障害(者)観の変遷と
障害(者)についての日本の法定義
2015.7.12/2015.10.25
/2016.7.21/2017.11.18/2018.2.2/2019.12.14/2020.8.5/2021.12.12/2022.6.30
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障害(者)観の変遷と国際生活機能分類(ICF)
障害(者)についての日本の法定義
心身障害者対策基本法から障害者基本法へ
「障害(者)」の定義の変化
障害(者)関連の現行法の定義
《障害者基本法》の定義
《身体障害者福祉法》の定義
《知的障害者福祉法》の定義
《(略称:精神保健福祉法)》の定義
《発達障害者支援法》の定義
《児童福祉法》の定義
《(略称:障害者総合支援法)》の定義
《《(略称:障害者虐待防止法)》の定義
《(略称:障害者差別解消法)》の定義
《(略称:障害者雇用促進法)》の定義
障害者権利条約の定義
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障害(者)観の変遷と国際生活機能分類(ICF)
「障害」といえば、これまでは個人の身体的・精神的な欠陥や不全の問題だとする医学モデルとして捉えられてきました。それは専門的な治療の対象として治癒や改善がみられなければ、それは個人の問題であり、仕方がないとする見方や考え方であったといってよいでしょう。
そうした人々の障害(者)観は大きく変化をし、現在は、障害者も同じ生活者であるということから、人としての“生活の質”や“生活のしづらさ”にも目を向けた見方や考え方がなされるようになりました。
その背景には人権意識の高まりやノーマライゼーション思想の広がりにより、また障害をもつ人自身による自立生活運動の影響もあるわけですが、そうした変化を促す大きな転機となったのは世界保健機関(WHO)が、1980(昭和55)年に障害に関する世界共通の理解と科学的なアプローチを可能にすることを目的に作成した国際障害分類試案(ICIDH)を発表したことと、その翌年1981(昭和56)年の国際障害者年です。
国際障害分類の考え方は、 国際障害者年を契機に世界的な規模で障害(者)観に大きな影響を与えることとなりました。そしてこの国際障害分類の考え方をさらに推し進めて作成されたのが、
2001(平成13)年5月に世界保健機関(WHO)の第54回総会において採択された国際生活機能分類(ICF)です。
この国際生活機能分類(ICF)の考え方は、障害をもつ人も障害をもたない人と同じ「生活者」であるという認識を促す意味では画期的であり、障害(者)をどう理解するかの指針となる最新のものといえます。
国際障害分類(ICIDH)/国際障害者年/国際生活機能分類(ICF)
障害(者)についての日本の法定義
日本における障害(者)観は、世界的な動向とも関連しつつ変化してきました。それに伴い障害者支援に関する考え方や取り組み方も変化して現在に至っています。
日本では、障害者福祉に関する施策の基本となる法律として 心身障害者対策基本法 が1970(昭和45)年に制定されました。その後、「国際障害者年(1981年)」、「国連・障害者の十年(1983~1992年)」などを契機とする国際的な変化の流れを受けて1993(平成5)年に心身障害者対策基本法は、「障害者基本法」に改正、改称されました。
障害者基本法は、2004(平成16)年にも改正され、さらに2011(平成23)年の改正では、2006(平成18)年に、国連で障害者権利条約(障害者の権利に関する条約)が採択されたことが大きく関係しています。
この条約に、日本も2007(平成19)年9月に外務大臣が署名し、批准に向けて国内法令の整備等を進め、2013(平成25)年12月4日に批准が正式に承認されました。条約に署名するということは、条約に賛同し、批准の意思があることを表明する行為です。条約の批准とは、国として条約に拘束されることを正式に認める(国会の承認が必要)ことです。
したがって条約の批准には国内法令との整合性を図る必要があるわけで、障害者の権利条約の批准に向けて日本の国内法制度の整備が進んだ意義は大きいと思います。障害者基本法の改正、障害者総合支援法の施行、障害者虐待防止法の施行、障害者差別解消法の施行、などは障害者権利条約との整合性を図るためでもあったわけです。しかしその実効性という点では、理念のみが先行している感があり、問題や課題も多いのが現状です。
障害者権利条約の締約国である日本の教育や福祉、労働及び雇用などが今後、実際的、具体的にどのように進展していくのか、動向を注視することが大切だと思います。
心身障害者対策基本法から障害者基本法へ
日本の障害者に関する総合的な施策の基盤が整うのは、1970(昭和45)年に「心身障害者対策基本法」が制定されてからのことです。
戦後の1949(昭和24)年に身体障害者福祉法が制定され、1960(昭和35)年に精神薄弱者福祉法(現在の知的障害者福祉法)が制定されるなど、障害者に関する諸施策が講じられるようになり、そうした各省庁が所管する諸施策の総合的な対応が必要となって制定されたのが心身障害者対策基本法です。
心身障害者対策基本法は、国及び地方公共団体の責務を明確にし、心身障害者の定義づけをしたこと、調整機関として国(厚生省)に中央心身障害者対策協議会、都道府県・指定都市に地方心身障害者対策協議会を設置したこと、などが法の意義として重要です。
心身障害者対策基本法は、障害者関係の諸施策の法制上の基本となる法律として位置づけられるものですが、世界的な動向とも関連し、1993(平成5)年に改正されて、法律名も「障害者基本法」に改称されました。その後も国際的な動向等を踏まえた改正があり、現在に至っています。
心身障害者対策基本法の制定当初の障害についての規定は、心身の機能や形態面に着目した障害の捉え方であり、精神薄弱(知的障害のこと)は法の対象に含まれているが、精神障害は法の対象には含ていませんでした。
心身障害者対策基本法 法律第八十四号(昭四五・五・二一)
法律第八十四号(昭四五・五・二一)
◎心身障害者対策基本法
目次
第一章 総則(第一条―第八条)
第二章 心身障害の発生の予防に関する基本的施策(第九条)
第三章 心身障害者の福祉に関する基本的施策(第十条―第二十六条)
第四章 心身障害者対策協議会(第二十七条―第三十条)
附則
第一章 総則
(目的)
第一条 この法律は、心身障害者対策に関する国、地方公共団体等の責務を明らかにするとともに、心身障者の発生の予防に関する施策及び医療、訓練、保護、教育、雇用の促進、年金の支給等の心身障害者の福祉に関する施策の基本となる事項を定め、もつて心身障害者対策の総合的推進を図ることを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において「心身障害者」とは、肢体不自由、視覚障害、聴覚障害、平衡機能障害、音声機能障害若しくは言語機能障害、心臓機能障害、呼吸器機能障害等の固定的臓器機能障害又は精神薄弱等の精神的欠陥(以下「心身障害」と総称する。)があるため、長期にわたり日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける者をいう。
(個人の尊厳)
第三条 すべて心身障害者は、個人の尊厳が重んぜられ、その尊厳にふさわしい処遇を保障される権利を有するものとする。
(国及び地方公共団体の責務)
第四条 国及び地方公共団体は、心身障害の発生を予防し、及び心身障害者の福祉を増進する責務を有する。
(国民の責務)
第五条 国民は、社会連帯の理念に基づき、心身障害者の福祉の増進に協力するよう努めなければならない。
(自立への努力)
第六条 心身障害者は、その有する能力を活用することにより、進んで社会経済活動に参与するように努めなければならない。
2 心身障害者の家庭にあつては、心身障害者の自立の促進に努めなければならない。
(施策の基本方針)
第七条 心身障害者の福祉に関する施策は、心身障害者の年齢並びに心身障害の種別及び程度に応じて、かつ、有機的連けいの下に総合的に、策定され、及び実施されなければならない。
(法制上の措置等)
第八条 政府は、この法律の目的を達成するため、必要な法制上及び財政上の措置を講じなければならない。
第二章 心身障害の発生の予防に関する基本的施策
第九条 国及び地方公共団体は、心身障害の発生の原因及びその予防に関する調査研究を促進しなければならない。
2 国及び地方公共団体は、心身障害の発生の予防のため、必要な知識の普及、母子保健対策の強化、心身障害の原因となる傷病の早期発見及び早期治療の推進その他必要な施策を講じなければならない。
第三章 心身障害者の福祉に関する基本的施策
(医療、保護等)
第十条 国及び地方公共団体は、心身障害者が生活機能を回復し、又は取得するために必要な医療の給付を行ない、及び心身障害者の障害を補うために必要な補装具その他の用具の給付を行なうよう必要な施策を講じなければならない。
2 国及び地方公共団体は、心身障害者の年齢並びに心身障害の種別及び程度に応じ、施設に収容し、又は通わせて、適切な保護、医療、生活指導その他の指導、機能回復訓練その他の訓練又は授産を行なうよう必要な施策を講じなければならない。
3 国及び地方公共団体は、前二項に規定する医療、指導、訓練及び補装具その他の用具の研究及び開発を促進しなければならない。
(重度心身障害者の保護等)
第十一条 国及び地方公共団体は、重度の心身障害があり、自立することの著しく困難な心身障害者について、終生にわたり必要な保護等を行なうよう努めなければならない。
(教育)
第十二条 国及び地方公共団体は、心身障害者がその年齢、能力並びに心身障害の種別及び程度に応じ、充分な教育が受けられるようにするため、教育の内容及び方法の改善及び充実を図る等必要な施策を講じなければならない。
2 国及び地方公共団体は、心身障害者の教育に関する調査研究を促進しなければならない。
(訪問指導等)
第十三条 国及び地方公共団体は、心身障害者の家庭を訪問する等の方法により必要な指導、訓練又は日常生活上の世話が行なわれるよう必要な施策を講じなければならない。
(職業指導等)
第十四条 国及び地方公共団体は、心身障害者がその能力に応じて適当な職業に従事することができるようにするため、職業指導、職業訓練及び職業紹介の実施その他必要な施策を講じなければならない。
2 国及び地方公共団体は、心身障害者に適した職種及び職域に関する調査研究を促進しなければならない。
(雇用の促進)
第十五条 国及び地方公共団体は、心身障害者の雇用を促進するため、心身障害者に適した職種又は職域について心身障害者の優先雇用の施策を講じ、及び心身障害者が雇用されるのに伴い必要となる施設又は設備の整備等の助成その他必要な施策を講じなければならない。
(判定及び相談)
第十六条 国及び地方公共団体は、心身障害者に関する各種の判定及び相談業務が総合的に行なわれ、かつ、その制度が広く利用されるよう必要な施策を講じなければならない。
(措置後の指導助言等)
第十七条 国及び地方公共団体は、心身障害者が心身障害者の福祉に関する施策に基づく各種の措置を受けた後日常生活又は社会生活を円滑に営むことができるよう指導助言をする等必要な施策を講じなければならない。
(施設の整備)
第十八条 国及び地方公共団体は、第十条第二項及び第三項、第十二条並びに第十四条の規定による施策を実施するために必要な施設を整備するよう必要な措置を講じなければならない。
2 前項の施設の整備に当たつては、同項の各規定による施策が有機的かつ総合的に行なわれるよう必要な配慮がなされなければならない。
(専門的技術職員等の確保)
第十九条 前条第一項の施設には、必要な員数の専門的技術職員、教職員その他の専門的知識又は技能を有する職員が配置されなければならない。
2 国及び地方公共団体は、前項に規定する者その他心身障害者の福祉に関する業務に従事する者及び第十条第一項に規定する用具に関する専門的技術者の養成及び訓練に努めなければならない。
(年金等)
第二十条 国及び地方公共団体は、心身障害者の生活の安定に資するため、年金、手当等の制度に関し必要な施策を講じなければならない。
(資金の貸付け等)
第二十一条 国及び地方公共団体は、心身障害者に対し、事業の開始、就職、これらのために必要な知識技能の修得等を援助するため、必要な資金の貸付け、手当の支給その他必要な施策を講じなければならない。
(住宅の確保等)
第二十二条 国及び地方公共団体は、心身障害者の生活の安定を図るため、心身障害者のための住宅を確保し、及び心身障害者の日常生活に適するような住宅の整備を促進するよう必要な施策を講じなければならない。
2 国及び地方公共団体は、心身障害者による交通施設その他の公共的施設の利用の便宜を図るため、施設の構造、設備の整備等について適切な配慮がなされるよう必要な施策を講じなければならない。
(経済的負担の軽減)
第二十三条 国及び地方公共団体は、心身障害者及びこれを扶養する者の経済的負担の軽減を図り、又は心身障害者の自立の促進を図るため、税制上の措置、公共的施設の利用料等の減免その他必要な施策を講じなければならない。
2 日本国有鉄道は、心身障害者及びこれを扶養する者の経済的負担の軽減を図り、又は心身障害者の自立の促進を図るため、特に必要があると認めるときは、心身障害者及びその介護者の運賃等の軽減について配慮するよう努めなければならない。
(施策に対する配慮)
第二十四条 心身障害者の福祉に関する施策の策定及び実施に当たつては、心身障害者の父母その他心身障害者の養護に当たる者がその死後における心身障害者の生活について懸念することのないよう特に配慮がなされなければならない。
(文化的諸条件の整備等)
第二十五条 国及び地方公共団体は、心身障害者の文化的意欲を満たし、若しくは心身障害者に文化的意欲を起こさせ、又は心身障害者が自主的かつ積極的にレクリエーションの活動をし、若しくはスポーツを行なうことができるようにするため、施設、設備その他の諸条件の整備、文化、スポーツ等に関する活動の助成その他必要な施策を講じなければならない。
(国民の理解)
第二十六条 国及び地方公共団体は、国民が心身障害者について正しい理解を深めるよう必要な施策を講じなければならない。
第四章 心身障害者対策協議会
(中央心身障害者対策協議会)
第二十七条 総理府に、附属機関として、中央心身障害者対策協議会(以下「中央協議会」という。)を置く。
2 中央協議会は、次の各号に掲げる事務をつかさどる。
一 心身障害者に関する基本的かつ総合的な施策の樹立について必要な事項を調査審議すること。
二 心身障害者に関する施策の推進について必要な関係行政機関相互の連絡調整を要するものに関する基本的事項を調査審議すること。
3 中央協議会は、前項に規定する事項に関し、内閣総理大臣又は関係各大臣に意見を述べることができる。
第二十八条 中央協議会は、委員二十人以内で組織する。
2 中央協議会の委員は、関係行政機関の職員及び学識経験のある者のうちから、内閣総理大臣が任命する。
3 中央協議会に、専門の事項を調査審議させるため、専門委員を置くことができる。
4 中央協議会の専門委員は、学識経験のある者のうちから、内閣総理大臣が任命する。
5 中央協議会の専門委員は、当該専門の事項に関する調査審議が終了したときは、解任されるものとする。
6 中央協議会の委員及び専門委員は、非常勤とする。
第二十九条 前二条に定めるもののほか、中央協議会に関し必要な事項は、政令で定める。
(地方心身障害者対策協議会)
第三十条 都道府県(地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二百五十二条の十九第一項の指定都市(以下「指定都市」という。)を含む。以下同じ。)に、当該都道府県における心身障害者に関する施策の推進について必要な関係行政機関相互の連絡調整を図るため、地方心身障害者対策協議会を置く。
2 都道府県に置かれる地方心身障害者対策協議会及びその委員に関し必要な事項は、条例で定める。
3 市町村(指定都市を除く。)に、当該市町村における心身障害者に関する施策の推進について必要な関係行政機関相互の連絡調整を図るため、条例の定めるところにより、地方心身障害者対策協議会を置くことができる。
附 則
(施行期日)
1 この法律は、公布の日から施行する。
(総理府設置法の一部改正)
2 総理府設置法(昭和二十四年法律第百二十七号)の一部を次のように改正する。
第十五条第一項の表中社会保障制度審議会の項の次に次のように加える。
中央心身障害者対策協議会
心身障害者対策基本法(昭和四十五年法律第八十四号)の規定によりその権限に属せしめられた事項を行なうこと。
(内閣総理・大蔵・文部・厚生・運輸・労働・建設・自治大臣署名)
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心身障害者対策基本法から障害者基本法へ
心身障害者対策基本法から障害者基本法へ
改正のポイント
1993(平成5)年の改正
・「心身障害者対策基本法」から「障害者基本法」に法律名を改称
・精神障害者を障害者として位置づける
・12月9日を「障害者の日」と定める
・「障害者基本計画」の策定を国に義務づけ、都道府県、市町村に「障害者基本計画」の策定を努力義務として規定
2004(平成16)年の改正
・障害者の自立と社会参加の支援等の推進を明記
・障害者差別の禁止を明記
・障害者の日を「障害者週間(12月3日~9日)に改正
・都道府県と市町村に「障害者基本計画」の策定を義務化
2011(平成23)年の改正
・障害者の定義に「発達障害」「その他の心身の機能の障害」「社会的障壁」を追加
・「共生社会」の実現に関する事項の追加
・「差別の禁止」を第4条に集約し、「合理的配慮」の考え方を導入
「障害(者)」の定義の変化
<1970(昭和45)年 心身障害者対策基本法の定義>
第二条 この法律において「心身障害者」とは、肢体不自由、視覚障害、聴覚障害、平衡機能障害、音声機能障害若しくは
言語機能障害、心臓機能障害、呼吸器機能障害等の固定的臓器機能障害又は精神薄弱等の精神的欠陥(以下「心身障害」
と総称する。)があるため、長期にわたり日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける者をいう。 |
<1993(平成5)年 「障害者基本法」に改正・改称の定義>
第二条 この法律において「障害者」とは、身体障害、精神薄弱又は精神障害( 以下「障害」と総称する。)があるため、
長期にわたり日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける者をいう。 |
<2004(平成16)年改正の定義>
第二条 この法律において「障害者」とは、身体障害、知的障害又は精神障害( 以下「障害」と総称する。)があるため、
継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける者をいう。 |
<2011(平成23)年改正の定義>
第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
一 障害者 身体障害、知的障害、精神障害( 発達障害を含む。) その他の心身の機能の障害( 以下「障害」と総称
する。)がある者であって、障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあ
るものをいう。
二 社会的障壁 障害がある者にとって日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、
慣行、観念その他の一切のものをいう。 |
《定義変化のポイント》
①1970(昭和45)年:心身障害者対策基本法
・心身障害=「肢体不自由、視覚障害、聴覚障害、平衡機能障害、音声機能障害若しくは言語機能障害、心臓機能障害、
呼吸器機能障害等の固定的臓器機能障害又は精神薄弱等の精神的欠陥」の総称
・心身障害者=「心身障害があるため、長期にわたり日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける者をいう」
②1993(平成5)年:心身障害者対策基本法 から障害者基本法へ
・心身障害 ⇒ 「障害」
障害= 「身体障害、精神薄弱又は精神障害」の総称
・心身障害者 ⇒ 「障害者」
障害者 =「障害があるため、長期にわたり日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける者をいう」
③2004(平成16)年:
・「精神薄弱」から「知的障害」へ
身体障害、精神薄弱又は精神障害 ⇒ 身体障害、知的障害又は精神障害
・「長期にわたり~制限を受ける者」から「継続的に~制限を受ける者」へ
長期にわたり日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける者
⇒ 継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける者
④2011(平成23)年:
・精神障害に発達障害を含む
障害=「身体障害、知的障害又は精神障害」の総称
⇒ 「身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む)その他の心身機能の障害」の総称
・「障害があるため~制限を受ける者」から「障害及び社会的障壁により~制限を受ける状態にあるものをいう」へ
障害者=「障害があるため、継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける者」
⇒「障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいう」
・社会的障壁=「障害がある者にとって日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣
行、観念、その他の一切のものをいう」
※「社会的障壁」は法律上の新たな用語
障害(者)関連の現行法は、「障害者の権利条約」「障害者基本法」を踏まえたものであるわけですが、さらなる法的整備は必要だと思います。
障害(者)関連の現行法の定義
《障害者基本法》の定義 昭和四五年五月二一日 題名改正 平成5年 最新改正 平成25年
第2条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号定めるところによる。
一 障害者 身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)その他の心身の機能の障害(以下「障害」と総称する。)がある者であって、障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいう。
二 社会的障壁 障害がある者にとって日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念その他の一切のものをいう。
内閣府:最終改正:平成二十五年六月二十六日法律第六十五号
《身体障害者福祉法》の定義 昭和二四年一二月二六日 最新改正 平成30年
第4条 この法律において、「身体障害者」とは、別表に掲げる身体上の障害がある18歳以上の者であって、都道府県知事から身体障害者手帳の交付を受けたものをいう。
注)別表とは、身体障害者施行規則でいう「身体障害者障害程度等級表」をいう。視覚障害、聴覚又は平衡機能の障害、音声機能、言語機能又はそしゃく機能の障害、肢体不自由(上肢・下肢・体幹)、心臓、じん臓若しくは呼吸器又は又はぼうこう若しくは直腸、小腸、ヒト免疫不全ウイルスによる免疫若しくは肝臓の機能の障害についての障害の程度を等級別に明示。
この表に該当しても、身体障害者手帳の交付を受けていなければ、法的には身体障害者とは認められないことになる。
《知的障害者福祉法》の定義 昭和三五年三月三一日 最新改正 平成30年
知的障害(者)についての定義規定はない。
注1)知的障害については、「身体障害者手帳」のように、手帳の所持について明文化された法律上の定めはない。 社会通念上知的障害と認められればよいということであろうが、知的障害のための「療育手帳」制度がある。療育手帳は児童相談所又は知的障害者更生相談所において知的障害であると判定された者に対して交付される。
療育手帳制度は身体障害者手帳のように法律に根拠は持たず、国通知による「療育手帳制度要綱」にて各県ごとに実施を図るよう指導がなされている。そのため手帳には別名の併記もある。
≪例≫ 緑の手帳 愛の手帳(東京都は国の制度化以前の昭和42年に愛の手帳制度を制定)
注2)手帳を所持することが社会的不利へつながる場合もあることから手帳の所持を拒否する例もある。しかし実際的に支援サービスを受けるためには手帳の所持は必要。
知的障害(精神遅滞)|℮-ヘルスネット(厚生労働省)
《精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(略称:精神保健福祉法)》の定義
昭和二五年五月一日 題名改正 昭和62年 最新改正 令和元年
第5条 この法律で「精神障害者」とは、統合失調症、精神作用物質による急性中毒又はその依存症、知的障害、精神病質その他の精神疾患を有する者をいう。
注)障害者基本法では、障害者を、「身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)その他の心身の機能の障害(以下「障害」と総称する。)がある者」
としているが、この精神保健福祉法の定義では、知的障害は精神障害ということになる。
知的障害と精神障害が重複する場合はあるが、具体的な支援においては知的障害と精神障害は分けて考えたほうがよい。
厚生労働省:精神保健及び精神障害者福祉に関する法律の一部を改正する法律の概要 平成25年6月13日成立 (PDF)
厚生労働省:施行事項の詳細について(PDF)
知的障害と精神障害について
《発達障害者支援法》の定義 平成一六年一二月一〇日 最新改正 平成28年
第2条 この法律において「発達障害」とは、自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発症するものとして政令で定めるものをいう。
2 この法律において「発達障害者」とは、発達障害がある者であって発達障害及び社会的障壁により日常生活又は社会生活に制限を受ける者をいい、「発達障害児」とは、発達障害者のうち18歳未満のものをいう。
3 この法律において「社会的障壁」とは、発達障害がある者にとって日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念その他一切のものをいう。
4 この法律において「発達支援」とは、発達障害者に対し、その心理機能の適正な発達を支援し、及び円滑な社会生活を促進するため行う発達障害の特性に対応した医療的、福祉的及び教育的援助をいう。
文部科学省:発達障害者支援法の施行について 平成17年4月1日(PDF)
発達障害について:文部科学省(2020.8.5)
注) 平成28年5月25日:改正発達障害者支援法が成立。
議員立法で平成17年に施行された発達障害者支援法の改正法が平成28年5月25日の参院本会議で可決、成立。
内閣府:発達障害者支援法の改正経緯(PDF)
厚生労働省:発達障害者支援施策
発達障害の内容と範囲について
《児童福祉法》の定義 昭和二二年一二月一二日 最新改正 令和2年
第4条
② この法律で、障害児とは、身体に障害のある児童、知的障害のある児童、精神に障害のある児童(発達障害者支援法に規定する発達障害児を含む。)又は治療方法が確立していない疾病その他の特殊の疾病であって障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(障害者総合支援法)第4条第1項の政令で定めるものによる障害の程度が同項の厚生労働大臣が定める程度である児童をいう。
注)平成28年5月27日 : 急増する児童虐待への対応を強める改正児童福祉法が参院本会議で、全会 一致で可決、成立。
厚生労働省:児童福祉法等の一部を改正する法律案の概要(PDF)
《障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律
(略称:障害者総合支援法)》の定義 平成一七年一一月七日 最新改正 平成30年
第4条 この法律において「障害者」とは、身体障害者福祉法に規定する身体障害者、知的障害者福祉法にいう知的障害者のうち18歳以上である者及び精神保健及び精神障害者福祉に関する法律に規定する精神障害者(発達障害者支援法に規定する発達障害者を含み、知的障害者福祉法にいう知的障害者を除く。以下「精神障害者」という。)のうち18歳以上である者並びに治療方法が確立していない疾病その他の特殊の疾病であって政令で定めるものによる障害の程度が厚生労働大臣が定める程度である者であって18歳以上であるものをいう。
2 この法律において「障害児」とは、児童福祉法第4条第2項に規定する障害児をいう。
3 この法律において「保護者」とは、児童福祉法第6条に規定する保護者をいう。
4 この法律において「障害支援区分」とは、障害者等の障害の多様な特性その他の心身の状態に応じて必要とされる標準的な支援の度合を総合的に示すものとして厚生労働省令で定める区分をいう。
注) 障害者総合支援法の前身である障害者自立支援法の施行により、障害種別(身体障害・知的障害・精神障害)にかかわらず、必要なサービスを利用しやすくするために、身近な市町村が責任をもって一元的にサービスを提供する仕組みにするとして従来の障害福祉サービスの内容が再編された。
そしてサービスの必要性を明確化するということで、障害の程度を6段階に区分して認定するための「障害程度区分」の審査・判定を行う「審査会」が各市町村に設置された。しかし障害の内容は同質・一様ではないわけで、区分判定に関することが問題となり、障害者総合支援法では、「障害程度区分」は「障害支援区分」に改められて現在に至っている。
厚生労働省:障害者自立支援法の一部を改正する法律の概要(PDF)
厚生労働省:障害者総合支援法の施行
厚生労働省:障害福祉サービスの利用について
平成28年5月26日:障害者総合支援法改正法案が成立。
法の施行は一部を除き平成30年4月1日 法律案の概要(PDF)
《障害者虐待の防止、障害者の養護者に対する支援等に関する法律
(略称:障害者虐待防止法)》の定義 平成二三年六月二四日 最新改正 平成28年
第2条 この法律において「障害者」とは、障害者基本法第2条に規定する障害者をいう。
2 この法律において「障害者虐待」とは、養護者による障害者虐待、障害者福祉施設従事者等による障害者虐待及び使用者による障害者虐待をいう。
3 この法律において「養護者」とは、障害者を現に養護する者であって障害者福祉施設従事者等及び使用者以外のものをいう。
4~8 (略)
厚生労働省:障害者虐待防止法が施行されました
厚生労働省:障害者虐待の防止、障害者の養護者に対する支援等に関する法律の概要 (PDF)
《障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律
(略称:障害者差別解消法)》の定義 平成二五年六月二六日 最新改正 令和3年
第2条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
1 障害者 身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)その他の心身の機能の障害(以下「障害」と総称する。)がある者であって、 障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいう。
2 社会的障壁 障害がある者にとって日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念その他一切のものをいう。
平成28年4月1日施行:法律の概要 (PDF)
内閣府:障害を理由とする差別の解消の推進
障害者権利条約の批准と「障害者差別解消法」の施行について
《障害者の雇用の促進等に関する法律(略称:障害者雇用促進法)》の定義
昭和三五年七月二五日 題名改正 昭和62年 最新改正 令和元年
第2条
一 障害者 身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。第六号において同じ。)その他の心身の機能の障害(以下「障害」と総称する。)があるため、長期にわたり、職業生活に相当の制限を受け、又は職業生活を営むことが著しく困難な者をいう。
ニ 身体障害者 障害者のうち、身体障害がある者であって別表に掲げる障害があるものをいう。
三 重度身体障害者 身体障害者のうち、身体障害の程度が重い者であって厚生労働省令で定めるものをいう。
四 知的障害 障害者のうち、知的障害がある者であって厚生労働省令で定めるものをいう。
五 重度知的障害者 知的障害者のうち、知的障害の程度が重い者であって厚生労働省令で定めるものをいう。
六 精神障害者 障害者のうち、精神障害がある者であって厚生労働省令で定めるものをいう。
七 (略)
厚生労働省:障害者雇用促進法における障害者の範囲、雇用義務の対象
厚生労働省:障害者雇用率制度
障害者の雇用の促進等に関する法律の一部を改正する法律の概要(PDF)
《障害者の権利に関する条約(障害者権利条約)》の定義 日本政府公定訳 (2014年1月20日公布)
第1条 目的
この条約は、全ての障害者によるあらゆる人権及び基本的自由の完全かつ平等な享有を促進し、保護し、及び確保すること並びに障害者の固有の尊厳の尊重を促進することを目的とする。
障害者には、長期的な身体的、精神的、知的又は感覚的な機能障害であって、様々な障壁との相互作用により他の者との平等を基礎として社会に完全かつ効果的に参加することを妨げ得るものを有する者を含む。
第2条 定義
この条約の適用上、
「意思疎通」とは、 言語、文字の表示、点字、触覚を使った意思疎通、拡大文字、利用しやすいマルチメディア並びに筆記、音声、平易な言葉、朗読その他の補助的及び代替的な意思疎通の形態、手段及び様式(利用しやすい情報通信機器を含む。)をいう。
「言語」とは、音声言語及び手話その他の形態の非音声言語をいう。
「障害に基づく差別」とは、障害に基づくあらゆる区別、排除又は制限であって、政治的、経済的、社会的、文化的、市民的その他のあらゆる分野において、他の者との平等を基礎として全ての人権及び基本的自由を認識し、享有し、又は行使することを害し、又は妨げる目的又は効果を有するものをいう。 障害に基づく差別には、あらゆる形態の差別(合理的配慮の否定を含む。)を含む。
「合理的配慮」とは、障害者が他の者との平等を基礎として全ての人権及び基本的自由を享有し、又は行使することを確保するための必要かつ適当な変更及び調整であって、特定の場合において必要とされるものであり、かつ、均衡を失した又は過度の負担を課さないものをいう。
「ユニバーサルデザイン」とは、調整又は特別な設計を必要とすることなく、最大限可能な範囲で全ての人が使用することのできる製品、環境、計画及びサービスの設計をいう。ユニバーサルデザインは、特定の障害者の集団のための補装具が必要な場合には、これを排除するものではない。
障害者の権利に関する条約:外務省
障害者の権利に関する条約と「合理的配慮」について
厚生労働省 : 障害者の範囲 (PDF)
厚生労働省 : 障害者の範囲定義(参考資料) 定義に関する規定の状況 (PDF)
発達障害の内容と範囲について
厚生労働省:「国際生活機能分類-国際障害分類改訂版-」(日本語版)


日本の障害児(者)の教育や福祉をめぐる問題、課題を考察し、今後を展望
田研出版 3190円 A5判 316頁
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