障害(者)についての日本の法定義
   
2015.7.12/2015.10.25/2016.7.21/2017.11.18/2018.2.2


 単に個人の身体的・精神的な諸機能や諸能力の欠陥の問題だとする障害(者)観にも変化が生じ、今では生活環境条件(社会環境)との相互関係(作用)も含めた見方や捉え方がなされるようになりました。

 そうした見方や捉え方が障害者支援では大切です。しかし実際的には障害が重複している場合など、障害の内容や範囲を定めるのはなかなか難しいことになりますが、具体的な支援施策を講ずる上で、障害(者)についての法的な定義は必要だと思います。

 それにしても障害(者)の定義はわかりにくい。 特に、 知的障害、精神障害、発達障害、に関しては、知的障害者福祉法と精神保健福祉法、発達障害者支援法との整合性という点ではわかりにくいと思います。



 日本における障害(者)観も、時代の変化とともに世界的な動向とも関連しつつ変化してきました。それに伴い障害者支援に関する考え方や取り組み方も変化してきたわけですが、実際的な障害者支援では、その前提として、支援の対象となる障害の内容や範囲を具体的にどのように捉え理解するかということがあります。

 一口に「障害」といってもそれは多様な要因や条件が関係しているということも考えなければなりません。そこに支援に関する専門性が求められることになります。そのための取り組みの根拠として法制度は重要です。

 日本の場合、障害者に関する総合的な施策の基盤がほぼ整うのは、1970(昭和45)年に、各省庁が所管するそれぞれの障害者関連の諸施策の基本となる法律として「心身障害者対策基本法」が制定されてからです。
 心身障害者対策基本法は、障害者関係の法制上の最も基本となる法律として位置づけられるものであり、1993(平成5)年の改正で、法律名は「障害者基本法」に改称されました。その後も国際的な動向等を踏まえた改正があり、現在に至っています。

心身障害者対策基本法から障害者基本法へ
「障害(者)」の定義の変化

 1970(昭和45)年
心身障害者対策基本法
の定義
 第二条 この法律において「心身障害者」とは、肢体不自由、視覚障害、聴覚障害、平衡機能障害、音声機能障害若しくは言語機能障害、心臓機能障害、呼吸器機能障害等の固定的臓器機能障害又は精神薄弱等の精神的欠陥(以下「心身障害」と総称する。)があるため、長期にわたり日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける者をいう。
 1993(平成5)年
「障害者基本法」に改正・改称
の定義
 第二条 この法律において「障害者」とは、身体障害、精神薄弱又は精神障害(以下「障害」と総称する。)があるため、長期にわたり日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける者をいう。
 2004(平成16)年
改正
 第二条 この法律において「障害者」とは、身体障害、知的障害又は精神障害(以下「障害」と総称する。)があるため、継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける者をいう。
 2011(平成23)年
改正
 第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号定めるところによる。
 障害者  身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)その他の心身の機能の障害(以下「障害」と総称する。)がある者であって、障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいう。
 社会的障壁   障害がある者にとって日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念その他の一切のものをいう。

 心身障害者対策基本法の制定当初の「障害」の定義は、主に身体的機能の面に着目した障害の捉え方でした。また精神薄弱又は精神的欠陥とありますが、平成5年の改正では、「身体障害、精神薄弱又は精神障害」と変化しています。
 平成16年の改正では、精神薄弱は「知的障害」に変化し、「日常生活又は社会生活で受ける制限」についての表現も当初は、「長期にわたり相当な制限を受ける者」でしたが、「継続的に相当な制限を受ける者」という表現に変化しています。 
 平成23年の改正で、「知的障害又は精神障害」という表現を改め、「身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)」となりました。そして「社会的障壁」という文言が加えられ、「継続的に相当な制限を受ける者」という表現は、「障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいう」という表現に改められました。


《障害者基本法の定義》
第2条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号定めるところによる。
 障害者   身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)その他の心身の機能の障害(以下「障害」と総称する。)がある者であって、障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいう。
 社会的障壁   障害がある者にとって日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念その他の一切のものをいう。

内閣府:最終改正:平成二十五年六月二十六日法律第六十五号


《身体障害者福祉法の定義》 最新改正 平成28年
第4条 この法律において、「身体障害者」とは、別表に掲げる身体上の障害がある18歳以上の者であって、都道府県知事から身体障害者手帳の交付を受けたものをいう。

注)別表とは、身体障害者施行規則でいう「身体障害者障害程度等級表」をいう。 視覚障害、聴覚又は平衡機能の障害、音声機能、言語機能又はそしゃく機能の障害、肢体不自由(上肢・下肢・体幹)、心臓、じん臓若しくは呼吸器又は又はぼうこう若しくは直腸、小腸、ヒト免疫不全ウイルスによる免疫若しくは肝臓の機能の障害についての障害の程度を等級別に明示。
 この表に該当しても、身体障害者手帳の交付を受けていなければ、法的には身体障害者とは認められないことになる。


《知的障害者福祉法の定義》 最新改正 平成28年
 知的障害者の定義規定はない。したがって「身体障害者手帳」のような、手帳の所持についての明文化された法律上の定めはない。社会通念上知的障害と認められればよいということであろうが、知的障害のための「療育手帳」制度があり、児童相談所又は知的障害者更生相談所において知的障害であると判定された者に対して交付される。

注)手帳を所持することが社会的不利へつながる場合もあることから手帳の所持を拒否する例もある。しかし実際的に支援サービスを受けるためには手帳の所持は必要。
 療育手帳制度は身体障害者手帳のように法律に根拠は持たず、国通知による「療育手帳制度要綱」にて各県ごとに実施を図るよう指導がなされている。そのため手帳には別名の併記もある。 
 ≪例≫ 緑の手帳  愛の手帳(東京都は国の制度化以前の昭和42年に愛の手帳制度を制定)


《精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(略称:精神保健福祉法)の定義》 最新改正 平成28年
第5条 この法律で「精神障害者」とは、統合失調症、精神作用物質による急性中毒又はその依存症、知的障害、精神病質その他の精神疾患を有する者をいう。

注)障害者基本法では、障害者を、「身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)その他の心身の機能の障害(以下「障害」と総称する。)がある者」 としているが、この精神保健福祉法の定義では、知的障害は精神障害ということになる。
 知的障害と精神障害が重複する場合はあるが、具体的な支援においては知的障害と精神障害は分けて考えたほうがよい。

厚生労働省:精神保健及び精神障害者福祉に関する法律の一部を改正する法律の概要 平成25年6月13日成立 (PDF)
厚生労働省:施行事項の詳細について(PDF)

 知的障害と精神障害について


《発達障害者支援法の定義》   最新改正 平成28年
第2条 この法律において「発達障害」とは、自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発症するものとして政令で定めるものをいう。
 この法律において「発達障害者」とは、発達障害がある者であって発達障害及び社会的障壁により日常生活又は社会生活に制限を受ける者をいい、「発達障害児」とは、発達障害者のうち18歳未満のものをいう。
 この法律において「社会的障壁」とは、発達障害がある者にとって日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念その他一切のものをいう。
 この法律において「発達支援」とは、発達障害者に対し、その心理機能の適正な発達を支援し、及び円滑な社会生活を促進するため行う発達障害の特性に対応した医療的、福祉的及び教育的援助をいう。

文部科学省:発達障害者支援法の施行について 平成17年4月1日  (PDF)

注) 平成28年5月25日:改正発達障害者支援法が成立。 
 議員立法で平成17年に施行された発達障害者支援法の改正法が平成28年5月25日の参院本会議で可決、成立。
衆議院:発達障害者支援法の一部を改正する法律案の概要(PDF)
厚生労働省:発達障害者支援法の改正について(PDF)


 発達障害の内容と範囲について


《児童福祉法の定義》 最新改正 平成28年
第4条
② この法律で、 障害児とは、 身体に障害のある児童、知的障害のある児童、精神に障害のある児童(発達障害者支援法に規定する発達障害児を含む。)又は治療方法が確立していない疾病その他の特殊の疾病であって障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(障害者総合支援法)第4条第1項の政令で定めるものによる障害の程度が同項の厚生労働大臣が定める程度である児童をいう。

注)平成28年5月27日 : 急増する児童虐待への対応を強める改正児童福祉法が参院本会議で、全会 一致で可決、成立。
厚生労働省:児童福祉法等の一部を改正する法律案の概要(PDF)


《障害者総合支援法(障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律)の定義》 最新改正 平成28年
 第4条 この法律において「障害者」とは、身体障害者福祉法に規定する身体障害者、知的障害者福祉法にいう知的障害者のうち18歳以上である者及び精神保健及び精神障害者福祉に関する法律に規定する精神障害者(発達障害者支援法に規定する発達障害者を含み、知的障害者福祉法にいう知的障害者を除く。以下「精神障害者」という。)のうち18歳以上である者並びに治療方法が確立していない疾病その他の特殊の疾病であって政令で定めるものによる障害の程度が厚生労働大臣が定める程度である者であって18歳以上であるものをいう。
 この法律において「障害児」とは、児童福祉法第4条第2項に規定する障害児をいう。
 この法律において「保護者」とは、児童福祉法第6条に規定する保護者をいう。
 この法律において「障害支援区分」とは、障害者等の障害の多様な特性その他の心身の状態に応じて必要とされる標準的な支援の度合を総合的に示すものとして厚生労働省令で定める区分をいう。 

注) 障害者総合支援法の前身である障害者自立支援法の施行により、障害種別(身体障害・知的障害・精神障害)にかかわらず、必要なサービスを利用しやすくするために、身近な市町村が責任をもって一元的にサービスを提供する仕組みにするとして従来の障害福祉サービスの内容が再編された。
 そしてサービスの必要性を明確化するということで、障害の程度を6段階に区分して認定するための「障害程度区分」の審査・判定を行う「審査会」が各市町村に設置された。しかし障害の内容は同質・一様ではないわけで、区分判定に関することが問題となり、障害者総合支援法では、「障害程度区分」は「障害支援区分」に改められて現在に至っている。

厚生労働省:障害者自立支援法の一部を改正する法律の概要(PDF)
厚生労働省:障害者総合支援法の施行
厚生労働省:障害福祉サービスの利用について

平成28年5月26日:障害者総合支援法改正法案が成立。
   法の施行は一部を除き平成30年4月1日 法律案の概要(PDF)



《障害者差別解消法(障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律)の定義》
第2条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
 障害者  身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)その他の心身の機能の障害(以下「障害」と総称する。)がある者であって、 障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいう。
 社会的障壁  障害がある者にとって日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念その他一切のものをいう。

平成28年4月1日施行:法律の概要(PDF)
内閣府:障害を理由とする差別の解消の推進


《障害者の雇用の促進等に関する法律 (略称:障害者雇用促進法)》 最新改正 平成27年

第2条 
一 障害者 身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)第六号において同じ。)その他の心身の機能の障害(以下「障害」と総称する。)があるため、長期にわたり、職業生活に相当の制限を受け、又は職業生活を営むことが著しく困難な者をいう。
ニ 身体障害者 障害者のうち、身体障害がある者であって別表に掲げる障害があるものをいう。
三 重度身体障害者 身体障害者のうち、身体障害の程度が重い者であって厚生労働省令で定めるものをいう。
四 知的障害 障害者のうち、知的障害がある者であって厚生労働省令で定めるものをいう。
五 重度知的障害者 知的障害者のうち、知的障害の程度が重い者であって厚生労働省令で定めるものをいう。
六 精神障害者 障害者のうち、精神障害がある者であって厚生労働省令で定めるものをいう。 

厚生労働省:障害者雇用促進法における障害者の範囲、雇用義務の対象
厚生労働省:障害者雇用率制度
障害者の雇用の促進等に関する法律の一部を改正する法律の概要(PDF)  


《障害者の権利条約(障害者の権利に関する条約)》 日本政府公定訳 (2014年1月20日公布)
 
第1条 目的

 この条約は、全ての障害者によるあらゆる人権及び基本的自由の完全かつ平等な享有を促進し、保護し、及び確保すること並びに障害者の固有の尊厳の尊重を促進することを目的とする。
 障害者には、長期的な身体的、精神的、知的又は感覚的な機能障害であって、様々な障壁との相互作用により他の者との平等を基礎として社会に完全かつ効果的に参加することを妨げ得るものを有する者を含む。

第2条 定義
この条約の適用上、
 「意思疎通」とは、 言語、文字の表示、点字、触覚を使った意思疎通、拡大文字、利用しやすいマルチメディア並びに筆記、音声、平易な言葉、朗読その他の補助的及び代替的な意思疎通の形態、手段及び様式(利用しやすい情報通信機器を含む。)をいう。
 「言語」とは、音声言語及び手話その他の形態の非音声言語をいう。
 「障害に基づく差別」とは、障害に基づくあらゆる区別、排除又は制限であって、政治的、経済的、社会的、文化的、市民的その他のあらゆる分野において、他の者との平等を基礎として全ての人権及び基本的自由を認識し、享有し、又は行使することを害し、又は妨げる目的又は効果を有するものをいう。障害に基づく差別には、あらゆる形態の差別(合理的配慮の否定を含む。)を含む。
 「合理的配慮」とは、障害者が他の者との平等を基礎として全ての人権及び基本的自由を享有し、又は行使することを確保するための必要かつ適当な変更及び調整であって、特定の場合において必要とされるものであり、かつ、均衡を失した又は過度の負担を課さないものをいう。
 「ユニバーサルデザイン」とは、調整又は特別な設計を必要とすることなく、最大限可能な範囲で全ての人が使用することのできる製品、環境、計画及びサービスの設計をいう。ユニバーサルデザインは、特定の障害者の集団のための補装具が必要な場合には、これを排除するものではない。

 障害者の権利に関する条約:外務省  和文(PDF)



 
   厚生労働省 : 障害者の範囲 (PDF)
   厚生労働省 : 障害者の範囲定義(参考資料) 定義に関する規定の状況 (PDF)

   発達障害の内容と範囲について

   厚生労働省:「国際生活機能分類-国際障害分類改訂版-」(日本語版)



    





日本の障害児(者)の教育や福祉をめぐる問題、課題を考察し、今後を展望
田研出版  税込価格 3,132円  A5判 316頁





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