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「障害」の「予防」と
「障害者」という用語問題


2009.12.25/更新2014.1.31/2016.11.8/2018.11.25/2019.5.10





 「障害の予防」というのは、人にとって障害になるものを予防するということなのですが、「障害」の「予防」ということが、障害をもつ人の存在を否定するような解釈や誤解につながっているという問題があるようです。

 人は病気や障害とは無縁で生きられない。それは高度に進化した人間ゆえの宿命かもしれません。そうだとすれば、そうした人間のよりよい生き方を追究していかなければならないと思います。そこに病気や障害に対する理解や配慮を要する必然性があり、障害や病気を予防することの理由と根拠があるはずです。




「障害」の予防とは

障害を予防することの理由と根拠

《障害者基本法》

 第三章 障害の原因となる傷病の予防に関する基本的施策

障害の予防についての考え方

「障害者」という用語問題





「障害」の予防とは 

 「障害」とは、じゃま。さまたげ、さしさわりとなるものごとを意味します。人の生活上において障害となるものにはいろいろなものが考えられますが、それは身体的な欠損や不全によるものとは限りません。
 人にとって障害となるものを大きく挙げるとすれば、病理的障害、物理的障害、制度的障害、文化的障害、情報的障害、意識的障害、対人・対社会的障害などが考えられます。こうした障害をどのように受け止め、それにどのように対処していくかということは、人が生活していく上で、とても重要なことだと思います。
 
 「予防」するとは、あらかじめ防ぐということですが、あらかじめ防ぐということは、防いだほうがよいという何らかの理由があり、防ぐことが可能だという根拠があるはずです。何の理由も根拠もなければ、予防するという意味もその必要もないはずです。
 予防するという場合、予防したほうがよいということが明らかであり、予防が可能であるからにほかなりません。

 よりよく生きたい、気分よく生活したい、苦痛やイヤなことは避けたい、充実した生活を送りたい、という思いは障害をもつ人ももたない人も同じはずです。人としての一生をいかに生きるか、あるいは生きられるかどうかは誰にとっても重大なことだと思います。それゆえに、人はよりよく生きるために都合のよい生活環境を築こうとする(している)わけですが、そこに病気や障害をどのように受け止め、どのような配慮を要するかというところの問題や課題があると思います。


障害を予防することの理由と根拠

 人間の場合、本来なら生命の維持のみならず、その誕生すら難しいような事態でさえも大抵のことは解決できるわけです。しかし人間社会の文化、科学がどのように進歩発展しようとも人はおそらく病気や障害と無縁では生きられない。それはいわば人間の宿命といってよいかもしれません。

 保健衛生の向上は人の寿命を延ばしてきましたが、病気もせずに健康な生活を送ることができたとしても高齢になるにつれ誰もが必ず衰え、心身の変調をきたします。そうだとすれば、そうした宿命を肯定した人の生き方の追究が大切だということになります。そこに病気や障害に対する理解や配慮を要する必然性があり、障害や病気を予防することの理由と根拠があるはずです。
 障害者基本法は、「障害の原因となる疾病及びその予防に関する調査及び研究を促進しなければならない」と定めています。



《障害者基本法》

第三章 障害の原因となる傷病の予防に関する基本的施策
第三十一条 国及び地方公共団体は、障害の原因となる疾病及びその予防に関する調査及び研究を促進しなければならない。
2 国及び地方公共団体は、障害の原因となる傷病の予防のため、必要な知識の普及、母子保健等の保健対策の強化、当該疾病の早期発見及び早期治療の推進その他必要な施策を講じなければならない。
3 国及び地方公共団体は、障害の原因となる難病等の予防及び治療が困難であることに鑑み、障害の原因となる難病等の調査及び研究を推進するとともに、難病等に係る障害者に対する施策をきめ細かく推進するよう努めなければならない。

内閣府:障害者基本法
(最終改正 平成二十五年六月二十六日法律第六十五号)



障害の予防についての考え方

 障害の予防については、「第一次予防」「第二次予防」「第三次予防」というように考えるとよいと思います。

第一次予防:障害が発生する前段階での予防です。
 障害の発生そのものの予防をねらいとしますが、そこには生命の発達的可能性を無視した人為的な生命操作や選別になりかねない問題が含まれます。そのため医療的なことのみならず、倫理的、法的、社会的、心理的条件を駆使し、人間の持てる英知を結集した取り組みが重要となります。


第二次予防:発生した障害の軽減や二次的障害の発生予防です。
 早期発見による的確な障害内容の把握により、よりよい方向付けを含めた早期の取り組みが重要となります。そこには単に医療のみではない療育に関わる教育や福祉の専門性を発揮することの意義があるはずです。

第三次予防:生命や生活(人生)の質を後退さないための予防です。
 障害をもつ人の生活権をいかに確保し保障するかということと誰もが暮らしやすい社会環境の基盤整備や構築を目指す専門的なあらゆる分野の連携した取り組みが重要となります。


「障害者」という用語問題











日本の障害児(者)の教育や福祉をめぐる
問題、課題を考察し、今後を展望

田研出版 3190円 A5判 316頁









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