教育職員養成審議会・第一次答申)

平成18年7月11日 中央教育審議会:今後の教員養成・免許制度のあり方について(答申)

平成22年3月24日 特別支援教育の推進に関する調査研究協力者会議:
     審議経過報告「教員の特別支援教育に関する専門性の現状と課題について」




 教育職員養成審議会:新たな時代に向けた教員養成の改善方策について(教育職員養成審議会・第一次答申)では、今後特に教員に求められる具体的資質能力として、概ね以下のように考えるとしています。

 
今後特に教員に求められる具体的資質能力の例

地球的視野に立って行動するための資質能力


 地球、国家、人間等に関する適切な理解
<例>
 地球観、国家観、人間観、個人と地球や国家の関係についての適切な理解、社会・集団における規範意識
 豊かな人間性
<例>
 人間尊重・人権尊重の精神、男女平等の精神、思いやりの心、ボランティア精神
 国際社会で必要とされる基本的資質能力
<例>
 考え方や立場の相違を受容し多様な価値観を尊重する態度、国際社会に貢献する態度、自国や地域の歴史・文化を理解し尊重する態度


変化の時代を生きる社会人に求められる資質能力


 課題解決能力等に関わるもの
<例>
 個性、感性、創造力、応用力、論理的思考力、課題解決能力、継続的な自己教育力
 人間関係に関わるもの
<例>
 社会性、対人関係能力、コミュニケーション能力、ネットワーキング能力
 社会の変化に適応するための知識及び技能
<例>
 自己表現能力(外国語のコミュニケーション能力を含む。)、メディア・リテラシー、基礎的なコンピュータ活用能力


教員の職務から必然的に求められる資質能力


 
幼児・児童・生徒や教育の在り方に関する適切な理解
<例>
 幼児・児童・生徒観、教育観(国家における教育の役割についての理解を含む。)
 教職に対する愛着、誇り、一体感
<例>
 教職に対する情熱・使命感、子どもに対する責任感や興味・関心
 教科指導、生徒指導等のための知識、技能及び態度
<例>
 教職の意義や教員の役割に関する正確な知識、子どもの個性や課題解決能力を生かす能力、子どもを思いやり感情移入できること、カウンセリング・マインド、困難な事態をうまく処理できる能力、地域・家庭との円滑な関係を構築できる能力

 
 教員に求められる資質能力は、語る人によってその内容や強調される点が区々であり、それらすべてを網羅的に掲げることは不可能であるが、今日の社会の状況や学校・教員を巡る諸課題を念頭に置くと、主として上記のようなものを例示的に挙げ得るものと考える。






《教員の過重な業務》 



過重な業務 教員悲鳴 中学の6割「過労死ライン」超え
 授業増・部活「休みない」 文科省調査
  朝日新聞 2017(平成29)年4月29日
 教員の長時間勤務の悪化ぶりが、文部科学省の調査で明らかになった。28日に公表された。勤務実態調査では10年前から労働時間がさらに増え、小学校教諭の約3割、中学校教諭の約6割が「過労死ライン」に達していた。 文科省は「看過できない事態」と言うものの、改善に向けた道筋は見えない。


非正規教員 担任も部活も   朝日新聞 2017(平成29)年6月5日
 日本教職員組合(日教組)が非正規の教職員を対象に実施したアンケートで、非正規なのに担任をしたり、部活動を担当したりするなど、正規の教職員と同じように働いている実態が浮き彫りになった。採用が途切れる「空白期間」に仕事をしている人も多かった。

(編集委員・沢路毅彦)


平成29年 6月22日 文部科学大臣:新しい時代の教育に向けた持続可能な学校指導・運営体制の構築のための学校における働き方改革に関する総合的な方策について(諮問)

平成29年 8月29日 文部科学省:学校における働き方改革特別部会:学校における働き方改革に係る緊急提言

平成29年12月26日 文部科学省:学校における働き方改革に関する緊急対策







《教員の働き方改革について》




授業準備・部活も「勤務」
教員の時間外「月45時間まで」中教審素案 
朝日新聞 2018(平成30)年12月7日 (1面)

 教員の働き方改革を議論している中央教育審議会の特別部会は6日、長時間労働などの解消策に向けた答申素案を示した。勤務時間の定義を明確にし、時間外勤務を原則「月45時間、年間360時間」以内とするガイドラインを設けることが主な柱。
 文部科学省は2020年度の改正を目指すが、ガイドラインに違反した場合の罰則はなく、実効性が課題となる。
▶3面=財源の壁、12面=社説、30面=現場に賛否

 教員は自発性や創造性が重視され、時間外勤務も一部の例外を除いて「自発的」とされてきた。このため、残業代が原則として支払われず、その代わりに給料月額の4%を一律に支給する給与制度が1970年代から続いてきた。素案はこの制度の結果、「勤務時間管理が不要であるとの認識が広がり教師の時間外勤務を抑制する動機付けを奪った」と指摘した。

 ただ、教員の仕事内容などを考慮し、この枠組みを大幅に変えることは難しいと判断。その一方、教員が行うべき業務を整理し、学習や進路の指導などに集中させるべきだとした。さらに、授業準備や成績処理、部活動指導など、「自発的」とされてきた業務も管理職が把握する「勤務時間」とし、学校外で行った場合も「在校時間」として含める方針を打ち出した。素案は、労働時間を繁閑期に応じて年単位で調整する「変形労働時間制」を、自治体が自主的に導入できるようにすることも盛り込んだ。

 文部科学省は長期休暇が確保できるよう、教員の研修や、部活動の大会などを見直すよう呼びかける方針だ。




  《教員の働き方改革のポイント》
   ・時間外勤務の上限として「月45時間、年間360時間」のガイドライン
   ・「自発的」とされた時間外の授業準備や部活動なの業務を「勤務時間」へ
   ・繁閑に合わせた年単位で勤務時間を調整し、休日のまとめ取りをする「変形労働時間制」の導入を認める
   ・教員、学校、地域が関わる業務を整理し、担うべき仕事の明確化



(矢島大輔) 




教員「タダ残業」解消できず 中教審素案 時間外の実態把握どまり
  
年9000億円 財源の壁   朝日新聞 2018(平成30)年12月7日 (3面)
 中央教育審議会の特別部会では委員から、働き方改革ができなければ、「給特法」の見直し検討を素案に入れるべきだ、との意見が相次いだ。
 「給特法」(1971年に成立した「公立学校教育職員の給与等に関する特別措置法」の略。)は、教員の働き方の特殊性を考慮し、残業代を出さない代わりに給料月額の4%を「教職調整額」として出すことを決めている。4%は、残業が月8時間だった当時の状況を踏まえたとされる。

 文部科学省は同時に、修学旅行や学校行事など4項目以外の勤務を教員の「自発的行為」と位置づけてきた。この結果、学校での時間管理がルーズになり長時間労働の一因となってきた。「過労死しても労働と認められず、労災認定がされにくい」「4%が実態に合わない」と批判も上がっていた。
 答申案では、時間外の授業準備や採点なども「勤務時間」として認める方針を打ち出し、上限も「月45時間」と示した。これにより、管理職は教員の勤務実態の把握をより迫られる。労災認定なども容易になるとの見方がある。


 ただ、根幹の給与制度の問題は積み残しとなった。最大の理由は、財源だ。文科省の試算によると、1年間で少なくとも9千億円が必要だ。消費増税分の一部が、幼児や高等教育の無償化などにあてられることになり、「財務省から、さらに教育費で財源をを引き出すことは困難になっていた」と、特別部会の部会長を務める小川正人・放送大学教授(教育行政学)は話す。

 もう一つの理由が、給特法と同じ時代に制定された「人材確保法」。優秀な人材を教員として確保するため、ほかの公務員より給与を優遇するという内容だが、「給特法の見直しで教員の特殊性を否定すれば、人材の確保法の見直しにつながりかねない」と文科省幹部は言う。その結果、素案で、給特法の改正が「必ずしも教師の処遇改善につながらないのではないか」と書き込まれた。小川氏は「追加財源を期待できない。教員を増やせない。ないない尽くしのなかで知恵を出すことが課せられた」と苦しい胸の内を明かした。




 《教員の時間外勤務の考え方》
    
《現 在》

自発的な行為   授業準備  進路相談   成績処理  部活動
時間外勤務   校外学習  学校行事   職員会議  災害対応

     
     
《答申案》 

時間外勤務
月45時間年360時間以内に規制
 授業準備  進路相談   成績処理  部活動
 校外学習  学校行事   職員会議  災害対応



矢島大輔) 



中学部活「校外に委ねる」提言
 まず休日を地域移行 来年度から3年  朝日新聞2022(令和4)年6月1日
 スポーツ庁が主導する有識者会議は31日、運動部活動を地域に移行することなど、部活改革の提言を固めた。 近く国に提出する。 2023~25年度を「改革集中期間」とし、公立中学校の休日の指導を民間クラブなどに委ねていく。文化庁も文化部活動の地域移行を検討中で、7月をめどに提言がまとまる見込み。学校内で完結していた部活動が、学校の外部へと移る大きな転換になる。
   ▶スポーツ面=指導者の確保・謝金の財源など自治体課題

 少子化により選択肢が狭まる部活動の多様なかたちを確保し、教員の負担を軽減することを目指す。委ねる先は、総合型地域スポーツクラブ、スポーツ少年団、大学など。学校外施設で活動したり、外部指導者が学校で指導したりする。すでに100の自治体で実践研究が行われている。
 提言は、まず国が早期に「運動部活動のあり方に関する総合的ガイドライン」を改訂することが適当だと指摘。自治体が地域の実情に合わせた推進計画を作り、実行することを求めた。将来的には平日も含めた移行を視野に入れている。

教員の負担減トラブル懸念も

 運動部活動の地域移行に関する検討会議提言骨子 (朝日新聞をもとに作成)
 対 象  公立中学校の休日の運動部活動
 移行先  総合型地域スポーツクラブ、スポーツ少年団、クラブチーム、フィットネスクラブ、大学など
 活動場所  学校の体育館、学校外の施設など
 指導者  民間クラブの指導者、大学生、退職教員、保護者など。教員の兼業兼職も整備
 財 源  スポーツ振興くじ(toto)助成や国の支援を検討
 今後の動き  2023~25年度を「改革集中期間」とし、地域ごとに推進計画などを策定
 課 題  スポーツ団体などへの会費を払うのが難しい、経済的に困窮する家庭への支援





《進まぬ改革》




教員 進まぬ改革 OECD調査   朝日新聞 2019(令和元)年6月20日(1面)
 日本の小中学校の教員は他の先進国と比べて、仕事時間が最も長い一方、教員としての能力を上げるために用いている時間が最も短いことが19日、経済協力開発機構(OECD) の調査で分かった。文部科学省が目指す、「主体的・対話的で深い学び」の視点からの授業を実施している教員も他国より少なく、「勤務状況」と「授業内容」の双方に課題が浮かんだ。
中学校の勤務最長 週56時間  生徒主体の学び 授業不十分
 教員の長時間労働が問題となるなか、文科省は働き方改革を「待ったなしの課題」と位置づけている。また、小学校は2020年度から、中学校は21年度から新しい学習指導要領に基づく授業が始まり、教える内容や教え方も変革が迫られている。双方で課題が指摘されたことについて、文科省は「非常に深刻にとらえている。危機感を持って対応したい」としている。

 
OECDが公表したのは、18年に実施した国際教員指導環境調査(TALIS)の結果。 欧米を中心とした加盟国など、中学校は48カ国・地域、小学校は15カ国・地域が参加した。日本は13年に続く参加で、全国から抽出した国公私立小中393校の教員と校長に質問を送り、回答を得た。

 その結果、中学教員の1週間の仕事時間は56.0時間で、前回調査より2.1時間長く、平均の38.3時間を大きく上回った。ただ、内訳をみると授業時間は18.0時間で、平均の20.3時間より短かった。代わりに▷部活などの課外指導(7.5時間)▷事務業務(5.6時間)は参加国で最長だった。授業準備(8.5時間)も平均より長かった。小学教員は▷仕事時間(54.4時間)▷事務業務(5.2時間)に加え、授業準備(8.6時間)も参加国最長だった。
 一方、1週間で知識や専門性を高めるための「職能開発」に費やした時間は、小学で0.7時間、中学0.6時間。いずれも参加国で最も短かった。

 授業内容についてみると、「明らかな解決法が存在しない課題を提示する」指導を頻繁にしているのは小学15.2%、中学16.1%で、中学は参加国平均の37.5%の半分未満だった。「批判的に考える課題を与える」は小学11.6%、中学12.6%で、どちらも参加国で最低だった。 また、「課題や学級での活動にICT(情報通信)を活用させる」指導は、小学が24.4%、中学が17.9%(平均51.3%)だった。


(矢島大輔)

学校現場 手いっぱい  朝日新聞 2019(令和元)年6月20日(3面)
業務減「すぐには…」 
 「部活動、親とのやりとり、行政的な仕事・・・。日本の先生は教室で指導するほかに、たくさんの仕事を負わされている」
 OECDのアンドレアス・シュライヒャー教育・スキル局長は19日、日本向けにビデオ中継で行った会見で語った。 そのうえで、「子どもたちの学習に直接関係ない仕事を減らし、教員同士の連携も進めるべきではないか」と提言した。
 同様の指摘は国内からも出ている。中央教育審議会は教員の働き方改革に向けて2017年8月に緊急提言を、同年12月には教員が担うべき業務とそうでない業務を分けた「中間まとめ」を出している。今回の調査が行われたのはこの直後の18年2~3月。 「保護者や地域との関係があり、業務はすぐには減らせない」と東京都の中学校長はいう。
主体的な学び 指導に遅れ
 中学の場合、「生徒を少人数のグループに分け、問題や課題に対する合同の解決法を出させる」「新しい知識が役立つことを示すため、日常生活や仕事での問題を引き合いに出す」を頻繁に行う教員はそれぞれ44.4%、53.9%。 前回調査より増えたが、参加国の平均には及ばない。
 より深刻なのは、生徒たちが自ら考えるような授業をしているかどうかだ。 「明らかな解決法が存在しない課題を提示する」は16.1%、「批判的に考える必要がある課題を与える」は12.6%で、参加国の中で最も低いレベル。ICT(情報通信技術)の活用も17.9%にとどまる。
 こうした取り組みは「主体的・対話的で深い学び(アクティブ・ラーニング)」を重視する新学習指導要領の根幹部分。文科省の担当者は「これからの時代に対応した指導ができていない。新指導要領の内容について周知徹底したい」と話す。


教員の変形労働制導入へ
 改正給特法成立 残業分、夏休に取得   朝日新聞 2019(令和元)年12月1日
 忙しい時期に労働時間を延ばす代わりに、夏休みに休日をまとめ取りする――。そんな「変形労働時間制」を盛り込んだ教職員給与特措法(給特法)の改正法が4日、参院本会議で与党などの賛成多数で成立した。
 教員の残業の上限を
「月45時間、年360時間」以内とする文部科学省のガイドラインを法律に格上げし、順守を求める。

 文科省は学校行事などで忙しい4、6、10、11月の勤務時間を週3時間ほど増やし、その分を夏休み期間中の8月に5日程度の休みに振り替える、といった運用を想定。長時間労働が問題になっている教員の働き方改革につながると期待する。ただ、現場の教員からは「年休さえ取れていない状況で、むしろ業務量が増えるのでは」との懸念が出ていた。

 改正給特法では、変形労働時間制を導入する条件として、残業時間の上限などについて7項目を定め、職場の環境が整った場合に限り、地方自治体の選択で2021年度から使うことができるようにした。各都道府県に逸脱した運用があった場合の相談窓口を設置するよう求め、悪質なケースは文科省に直接通報できるようにもする。
 文科省の16年度の調査によると、小学校教員の約3割、中学校教員の約6割が「過労死ライン」とされる月80時間以上の残業をしていた。文科省は3年後をめどに改めて勤務実態調査を行い、一連の働き方改革の効果が出ていなければ、給特法の抜本的な見直しも検討するとしている。

業務削減が必須 教職員の働き方などに詳しい内田良・名古屋大准教授(教育社会学)の話
 変形労働時間制の評価を今することは難しい。現実には、教員は毎月残業をしており、閑散期がない。今のまま導入すれば定時が延び、「休日」もただ働きする状況になりかねない。導入する自治体は、業務削減を図り、定時で帰れる日をつくることが欠かせない。それができて初めて、生きた制度になる。

(矢島大輔、三島あずさ、山下知子)


文部科学省:公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法の一部を改正する法律案



教員の変形労働条例制定進まず  朝日新聞 2020(令和2)年12月26日
 教職員の勤務時間をタイムカードなど客観的な方法で把握している教育委員会が、都道府県は約91.5%、政令指定都市は85.0%、市区町村は71.3%に上ることが25日、文部科学省の調査(9月1日時点)で分かった。全国平均は72.0%で、昨年度の48.2%から大幅に伸びた。

 法改正により来年度から導入される教職員の「変形労働時間制」の実態も調査。繁忙期に勤務時間を延ばす代わりに夏休みなどに休日をまとめ取りできる制度で、「今年度中に条例制定予定」としたのは12道県で、指定市はゼロだった。13都府県と2指定都市が「時期は未定だが条例整備予定」で、22県と18市が「検討中」だった。多くが新型コロナの対応で制定に着手できなかったとみている。



教員の残業代判決 評価は  朝日新聞 2021(令和3)年12月7日
 公立学校教員の残業代をめぐる訴訟で、10月1日にさいたま地裁が出した判決について、専門家から賛否の声が出ている。原告の訴えは棄却されたが、裁判長が「教育現場の勤務環境の改善を切に望む」と付言したことなどから弁護団は「画期的な判決」と評価。
 一方、労災事件を扱う弁護士からは「悪影響が出る可能性すらある」と厳しい意見も出る。判決をどうみるか、

<判決の主な内容>
・教員の職務は特殊で、厳密な労働時間管理はなじまない
・教員の自発的な業務と校長の指揮命令による業務は混然一体で、正確に分けることは困難
・教職員給与特措法(給特法)の下では、教員には残業代は支払われない
・校長の指揮命令の下、日常的に長時間の時間外労働があるなどとした場合には、国家賠償法上の賠償責任が生じる
・法定労働時間を超えた時間外労働があった
・「給特法はもはや教育現場の実情に合っていない」と付言
   
時間外労働を認定 前進  弁護団代表
  「公立教員は特殊」違和感  
弁護士
   給特法 見直す追い風に  東大名誉教授



小学教員950人増へ
 5・6年生「教科担任制」で  朝日新聞 2021(令和3)年12月23日
 小学5、6年生の一部授業で来年度から始まる「教科担任制」について、政府は来年度予算案で950人の教員の増員を決めた。末松信介文部科学相が22日、発表した。これにより来年度は予算上、外国語(英語)、理科、算数、体育のいずれかで週1コマ程度、担任以外の教員が教える体制が整うことになる。
 文科省はこの4教科について、25年度に週5コマの授業で教科担任制が実施できるよう、22~25年度で計8800人の教員の増員を計画。初年度となる来年度予算の概算要求では、2千人の増員を財務省に求めていた。

(桑原紀彦)



授業数や行事 見直し提言
 文科省有識者会議 教員の負担軽減図る  朝日新聞2023(令和5)年8月29日
 教員の多忙さが十分に是正されず危機的な状況だとして、文部科学省の有識者会議が28日、改善策を盛り込んだ緊急提言を永岡桂子文科相に提出した。
 緊急提言をまとめたのは、文科相の諮問機関・中央教育審議会の「質の高い教師の確保特別部会」。今回、法改正がいらず、すぐに取り組める項目に絞って提言に盛り込んだ。
■緊急提言の主な項目
①業務の適正化
・学校や教員の業務に優先順位をつけて負担軽減を図る対応策の例示
・標準を大幅に上回る授業時間数の見直しや学校行事の簡素化と精選
・生成AIをはじめ情報技術を活用した校務の効率化
②働き方改革の実効性の向上 
・保護者からの過剰な苦情への対応で、首長部局との連携も含めた支援体制の構築
③持続可能な勤務環境の整備
・全ての小中学校への教員業務支援員や副校長マネジメント支援員の配置
・主任手当や管理職手当の増額
・奨学金の返済支援の検討




《教員の資質 教育現場の危機的事態》





教育現場の危機的事態
   
教員間のいじめが新聞やテレビ等で明らかに
 神戸市東須磨小学校 校長謝罪 2019年10月9日


 ◆教員のわいせつ行為





「心の病」休職 公立校なお5千人超
 若手教員に重荷 コロナ追い打ち 
朝日新聞 2021(令和3)年12月22日
 「心の病」が原因で、2020年度に休職した公立小中高・特別支援学校などの教職員が、5180人に上ることが文部科学省の調査で分かった。前年度から298人減ったが、5千人を超えるのは4年連続。文科省の担当者は「高止まりの水準が続いている」とみている。

 21日、都道府県と政令指定都市の教育委員会を対象にした公立学校教職員の調査結果を公表した。精神疾患による休職者と1カ月以上の病気休暇取得者のうち20代は2140人で、初めて2千人を超えた。20代の教職員全体に対する割合は1.43%で、他のどの世代よりも高かった。背景について、文科省はベテランの退職などで、負担が増しているとみている。

 また、懲戒処分の状況も発表され、「性犯罪・性暴力等」で処分を受けたのは200人だった。このうち、児童生徒や18歳未満の子どもたちに対する性犯罪・性暴力は96人だった。
 管理職(校長、副校長・教頭)に就く女性は1万4357人(今年4月1日現在)で、前年から865人増。割合は21.1%で過去最高となった。

(桑原紀彦)


 心の病に苦しむ若手が増えている背景について、教員の働き方改革を支援するNPO法人「共育の杜」の藤川伸治理事長は、コロナ禍で急速に進んだデジタル化を挙げる。ベテラン世代は新しい機器や技術に不慣れな場合が多く、しわ寄せが若手にきているとみている。
 公立学校共済組合近畿中央病院で教員に特化した心のケアや復職支援を行う臨床心理士、井上麻紀さんは「コロナ禍で、遠足など行事の予定を変更するための業務も大きく増えた」と話す。「近年の大量退職でベテランが減り、20代も重要な仕事を任されている。なのに、コミュニケーションの機会が減り、相談もできない」
 人員の確保に加え、相談先の確保や、管理職へのメンタルヘルスケア研修の実施も重要という。    (高浜行人、三島あずさ)

 





《教員の確保と教員免許更新制》




公立小教員倍率 過去最低の2.7倍 
 
13自治体で2倍下回る  朝日新聞 2021(令和3)年2月3日(1面)
 2020年度に採用された公立小学校教員の採用倍率が、13自治体で2倍を下回った。全国平均は2.7倍で、過去最低だった。文部科学省が2日、調査結果を発表した。教員の大量退職が続き採用が増えた一方で、学校現場の長時間労働などを嫌って民間企業を目指す人が増えたことが要因とみられる。
先生確保に四苦八苦
 59歳まで受験 実技廃止 「全国一早い」試験  朝日新聞 2021(令和3)年2月3日(2面)
 倍率が最も低かったのは佐賀と長崎で、1.4倍だった。
 佐賀県教委によると、定年退職が多く、特に小学校で特別支援学級が激増しているため、ここ数年は採用数が高止まりしている。一方、受験者数は横ばい、または微減しており、倍率が下がっているという。
 
 より多様な人に挑戦してもらえるよう、18年度採用からは39歳だった受験年齢制限を49歳に。講師や他県の現職教員ら「即戦力」となる40代を毎年20~30人確保している。さらに21年度採用からは、59歳まで受験できるようにした。
 また、20年度採用からは小学校でピアノ、小中高すべてで水泳の実技試験もなくした。担当者は「『低倍率だから教員の質も低い』とならないよう、研修のさらなる充実などを図っていく」と話す。

 小学校の倍率が1.6倍だった富山県は、21年度採用から、地元の富山大と富山国際大を対象に、各2人の推薦枠を設けた。卒業後、県外へ出ていくことが多い地元の大学生を引き留めるのが狙いだ。推薦されると筆記試験が免除される。県教委は「もっと富山に残ってもらえるよう、枠を増やすことなども検討したい」という。

(三島あずさ、長富由希子、山田健悟、編集委員・氏岡真弓)



教員免許の更新制
 「抜本的見直しを」  
朝日新聞 2021(令和3)年3月13日
 萩生田光一文部科学相は12日、教員が10年ごとに免許を更新する「教員免許更新制」の抜本的な見直しを第11期中央教育審議会に諮問し、早期に結論を出すよう要望した。教員採用のあり方や教職課程の見直しについての議論も求めた。

 教員免許更新制は第1次安倍政権の「教育再生会議」などの提言を受け、2009年度に導入された。教員が10年に1度、国の教育政策や学校の変化など最新の知識や技能について大学などの講習を計30時間以上受け、免許を更新する。
 これに対し、学校現場からは、多忙化する現職教員の負担が増えた、免許を更新していない元教員らをすぐに任用できない、などの意見が出ていた。

 中教審への全体の諮問内容は、教員の「養成・採用・研修のあり方について」と「学校安全の推進に関する計画の策定」。現状の課題として教員の長時間労働やなり手不足、採用倍率の低下が示され、教員採用や教職課程、教員養成大学と教職大学院のあり方について議論するよう求めた。

■中教審への主な諮問内容
 ・教員免許更新制の抜本的な見直し
 ・教職課程の見直し
 ・教員採用のあり方、管理職のあり方
 ・教員養成大学・学部、教職大学院の機能強化
 ・教員の資質能力を再定義

《教員免許更新制度》
 第1次安倍政権の「教育再生会議」などが提言し、教育職員免許法の改正を経て2009年4月1日に導入された。
 教員が、国の教育政策や学校の変化など最新の知識や技能を学ぶことを目的とし、10年に1度、大学などの講習を2年間で30時間以上受け、終了後は教育委員会に申請すれば免許が更新される。多忙化する教員の負担増になっているとの指摘が出ている。

《教員の免許更新の流れ》
①免許の有効期間(旧免許状の場合は修了確認期限)を確認
②2年間で30時間以上の講習を申し込み
③講習を受講、修了証明書が発行される
④都道府県教育委員会に更新の申請
⑤更新証明書が発行される
※更新を忘れた場合は、免許が失効し失職。再取得には講習受講が必要

(伊藤和行)

教員免許更新制 8割「見直しを」
 全国教委 本社アンケート
  朝日新聞 2021(令和3)年5月30日

 2009年から続く教員免許更新制度について、朝日新聞社が教員の任命権を持つ67教育委員会にアンケートしたところ、53教委(79%)が「見直しが必要」と回答した。更新のための講習が長時間労働に苦しむ教員の負担になっているなどとして、このうち7割が講習免除対象の拡大といった制度の緩和を求めた。

 更新制は自民党の提案をもとに第1次安倍政権下の06年に導入が決定。現在、文部科学相の諮問機関、中央教育審議会の委員会が見直しに向けた議論をしており、廃止論も出ている。アンケートでは、制度の実務を担う教委自身も課題を感じている実態が浮かんだ。
 47都道府県と20政令指定都市の教委に聞いたところ、「見直し」を選んだ53教委以外では、「現行のままでよい」としたのは5教委にとどまり、9教委は「その他」を選び、「国の動向を注視している」などと答えた。

 見直しの内容について、53教委のうち39教委が「講習の受講期間を弾力化、免除を拡充するなど緩和する必要がある」を選択。夏休などに30時間行われる講習について、「多忙で受講が困難」(埼玉県)、「市の研修と講習内容が重複している」(浜松市)などの指摘があった。「(受講忘れによる)『うっかり失効』で即失効は重すぎ」との指摘もあった。
 制度が、産休や病気療養で代わりの教員を確保する際のネックになっていることもわかった。

(高浜行人、編集委員・氏岡真弓)



 <参 考> 教員免許更新制導入の経緯と問題化 

 教員免許更新制の導入が決まったのは2006年。文部科学相の諮問機関、中央教育審議会が導入を提言した。実は、この決定までは長い曲折があった。
 源流は、その20年以上前にさかのぼる。導入当時の中教審部会で委員を務めた八尾坂修・九州大名誉教授は「1980年代初め、自民党が免許の失効制度として提案したのが始まり」と説明する。免許をとっても教員にならない「ペーパー教員」対策として考えられたという。しかし、導入を求める声は主流にはならず、時が過ぎた。

 2000年、熱意や適性にかける教員が問題視されたことを背景に、森喜朗首相(当時)の私的諮問機関「教育改革国民会議」が提言し、導入論は息を吹き返す。その後、諮問を受けた中教審は、不適格教員を退場させる仕組みとしても検討したが、02年の答申で「更新時に教員の適格性を判断する仕組みは制度上取り得ない」と見送った。

 だが2年後、当時の文科相がまとめた改革案に導入が盛り込まれ、「教員の資質の向上のため」として再び諮問、06年の答申で導入が決まった。文科省の元幹部は「自民党の目的は不適格教員の排除だったが、それでは制度化できないから教員の質の確保策に趣旨を変えた」と明かす。
 翌07年、第1次安倍政権の「教育再生会議」が講習を修了したかどうかを厳しく判定するよう提言し、修了を確認するための試験ができた。ただ、文科省はホームページで、制度について「不適格教員の排除が目的ではない」と説明。試験は形式的なものにとどまっている。

 導入から12年がたち、ほころびも目立ち始めた。更新期限を忘れたために職を失う「うっかり失効」が相次ぎ、教育委員会などが行う研修と内容が重なるとの指摘が出た。教員の長時間労働が問題になるなかで、夏休になどに自費で受ける講習が、負担に拍車をかけているとの声もある。
 こうしたなか、萩生田光一文科相は2021年3月、「制度の抜本的な見直し」を中教審に諮問。中教審の委員会では、廃止の検討についての言及もあった。近く、更新制の今後について方向性が示されそうだ。

(2021.5.30 朝日新聞)




教員免許更新制 廃止求める声
文科省調査 講習に「不満」「負担増」の指摘も 朝日新聞 2021(令和3)年7月6日
 文部科学省が現職教員2108人に行ったアンケート結果が5日、公表された。自由記述の回答が1693人からあり、そのうち約50%の853人が「制度自体を廃止すべきだ。制度に意義を感じない」という趣旨の答えだった。
 調査は文科省が委託した民間調査会社が4~5月、全国の幼稚園、小中学校、高校、特別支援学校の教員にネットで実施。5日にあった中央教育審議会の小委員会に報告された。小委員会はこの結果も踏まえ、制度の存廃について結論を出す。



教員免許更新 廃止は来年度 朝日新聞 2021(令和3)年11月20日
 教員免許更新制について、末松信介文部科学相は19日の閣議後会見で、2022年度の早い時期に廃止し、23年度から新しい研修制度を始める考えを明らかにした。廃止日は未定だが、22年度末に期限を迎える教員は、更新が不要となる可能性が高い。
 末松文科相は、「来年の通常国会で法改正した場合、時間を置かずに施行するよう指示した」と述べた。文科省によると、更新制廃止には、教育職員免許法の改正が必要。来年の通常国会で改正法が成立し、施行日が決まれば、それ以降に免許の期限を迎える教員は更新が不要になるという。


教員免許更新制 7月廃止見通し 朝日新聞 2022(令和4)年1月14日
 教員免許更新制が、今年7月に廃止される見通しになった。来週召集される通常国会に政府が提出する教育職員免許法改正案に、廃止の日付について今年7月1日と盛り込む方針。


文部科学省:教員免許更新制に関する規定の廃止



教職敬遠? 免許の取得最少
20万件割れ 中高で大幅減  朝日新聞 2022(令和4)年8月5日
 学校で教員不足が問題になるなか、教えるのに必要な教員免許状の授与件数が大きく減っている。
 文部科学省が6月に発表した2022年度は計19万6357件(前年度比7440件減)で、データのある03年度以降では初めて20万件を切り、最少となった。特に中学校や高校の落ち込みが激しく、文科省は教員の長時間労働の実態が広く知られ、教職が敬遠されている可能性があるとみている。
 文科省の諮問機関、中央教育審議会の部会では、免許件数の減少に歯止めをかけるため、教職課程の履修負担を軽減する案が議論されている。文科省は年内に答申を受け、制度改正に乗り出す方針だ。

 文科省によると、20年度の普通免許状の授与件数は小学校が2万8187件(前年比146件減)、中学校が4万4297件(同1712件減)、高校が5万2629件(同2355件減)、特別支援学校1万2300件(同1094件減)、幼稚園4万4225件(同1928件減)など。03年度以降で最も落ち込み幅が大きいのは高校で、最多だった06年度の約8万3千件から4割近く減り、中学校も06年度の約5万8千件から2割以上減った。一方、小学校は最少の03年度から約4千件増え、近年はほとんど変動がなかった。

(高浜行人)





教員残業代なし 危機感  朝日新聞2023(令和5)年2月28日
 教員の長時間労働が問題となるなか、文部科学省は今年、公立学校教員の給与制度の見直しに向けた議論を本格化させる。検討の対象となるのは、残業代を支払わない代わりに、基本給の4%を上乗せして支給すると定める「教員給与特措法(特給法)」。いくら働いても残業代がつかないとして「定額働かせ放題」と批判されてきた。議論はどのように進むのか。

(桑原紀彦)

 
  
刻刻

 文科省「民間に人材流出」
 文科省は昨年12月、教員の処遇改善のあり方について検討する有識者会議を設置し、議論を始めた。
 給特法は1971年に成立し、翌72年に施行された。文科省によると、それより前は戦後にできた給与制度によって、教員の給与は一般公務員より1割程度高く設定されていた。勤務時間が一般公務員より長いとされたからだという。
 一方、制度的には一般公務員同様に残業代が出る仕組みになっていたが、文部省(当時)は校長らが時間外勤務を命じないよう通達を出し、残業代が生じないよう制度が運用されていた。

 しかし、実際には残業が常態化していたため、60年代半ばごろから残業代支払いを求める訴訟が全国で起こされた。これを踏まえ、文部省は66年度、公立校教員の勤務実態調査を実施。その結果、小中学校の1カ月の時間外勤務は平均約8時間と推計され、①これに見合う基本給の4%を「教職調整額」として上乗せして支給する②残業代は支給しない――ことを柱とする給特法の制定に至った。
 それから半世紀。教員の働き方は大きく変わった。文科省が2016年に実施した勤務実態調査では、時間外勤務の平均は小学校が月約59時間、中学校が約81時間(いずれも推計)で、給特法の制定時と比べて大幅に増加していた。

 教員の長時間労働が広く知られるようになるなか、教員採用試験は受験者の減少に歯止めがかかっていない。昨年春に採用された公立小学校教員の採用倍率は2.5倍で、3年連続で過去最低を更新した。
 国の調査によると、公立小学校の教員の平均給与は月約41万円。年収ベースでみれば一般公務員(大卒)より10万円ほど高いが、文科省幹部は「教員の残業の多さをみれば、給与の枠組みを変えないと今後も民間企業に人材がどんどん流れる」と危機感を募らせる。

3案軸に改善検討
 
残業時間分を支給■上乗せ割合増加■担務でも上積み
 文科省は22年度、勤務実態調査を6年ぶりに実施。今春、速報値を公表する予定だ。岸田文雄首相は今夏にまとめる「骨太の方針」に教員の処遇改善についての方向性を盛り込む意向を表明しており、文科省は有識者会議(文科相の諮問機関)に給与体系の見直しを諮問するとみられる。
 中教審での議論の行方に大きな影響を与えるとみられているのが、元文科相の萩生田光一・自民党政調会長らが昨年11月に立ち上げた党の「令和の教育人材確保に関する特命委員会」だ。
 党関係者によると、特命委は勤務実態調査の結果発表に前後して新たな給与体系の提言をまとめる方向だ。これに向け、水面下で3案が検討されている。

 一つ目は、給特法を廃止し、会社員と同じように時間に応じた残業代を支給するというものだ。
 二つ目は、給特法を維持しつつ、現在は基本給の4%となっている教職調整額を十数%まで引き上げるというもの。
 三つめは、この二つの「折衷案」だ。給特法を維持し教職調整額については4%から数㌽引き上げた上で、学級担任や部活の顧問を務めたり、主任の職に就いたりしている教員に相応の手当てを上積みする枠組みだ。

 文科省幹部は、今後の展望について「自民党の提言をベースに中教審で議論し、答申を受けて制度設計に入る」と話す。
 ただ、公立小中学校の教員給与の3分の1は国が負担しており、自民党のいずれの案でも新たに数千億円規模の財源が必要と見込まれるという。新制度導入には人件費増を避けたい財務省との厳しい折衝が避けて通れない。
 文科省は、党の要職にある萩生田氏を後ろ盾に新たな制度を設計し、25年の通常国会での法改正を視野に検討を進める方針だ。






《教員志願 止まらぬ減少》




教員志願 止まらぬ減少
本社全国調査 来年度6000人減 朝日新聞 2023(令和5)年9月20日(1面)


 公立学校教員の2024年度採用試験の志願者は全国で計12万7855人で、前年度から6061人(4・5%)減ったことが各地の教育委員会への取材でわかった。教員の長時間労働が問題となるなか減少が続いており、採用試験を行う全国68機関のうち6割近い38機関で、24年度試験の志願者数がこの5年間で最低となった。一方、採用の仕方を工夫し、志願者を増やした地域もある。

▶31面=各教委が対策

 採用試験の日程は地域によって異なるが、4~5月に出願▷7~8月に受験▷9~10月ごろ合格発表――という流れが一般的。朝日新聞は、採用試験を実施する47都道府県と20政令指定都市の教委、大阪府から教員人事権を移譲された豊能地区教職員人事協議会の計68機関に、この5年(20~24年度)の採用試験の志願者数と採用見込み数(定員)を聞いた。
 24年度試験の志願者数がこの5年で最低だった38機関のうち、24機関はこの5年に限らず、把握できた範囲で過去最低となった。また68機関のうち半数の34機関は、志願者数を定員で割った倍率もこの5年で最低だった。

 志願者数が減った理由について選択肢を示して複数回答可で聞くと、「教員の長時間労働などの問題が知られ、大学生から教職が敬遠されている」を選んだのが30機関と最多で、29機関が「教員以外の業種の採用拡大による競争激化」を選んだ。6機関は「減少傾向にない」と回答した。
 一方、志願者が増えた自治体もある。24年度試験の志願者数が全国最多の9465人だった東京都は、12年ぶりに増加に転じた。さいたま市と浜松市は現行の試験方式になってから最多となった。前年度から100人増えたさいたま市は、今年から新たに、大学や研究機関での研究経験があり、教員免許を持たない人を対象にした1次試験免除枠を設けるなど、選考区分が15種類に上っている。

(高嶋将之、植松佳香、編集委員・氏岡真弓)


志願者増へ 各教委が対策  朝日新聞 2023(令和5)年9月20日(31面)
 各教育委員会は教員のなり手を確保しようと様々な工夫を凝らす。だが、教員採用のハードルが下がることを懸念する声もある。
教員免許なし受験 出題範囲縮小も
  質の低下懸念の声も  
 志願者数がこの5年で最低だった埼玉県。今年から、教員免許がなくても受けられる試験を始めた。県教委によると民間企業などで正規雇用されて5年以上勤
務した人が対象で、合格した場合、2年間の猶予期間中に大学などで単位を取り、教員免許を取得すれば教壇に立てる。
 同様の取り組みは山口県でも今年から始まった。猶予期間中に免許を取ってもらう。年間26万円を上限に免許取得のための学費を補助するのが特徴だ。定員5人に20代から50代までの57人が志願し、倍率は11・4倍。県教委の担当者は「反響は大きかった」と話す。

 従来は大学4年生だった試験の対象を、3年生に広げる動きもある。
 東京都教委は今年初めて3年生向けの試験を実施した。1次の筆記試験の一部を受けて合格すると、4年次の来年の試験ではその部分が免除される。初回の今年は3年生2540人が受験した。
 横浜市教委は以前から大学推薦による1次試験免除を導入していたが、今年の試験では3年生も対象に加えた。民間企業の多くが内定を出すよりも早く、今年10月に合否を伝える。合格で学業がおろそかにならないよう、4年生の4月に、それまでの大学の成績が推薦基準に達しているか確認するという。
 試験の範囲を大幅に縮小した教委もある。新潟県教委は今年から、小学校教員の1次試験のうち、教科に関する試験の出題範囲を国語、社会、算数、理科、英語の5教科から、算数と国語の2教科に絞った。担当者は「教員の質の低下につながらないよう、2次試験では時間をかけて面接し、適性を丁寧に見きわめる」としている。

(植松佳香、編集委員・氏岡真弓)

単位少ない2種4年制でも 
 志願者の裾野を広げるため、文部科学省は教員免許取得を目指す学生の負担軽減に乗り出した。
 小中学校教員をめざす場合、現行制度では、4年制大学の卒業者は「1種免許」、短大卒業者は「2種免許」を取得するのが一般的で、2種の方が取得に必要な単位数が少ない。1種も2種も教員として指導できる範囲に違いはないが、1種を管理職になる要件としている自治体もある。
 文部科学省によると、1種免許の取得に必要な単位が多く、留学などとの両立が難しいとの声が出ていた。そこで、2種免許を取れる課程を4年制大学にも設置できるようにする。2025年度から新設可能になる方向だ。

 質の高い人材を確保しようと、文科相の諮問機関、中央教育審議会の特別部会では、教員の働き方改革や待遇改善の議論が進む。公立学校教員に、残業代を払わない代わりに基本給の4%を「教職調整額」として上乗せ支給すると定めた「教員給与特措法」の手直しも検討する方向だ。特別部会での議論に先立ち、自民党は調整額の10%に増やす改革案を提示している。

(編集委員・宮坂麻子)

長時間労働が常態化 学生「不安」
 文部科学省が4月に公表した公立学校教員の勤務実態調査の結果によると、1カ月あたりの時間外勤務(残業)は、中学校で77%、小学校で64%の教諭が文科省の定める上限基準(45時間)に達し、長時間労働が常態化している。






先生を 教育の質を 守る
朝日新聞 2024(令和6)年3月11日


 記者解説  
   
編集委員
氏岡真弓/社会部 久永隆一

給与や長時間労働 予算かけ抜本策を
 
教員の忙しさはデータでも裏付けられている。文部科学省が2022年度に実施した公立学校教員の勤務実態調査によると、平日の平均労働時間は、小学校10時間45分、中学校11時間1分。これには持ち帰ってする仕事時間は含まれていない。1カ月あたりの残業時間が文科省の定める上限(45時間)に達していたのは小学校教員で64%、中学校教員で77%。長時間の残業が常態化している。
 国際的にも日本の長時間労働は際立つ。経済協力開発機構(OECD)の「国際教員指導環境調査2018」によると、中学校教員の1週間の仕事時間は、OECD加盟国のうち調査に参加した31カ国の平均が38・8時間だったのに対し、日本は56・0時間。書類作成などの「事務仕事」は、参加国で最長の週5・6時間だった。

 少子化が進んでも先生の負担は重い。不登校や日本語の指導が必要な子どもは増えている。過剰な要求をする保護者への対応も課題だ。精神疾患で休職する公立学校教員は増えており、22年度は過去最多の6539人だった。
 教育現場の門をたたく若者は減少している。公立小教員の23年度採用試験では、合格者が採用見込み数(募集定員)を割り込む自治体が続出した。大分県では、受験者数が採用見込み数を下回る「定員割れ」が起きた。
 このままでは優秀な人材が集まらず質の高い教育が難しくなる。文科省は中央教育審議会に特別部会を設け、昨年6月に議論を始めた。論点は三つ。働き方改革の推進や教員の専門性がさらに生かせる職場環境づくり、給与の引き上げだ。給与の見直しは今年2月から具体策が議論されている。

 公立学校教員の長時間残業の背景には「定額働かせ放題」と批判されてきた給与の仕組みがある。残業代を支給しない代わりに、基本給の4%を「教職調整額」として一律支給するものだ。文科省はどこまでが仕事で、どこからが自己研鑽か区別が難しいと主張するが、私立学校などの教員は給与制度が異なり、時間に応じた残業代が出ることになっている。
 同省の試算では22歳の初任給は月23万988円(通勤手当や扶養手当などは含まない)で、うち調整額は8788円。32歳の調整額は1万1872円、42歳は1万704円となっている。

 現行制度の根拠は1972年施行の教員給与特措法(給特報)だ。残業を月8時間と想定し、調整額の4%という比率が決められた。それから50年以上、一度も比率を変えておらず労働実態とのズレが拡大している。19年の中教審の答申でも課題とされていた。
 自民党は比率の4%から10%以上への引き上げを提案している。実施には予算の確保が前提となる。文科省によると、国の予算ベースでは現在の年間460億円程度から1150億円に増える(期末手当への影響を含む)。
 給特報をめぐっては廃止を含め抜本的に見直すべきだという意見もある。ただ、中教審の特別部会の議論は存続を前提とするものが大勢を占める。文科省は財務省や与党などと調整し、4月ごろには一定の方向性を出すとみられる。

 勤務条件の改善も必要だ。教育研究者たちが2月15日、業務量に見合った教職員の配置などを求め、約18万筆の署名を文科省に出した。教員の数を増やし、各教員が担当する授業数(持ちコマ数)を減らすことも提案した。
 呼びかけ人の広田照幸・日大教授(教育社会学)は「業務削減だけでは解決しない。教員の本務の授業に切り込まなければ残業が生じてしまう」と語る。事務や会議、部活動といった学習指導に関わりの薄い業務時間を半分に削ったとっしても、1日の平均勤務時間は所定の7時間45分に収まらないと広田教授は指摘する。

 浜田博文・筑波大教授(学校経営学)は、授業の事前準備や振り返りの時間を確保しつつ残業をなくすには、「小学校は今の週30コマ(チームティーチングなどの授業補助を含む)から週17コマ、中学校は週22コマから15コマに減らす必要がある」という。
 その場合に必要な公立の教員数を広田教授らが試算すると、小学校は22年度の41・6万人から58・7万人に、中学校は23・0万人から27・6万人になるという。追加分の人件費は1・5兆円に上る。広田教授は「かなりの額だ。教育国債の発行や消費税の税率アップなど国民の合意がいる」と話す。

 教員の長時間労働の問題を20年近く研究し、中教審部会長も務めた小川正人・東大名誉教授(教育行政学)は、広田教授らの案について効果があると評価しつつ「厳しい財政状況を考えると難しい」とみる。小川氏は、退勤から翌日の出勤までに13~14時間にインターバル(休息時間)をとることや、時間外勤務が過労死ライン(月80時間)に近い60時間以上の教員に振り替え休暇を義務づけるべきだという。振り替え休暇の教員の代わりに非常勤講師をあてる費用に数千億円かかるという。
 今回の給与や働き方の見直し議論について小川氏は「このままでは給特報の枠組みを維持し、教職調整額は増やすが最低限に抑える小幅な改革になる。人材確保の有効な策を打ち出せないまま終わるのではないか」と危惧する。


 《教員の給与や働き方をめぐる主な動き》 朝日新聞をもとに作成

1960年代  教員の超過勤務をめぐる訴訟が相次ぐ
  71年  教員給与特措法(給特報)が成立
2017年  教員勤務実態調査で中学教員6割、小学校教員3割が「過労死ライン」
 19年   中央教育審議会(中教審)働き方改革を答申。教員の本来業務を「3分類14項目」に整理。
時間外勤務の上限を「月45時間」とするガイドラインを守るよう求めた

 23年   教員勤務実態調査をもとにした推計で月45時間の上限に達するの小学校64%、中学校77%
 24年  中教審の特別部会で給与改革の議論がスタート
 25年  給特報改正案の国会提出も




増員なしが前提では困難

 教員の長時間労働について、文科省は「できるだけお金を使わずに、できることをする」という姿勢を続けてきた。
 それぞれの学校や教育委員会は成績処理を電子化するなど、業務を効率化しようとしてきた。教員業務支援員(スクール・サポート・スタッフ)も配置した。
 ところが、そうした取り組みをしても、22年の勤務実態調査では長時間労働がさほど是正されていない。平日1日あたりの勤務時間は、小学校が10時間45分で前回の16年度から30分減、中学校は11時間31分減にとどまった。「精いっぱい努力しても教員は疲弊するばかりだ」と都内の小学校長は言う。
 予算の抑制、つまり人手を増やさないことを議論の前提にするのなら、勤務時間を十分には減らせない。

 文科省は「教育内容と授業時間を減らさない」ことも前提としてきた。学力低下の批判を受け「脱ゆとり教育」にかじを切ったためだ。英語やプログラミングなど教育内容がふくらみ、事業時間の目安の「標準授業時数」も増えている。文科省内では、次の学習指導要領で教育内容や授業時数を減らすことは学力低下を招きかねないとして慎重な意見が根強い。
 だが、長時間労働を是正できず教育の質の確保そのものが危ぶまれているなか、現状の内容と時間のままでいいのだろうか。
 今回の中教審の特別部会の議論について、ある文科省幹部は天下分け目の「関ヶ原の戦い」にたとえ、働き方改革の集大成だと意気込むが、抜本的な対策が実現する見通しは立っていない。

 労働時間の短縮や待遇改善が実現されなければ、教員になることを避ける動きが広がってしまう。文科省はこれまでの前提にとらわれず、結果を伴う対策を打ち出さなければならない。
 












◆厚生労働省の取り組み
 


《社会福祉士及び介護福祉士法の制定》
《社会福祉事業及び人材確保に関する考え方》  
《福祉職の資格化の意義と課題》
《福祉・介護サービス事業に関する動向》









《社会福祉士及び介護福祉士法の制定》




「社会福祉士及び介護福祉士法」 の制定

《昭和62年、社会福祉の増進に寄与することを目的に「社会福祉士及び介護福祉士法」の制定》

 この法律の制定により、国家資格である「社会福祉士」と「介護福祉士」の養成施設ができ、その有資格者も年々増加してきました。しかし福祉現場では、人材難が問題になっています。こうした状況に対して、厚生労働省より指針「社会福祉事業に従事する者の確保を図るための措置に関する基本的な指針(平成19年8月28日)」が示されました。
 この指針は、いわゆる福祉人材確保法(社会福祉事業法及び社会福祉施設職員退職手当共済法の一部を改正する法律 平成4年法律第81号)に基づき、高齢者介護に係る新ゴールドプランの策定、少子化の進行に対応するエンゼルプランの策定、障害者の自立と社会参加を促進していくための総合的な障害者施策の検討といった当時の状況と相まって、これらを担う人材の養成確保を図っていくことを目的に告示された旧人材確保指針(平成5年4月14日 厚生省告示第116号)の内容を見直して改めて出された告示です。


社会福祉士:登録者数165,494人 (平成25年9月末現在 厚生労働省)
介護福祉士:登録者数794,419人 (平成24年9月末現在 厚生労働省)





《社会福祉事業及び人材確保に関する考え方》




「社会福祉事業に従事する者の確保を図るための措置に関する基本的な指針」の見直しについて
   (平成19年8月28日 厚生労働省告示第289号)(PDF)



社会福祉事業に従事する者の確保を図るための措置に関する基本的な指針(抜粋)

(平成19年8月28日 厚生労働省告示第289号)

 前 文

 少子高齢化の進行や世帯構成の変化、国民のライフスタイルの多様化等により、国民の福祉・介護サービスへのニーズがさらに増大するとともに、認知症等のより複雑で専門的な対応を必要とするニーズの顕在化等を背景として、質的にもより多様化、高度化している状況にある。
 少子高齢化の進行等の下で、15歳から64歳までの「生産年齢人口」の減少に伴い、労働力人口の減少が見込まれる一方、近年の景気回復に伴い、他の分野における採用意欲も増大している。
 また、福祉・介護サービス分野においては、高い離職率と相まって、常態的に求人募集が行われ、一部の地域や事業所では人手不足が生じているとの指摘もある。
 このような状況を考慮すると、福祉・介護サービス分野は最も人材の確保に真剣に取り組んでいかなければならない分野の一つであり、福祉・介護サービスの仕事が少子高齢化社会を支える働きがいのある、魅力ある職業として社会的に認知され、今後さらに拡大する福祉・介護ニーズに対応できる質の高い人材を安定的に確保していくことが、今や国民生活に関わる喫緊の課題である。

 第1 就業の動向

<福祉・介護サービスにおける就業の現況>
 福祉・介護サービスに従事する者は、介護保険制度の創設や障害福祉制度の見直しらによる福祉・介護のサービスの質の充実、量の拡大に伴い、その数は急速に増加しており、とりわけ高齢者に関連するサービスに従事する者の伸びは著しく、さらに従事者の特徴として、
①女性の占める割合が高く、介護保険サービスにおいては、平成16年の実績で約8割を占めていること
②非常勤職員の占める割合が増加しており、介護保険サービスにおいては、平成17年の実績で約4割、このうち訪問介護サービスについては非常勤職員が約8割を占めていること
③入職率及び離職率が高く、平成16年における介護保険サービスに従事する介護職員の数に対するその後の1年間の採用者数の割合は約28%、離職者数の割合は約20%であること
④給与水準は、業務内容や勤続年数等を勘案して、経営者と従事者との間の契約で決められるものであり、その高低については一律に比較を行うことは困難であるが、例えば平成17年においては、従事者の給与の平均を他の分野を含む全労働者の給与の平均と単純に比較すると、低い水準にあること

 このように、従事者が増加しているにもかかわらず、離職率が高く、労働移動が激しい状況にあることから、常態的に求人募集が行われることもあり、介護関連職種の平成18年度における有効求人倍率は、パートタイムを除く常用で1.22倍、常用的パートタイムで3.08倍と、全職種(パートタイムを除く常用で0.92倍、常用的パートタイムで1.35倍)と比較して高い水準にあり、特にパートタイムにおける労働需要は大きなものとなっている。

<福祉・介護サービスにおける今後の就業の見通し>
 介護保険制度における要介護認定者及び要支援認定者は、平成16年の約410万人から、平成26年には約600万人から640万人に達すると見込まれ、今後、高齢者に対する介護保険サービスの需要がますます拡大していくこととなる。
 また、障害福祉サービスを利用する障害者についても、平成17年の約40万人から平成23年には約60万人に達すると見込まれ、高齢者と同様、障害者に対する障害福祉サービスの需要もますます拡大していくことになる。
 さらに、保育分野については、女性の就業継続の希望を実現する観点から、特に3歳未満の児童の保育サービスの拡充が求められており保育サービスの需要も今後さらに拡大していくことが見込まれる。
 こうした状況の中で、例えば将来必要となる介護保険サービスに従事する介護職員については、平成16年の約100万人から、平成26年には、
①仮に後期高齢者の人口の伸びに比例して職員数が増加するとした場合、約140万人に、
②仮に要介護認定者数の伸びに比例して職員数が増加するとした場合、約150万人から160万人に、増加するものと見込まれ、少なくとも今後10年間に、約40万人から60万人の介護職員の確保が必要となる。


 第2 人材確保の基本的な考え方


①就職期の若年層から魅力ある仕事として評価・選択されるようにし、さらに従事者の定着の促進を図るための「労働環境の整備の推進」を図ること
②今後、ますます増大する福祉・介護ニーズに的確に対応し、質の高いサービスを確保する観点から、従事者の資質の向上が図られるよう、「キャリアアップの仕組みの構築」を図ること
③国民が、福祉・介護サービスの仕事が今後の少子高齢化社会を支える働きがいのある仕事であること等について理解し、福祉・介護サービス分野への国民の積極的な参入・参画が促進されるよう、「福祉・介護サービスの周知・理解」を図ること
④介護福祉士や社会福祉士等の有資格者等を有効に活用するため、潜在的有資格者等の掘り起こし等を行うなど、「潜在的有資格者等の参入の促進」を図ること
⑤福祉・介護サービス分野において、新たな人材として期待されるのは、他分野で活躍している人材、高齢者等が挙げられ、今後、こうした「多様な人材の参入・参画の促進」を図ること

 これらの視点に立って、いわゆる団塊の世代の全員が高齢者となる平成27年(団塊の世代が退職していくことから)を見据えて、重点的に取り組む必要がある。






《福祉専門職の国家資格化の意義と課題》




 教育の分野では、特別支援学校に在籍する児童生徒の数が増加の傾向にあります。福祉の分野では、福祉ニーズの多様化と増大があります。

 障害児(者)の教育的支援・福祉的支援を考えた場合、教育制度に関しては、教員養成の免許制度のあり方の問題があり、福祉制度に関しては国家資格として制定された社会福祉士及び介護福祉士制度のあり方の問題があるわけですが、いずれにしても教育や福祉にかかわる人材の養成と確保は、現代日本の重要課題といっても過言ではありません。

 福祉分野の事業を推進し充実を図るということでは社会福祉士及び介護福祉士法の制定の意義は大きかったはずです。社会福祉士・介護福祉士の養成課程を設けた専門学校や大学等も多く、毎年そこで学ぶ学生等の数も相当数に及んでいます。
 しかしせっかく資格を取得して職に就いたにもかかわらず、離職する例も多いようです。また採用したくとも応募者がいないなど、福祉現場では人材確保が困難な状況にあります。それはなぜでしょうか。

 離職の原因には、学んだことと現場での実践にギャップのあることも問題のようです。専門学校や大学等での養成課程に基づく指導内容や方法がはたして適切なのかどうか、あるいは養成課程そのものに問題はないのかどうかの検証も必要だと思います。
 さらに人材を求める福祉現場の受け入れ体制や待遇面の改善など「労働環境の整備」は、単に事業経営者側の自主的な努力だけでは立ち行かない法制度上の問題もあると思います。

 厚生労働省の指針にある「人材確保の基本的な考え方」はよいとしても、要は、実際的かつ具体的にはどうするか、そしてどのようになっていくのかが問題です。考え方と実際の施策には整合性がないように思います。
 資格の取得が就職に有利に反映されなければ意味がない。現状は、福祉や介護の分野の仕事に就くことが誇りのもてる社会的に真に価値あるもの、魅力あるものとして確立されていないところの問題が大きいと思います。


取得しても待遇は・・・
 変わらぬ月給「なんのため」 介護の資格
   2015(平成27)年1月26日 朝日新聞
 「介護福祉士」の資格は、待遇を大きく変えてはくれなかった。
 介護福祉士は、介護の専門的知識や技術を持つ人に与えられる国家資格で、1989年に始まった。介護職員の中核になって高齢者を世話する人たちだ。
 介護福祉士は国家試験のほか、専門学校などの介護の養成学校を卒業すれば資格が取れる。厚生労働省の検討会は、介護福祉士の質を一定以上にするため、2017年から卒業生にも国家試験を義務づけることができるかを議論してきた。だが、昨年8月、先延ばしする方針を決めた。関係者によると、養成校などから、介護を学ぼうとする若い人がさらに減ってしまうという声が出たという。
 資格は本来、就職や昇給に役立つものだ。だが、資格づくりや仕組みの変更ばかりが目立ち、逆に現場をまどわせる例もある。

「資格づくりや仕組みの変更ばかりが目立ち、逆に現場をまどわせる例もある」というのはまさにその通りだと思います。
 子どもの社会的擁護や家庭支援など子ども分野の福祉に関する新たな国家資格の創設を求める意見があるが、それよりもまず、既存の社会福祉士らの資格を有効に活用すべきで、現任職員の研修強化や勤務条件などの待遇改善が先決だと思います。

 厚生労働省:福祉人材確保対策


 専門学校や大学等での養成課程に基づく指導内容や方法がはたして適切なのかどうか、あるいは養成課程そのものに問題はないのかどうかの検証も必要だと思います。
 さらに人材を求める福祉現場の受け入れ体制や待遇面の改善など「労働環境の整備」は、単に事業経営者側の自主的な努力だけでは立ち行かない法制度上の問題があると思います。

 福祉に関わる人材の確保に関する厚生労働省の指針にある「人材確保の基本的な考え方」はよいとしても、要は、実際的かつ具体的にはどうするか、そしてどのようになっていくのかが問題です。考え方と実際の施策には整合性がないように思います。
 資格の取得が就職に有利に反映されなければ意味がない。現状は、福祉や介護の分野の仕事に就くことが誇りのもてる社会的に真に価値あるもの、魅力あるものとして確立されていないところの問題が大きいと思います。






《福祉・介護サービス事業に関する動向》




◇障害福祉サービス等の報酬改定
 厚生労働省は、「経済財政運営と改革の基本方針2014」において、「平成27年度報酬改定においては、サービス事業者の経営状況等を勘案して見直す」とされていることを踏まえた、サービスの適正実施等の観点からの所要の見直しを行い、2015年度の障害福祉サービス等報酬改定の概要を平成27年2月12日付で公表した。

◆障害者の「生活介護」報酬減 職員給料は改善へ  2015(平成27)年2月13日 朝日新聞

 障害が重い人向けの報酬を手厚くする一方、施設などでの食事や入浴を支援する「生活介護」は基本報酬を引き下げる。
 福祉サービスの報酬は主に税金で賄われ、介護保険サービスの報酬と同じく、ほぼ3年ごとに改定する。2000年以降、増額され続けてきた。15年度の予算編成では、職員の給料が月1万2千円上がるように待遇改善加算を上積みする一方、それ以外の報酬を1.78%分減らし、全体では「据え置き」と決まった。
 報酬を増やすのは、障害が重い人向けのグループホームでのサービスや訪問介護など。退院支援などに新たな加算を設ける。一方、施設などでの食事や入浴を支援する「生活介護」の基本報酬を減らすのは、経営実態調査で企業の利益率にあたる「収支差率」が13.4%と高かったからだ。
 障害福祉の予算は利用者の増加を背景にこの10年間で2倍以上になり、今年度に当初ベースで初めて1兆円を突破した。厚労省の担当者は「基本報酬をここまで幅広く切り下げたのは初めて。これまでのように予算の増額によってサービスの充実を図るのは難しくなっている」と話す。 

(中村靖三郎)


厚生労働省:平成27年度障害福祉サービス等報酬改定の概要

  

◇介護報酬の改定
 介護報酬は、市町村介護保険事業計画との関係から、3年ごとに見直されることになっている。2009(平成21)年度はプラス3.0%の改定。2012(平成24)年度はプラス1.2%の改定。2015(平成27)年度の改定については、改定実施の前に2014(平成26)年4月からの消費税率が8%に上がることに伴う事業者の負担増を補てんするための変則的な介護報酬の改定が行われ、0.63%引き上げられた。


介護報酬 減額っていいこと?
 事業者経営に打撃、サービス休止も 利用者負担は減少 質の維持に懸念  2015(平成27)年2月20日 朝日新聞

 介護保険サービスを提供した事業者に支払われる「介護報酬」が、4月から引き下げられる。収入が減る事業者には「介護崩壊」への強い不安が広がる一方、介護保険料やサービスの利用料が安くなるのも事実だ。介護の現場にどんな影響があるのか。
 厚生労働省は6日に2015年度~17年度の介護報酬の額を公表した。全体では2.27%の引き下げで、個別のサービスの値段も決まった。企業のもうけにあたる「収支差率」が高い特別養護老人ホームなどの施設に限らず、在宅サービスも含めて基本報酬は軒並み減額となった。
 一方、介護職員の給料増額にあてる加算は拡充。さらに認知症や介護度の重い人を支える「24時間定期巡回・随時対応型サービス」などの在宅サービスでは、様々な「加算」を手厚くし、加算を含めれば増収になるようにした。
 安倍晋三首相は18日の参院本会議で「質の高いサービスを提供する事業者には手厚い報酬が支払われることとしている」と述べた。

 訪問介護につく新たな特定事業所加算は、利用者のうち要介護3以上や認知症の症状が進んでいる人が6割以上いれば、報酬が上乗せされる。ただ、(訪問介護事業などを手がけるNPO法人の事業所の場合の例では)利用者の7割は要介護2以下の人だ。
 改定の目玉の一つが、介護職員の給料アップのための処遇改善加算の拡充だ。1人月額1万2千円相当を上乗せできるようにすると国は説明する。

 介護報酬が下がれば、65歳以上の高齢者や、40~64歳の人の負担している介護保険料は、いずれも抑制される。
 税や保険料から介護事業者に支払われる費用は、制度が始まった2000年度の3.6兆円から10兆円(14年度)に増加。65歳以上が払う保険料(全国平均の月額)でみると、2911円(00~02年度)から4972円(12~14年度)にまで上昇。10年後には、8200円程度まで上がると厚労省は予想する。
 65歳以上が支払う介護保険料は、15年度から全国平均で5800円程度になると見込まれていた。それが介護報酬引き下げで230円程度値上げが抑えられ、5千円台半ばにとどまる見通しだ。介護報酬が下がれば、その原則1割を負担する介護サービスの利用料も連動して減る。
 ただし負担が減ればいいということでもない。介護事業者が経営に行き詰まったり、サービスが悪くなったりすれば、利用者やその家族にしわ寄せは向かう。利用できるサービスが減ってしまうかもしれない。結果として、家族の介護負担が重くなり、高齢者の世話のために仕事を辞める「介護離職」などが増える恐れもある。 

(森本美紀、有近隆史、立松真文)


 この朝日新聞の記事によれば、今回の介護報酬の改定については、「事業者が介護度の重い人ばかりを優先し、軽い人が見捨てられるのでは」ということと、「軽度の人の介護度が重くならないように支える、という視点が欠けている」と危惧する見方がある。
 また職員の給料アップのための処遇改善加算について、事業者の立場からは「加算はいわば『おまけ』。3年後の報酬改定で維持されるかもわからない。処遇改善のためのお金は基本報酬に入れるべきだ」という声があるという。

厚生労働省:社会保障審議会介護給付費分科会「平成27年度介護報酬改定に関する審議報告」 (PDF) 






「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」が成立しました。
(平成30年7月6日公布)


厚生労働省:「働き方改革」の実現に向けて
 2019(令和元)年4月より、働き方改革関連法の一部が施行されました。「働き方改革」の実現は、教育や福祉の事業に携わる人材の確保育成にも大きく関係し、障害者の就労支援にも関係することだと思います。

 福祉・介護の事業所で今問題となっていることは、職員の処遇改善加算をめぐる問題です。
 
《福祉人材の処遇改善加算について》
 これは福祉・介護の事業所の実際を本当に理解してのものなのでしょうか。福祉や介護の事業とはいっても、一つの組織として分担職務は多岐にわたります。連携したチームワークが大事です。この処遇改善加算の事務はとても煩雑で、実情を考慮したものとも思えません。そもそも煩雑すぎること自体が問題だと思います。
      
東社協 社会福祉法人経営者協議会調査研究会:
  福祉人材確保・育成・定着に関する調査報告書(令和元年5月)

 社会福祉法人東京都社会福祉協議会(東社協)の社会福祉法人経営者協議会調査研究会が都内に法人本部のある822の社会福祉法人を対象に行った調査結果をまとめた「福祉人材の確保・育成・定着に関する調査分析結果報告書」(令和元年5月)によれば、「処遇改善加算の課題」として、70.0%近い法人が処遇改善加算に対して否定的であることが確認されたとあります。
 その主な理由は、「 処遇改善加算の対象職種が限定されている 」「職種間の給与バランスが崩れる」「加算取得のための事務手続きが煩雑」というもので、具体的には人事異動に支障が出るほか、不公平・格差を解消するための法人の持ち出しは経営を圧迫するということです。こうしたことに対する注目すべき意見として「介護報酬全体を引き上げて、それをどう使うかは法人の裁量にまかせてもらえないか」「基本報酬単価を上げて、即刻廃止すべき」ということを挙げています。

厚生労働省:
  
「福祉・介護職員等特定処遇改善加算に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式の提示について」(令和元年5月17日)
 厚生労働省は、各都道府県、指定都市、中核市の障害福祉主管部(局)長宛通知「福祉・介護職員等特定処遇改善加算に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式の提示について」(令和元年5月17日)を発出しました。

 特定処遇改善加算は、「勤続10年以上の介護福祉士について月額平均8万円相当の処遇改善を行うことを算定根拠に、他の障害福祉人材についても、介護人材と同様の処遇改善を行う」としていますが、加算に関する事務処理は煩雑です。「煩雑であること自体が問題」だという認識がなければ、根本的な処遇改善にはならないと思います。
「処遇改善加算」などという言い方がいつまでも続くのも本当の改善ではない。



 福祉・介護人材の処遇改善加算は、根本的な問題の改善や解決にはならず、財源問題の解決にもならない無駄を繰り返しているに過ぎない。それは政治的貧困や歪みによるものだといって過言ではないと思います。こうした無駄を繰り返さない文化国家を目指してほしいと思います。


福祉・介護2019年度障害福祉サービス等報酬改定について


◆介護・保育・看護3%賃上げ方針
  政府、来年2月から  
朝日新聞 2021(令和3)年11月13日
 政府は、介護職員や保育士、救命救急センターを設置する医療機関に勤める看護師、幼稚園教諭の賃金について、来年2月から月額約3%にあたる9千~1万2千円引き上げる方針を固めた。児童養護施設や放課後児童クラブ、障害者施設で働く人も同様に賃上げする。
 19日に発表する経済対策で打ち出し、補正予算に交付金を盛り込む。民間企業の平均を下回る介護・保育分野の賃金の底上げを図るねらい。子どもや障害のある人たちの教育や福祉の分野でも低賃金が課題となっている。

 介護、保育、看護の分野はサービスの価格を政府が決める「公的価格」。高齢者施設や保育所、病院といった事業所側の手元に「報酬」として入るが、公的価格を引き上げれば、現場で働く人たちの賃金の水準も上がりやすくなる。
 政府は来年2~9月分は交付金や補助金といった形で、賃上げに必要な予算を確保する。介護と看護の10月分以降については、価格を引き上げる「報酬改定」での対応を検討している。看護は、年末の報酬改定で財源確保を議論する。介護は臨時の改定を行う。
 内閣官房によると、ボーナスなども含めた賃金水準を月額に換算すると、2020年は介護職員が29万3千円、保育士が30万3千円、看護師は39万4千円。介護職員と保育士は、民間平均の35万2千円を下回っている。

(西村圭史、久永隆一、石川友恵)



 障害者施設でのサービスや障害者の自宅でのサービスにかかる費用は、国が定める公定価格「障害福祉サービス等報酬」に基づいて国や地方自治体が事業者に支払うものです。(所得に応じて利用者が一部を負担する場合もあります)
 
 2014(平成26)年度当時の試算で財務省は、事業者に支払う公定価格の「障害福祉サービス等報酬」について、事業者が実際にサービスに使っている費用より公定価格のほうが高く、事業者の「もうけ」は過大で、企業の利益率にあたる「収支差率」が12%程度あり、介護事業者(8.7%)より多いとして、このお金をサービスの充実や職員の賃金に回せば、事業者への報酬を下げても障害者へのサービスの切り下げにはつながらないとして厚生労働省などと、2015(平成27)年度の事業者向け報酬を1%前後引き下げる方向で調整し、一方で、現場で働く職員の給料が月額1万円程度の賃上げになるように「処遇改善費」を付けるということにした経緯があり、現在に至っているわけです。

 本気で職員の待遇を改善し、人材を確保し、利用者に安定したよりよいサービスを提供するというのであれば、事業者に支払う基本報酬を引き上げるとともにサービスの利用実績に応じて事業者に報酬を支払う現在の方式である日額制を改め、常勤換算方式などという非常勤職員の雇用を前提とするような職員の配置基準も見直すべきです。





◆わいせつ保育士 10年間復帰禁止
  最長、禁錮刑以上で 法改正検討  
朝日新聞 2021(令和3)年11月25日
 保育士による子どもへの性暴力を防ぐため、厚生労働省が法改正の検討に入った。性犯罪で禁錮以上の刑を受けた場合、保育園などで働けない期間を現行の2年から最長10年に延ばす方向だ。同省は関連する項目を盛り込んだ児童福祉法改正案をとりまとめ、来年の通常国会に提出する方針。
 保育士や保育所のあり方を幅広く議論する厚労省の検討会が24日、わいせつ行為をした保育士に対して求められる制度の改善策を示した。

 厚労省はこの提言も踏まえ、禁錮以上の刑になった場合は事実上10年間、保育士として現場で働くのに必要な都道府県への登録を禁止する考え。罰金刑は3年間を再登録禁止とする方針だ。また刑罰を受けたかどうかにかかわらず、わいせつ行為をしたこと自体も、登録取り消しの理由の一つに位置づけるとしている。
 わいせつ行為で登録を取り消された保育士が再び都道府県に登録しようとする場合には、都道府県の審査会で事前にチェックし、再登録を一定程度、制限する仕組みも検討する。

 国は、わいせつ行為をして登録を取り消しされた保育士の情報データベースを整備する計画だ。保育園などの雇う側が採用する前の段階で、保育士の状況を把握できる仕組みをつくる。
 こうした方法で、現場に戻ることへのチェック機能を働かせ、子どもへの性暴力の再発を防ぐねらいだ。

(久永隆一)






  <参 考> 「福祉は公共事業より雇用を生む」 (2008.7.27 朝日新聞)
 厚生労働省が8月初めにも公表する予定の08年版厚生労働白書の内容が明らかになった。
 社会保障のための税や保険料の負担が「経済成長にはマイナス」との指摘に対し、消費や雇用面で経済発展を支えている点を強調した内容だ。社会保障費の伸びを毎年2200億円抑制する政府方針への反発をにじませている。
 白書では、①社会保障の税・保険料負担の高まりで可処分所得が減少し、労働意欲の減退を招く ②公的サービスは民間に比べ非効率で、経済全体の生産性が低下する―などの指摘があることを紹介した上で、「年金は高齢者、雇用保険は失業者の生活を支え、消費活動を下支えしている」などと反論。「社会保障分野は国民負担によって支えられていることに留意する必要はあるが有効需要創出に寄与している」とした。
 特に、所得が伸び悩む中で、所得に占める年金総額の割合が96年度の6.3%から05年度の10.1%へと増え、高齢者の生活を支えていることを強調した。
 さらに、介護や医療など社会保障分野の利用が増えた場合の関連産業に対する経済的な波及効果は住宅建築業などと同程度で、雇用創出の効果も公共事業などより高い、とも説明している。

 (高橋福子)





 



 教育の意義と福祉の意義










日本の障害児(者)の教育や福祉をめぐる問題、課題を考察し、今後を展望

田研出版 3190円 A5判 316頁


第1章 日本の障害児教育の始まりと福祉
義務教育の制度と障害児/学校教育と福祉施設/精神薄弱者福祉法(現:知的障害者福祉法)の制定/教育を受ける権利の保
第2章 戦後の復興から社会福祉基礎構造改革へ
社会福祉法人制度と措置委託制度/社会の変化と社会福祉基礎構造改革/「措置」から「契約」への制度転換と問題点
/社会福祉法人制度改革の意義と課題

第3章 障害者自立支援法から障害者総合支援法へ

障害者自立支援法のねらい/障害者自立支援法をめぐる問題/自立支援法から総合支援法へ/障害者総合支援法施行3年後の見直し 
第4章 教育の意義と福祉の意義
人間的成長発達の特質と教育・福祉/人間的進化と発達の個人差/教育と福祉の関係/「福祉」の意味と人権

第5章 展望所感

 障害(者)観と用語の問題/新たな障害(者)観と国際生活機能分類の意義/障害児教育の義務制の意義と課題/障害者支援をめぐる問題


















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