一億総活躍社会と働き方改革とは
 
 
2019.11.30/2019.12/2020.3.30/2021.3.14
    




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 2016(平成28)年6月閣議決定の「ニッポン一億総活躍プラン」で、政府は、女性も男性も、お年寄りも若者も、一度失敗を経験した方も、障害や難病のある方も、家庭で、職場で、地域で、あらゆる場で、誰もが包摂され活躍できる「一億総活躍社会」を目指すとしています。
 「平成30年版 厚生労働白書」のサブタイトルには、「障害や病気などと向き合い、全ての人が活躍できる社会に」とあります。

 一億総活躍社会… 全ての人が活躍できる社会… それは実際的、具体的にはどのような社会でしょうか。

 2018(平成30)年6月に、働く人の事情に応じた多様で柔軟な働き方が選択できる社会を実現するための法律「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律(働き方改革関連法)」が成立し、2019年4月から関連法が順次施行されることになり、働き方改革がスタートしました。

 「働き方改革」は、教育や福祉に関わる人材の確保育成ということにも関係するだけでなく、障害者総合支援法による就労支援事業や日中活動等の支援のあり方にも関係してくることだと思います。



 厚生労働省:「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」について
 
(各種リーフット  Q&A  通達  法律・政令・省令・告示・公示の条文等  様式  相談案内)

 一億総活躍社会の実現:首相官邸ホームページ





働き方改革とダイバシ-ティの推進
障害者の働く権利の保障と就労支援
教育・福祉の人材の育成確保の重要性

《コロナ禍》







働き方改革とダイバシ-ティの推進

 働く人の事情に応じた多様で柔軟な働き方を選択できる社会を実現するために、①働き方改革を総合的に推進、②長時間労働の是正、③雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保、等のための措置を講ずるという「働き方改革関連法
(働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律)」が2018(平成30)年6月29日に成立。翌月の7月6日に公布、2019(平成31)年4月から順次施行となりました。

 具体的な施策の進展は今後の動向を注視しなければなりませんが、厚生労働省の取り組みの一つに「ダイバーシティの推進」があります。ダイバーシティ diversity とは「多様性」を意味し、障害者・病人・若者も年寄りも・女性も男性も関係なく誰もが、多様な働き方の選択が可能な社会を目指す取り組みを推進するということです。(厚生労働省ホームページ:「働き方改革」の実現に向けて参照)
 「働き方改革」は、教育や福祉に関わる人材の確保育成ということにも関係するだけでなく、障害者総合支援法による就労支援事業や日中活動等の支援のあり方にも関係してくることだと思います。

 「平成30年版 厚生労働白書」のサブタイトルには、「障害や病気などと向き合い、全ての人が活躍できる社会に」とあります。人の生活において障害や病気とどのように向き合うかということはとても大事なことです。
 しかし、「障害や病気などと向き合い」「一億総活躍社会」「全ての人が活躍できる社会に」と並べて、その実現を目指すということを具体的、実際的に考えたとき、いろいろな問題や課題があることは確かだと思います。そうした問題・課題にしっかりと向き合うという意味のサブタイトルならば、それは人権や社会福祉、社会保障に関する現状の問題に向き合うということであり、今後に向けてあいまいにしてはならない重要なことだと思います。

 厚生労働省:「働き方改革」の実現に向けて



障害者の働く権利の保障と就労支援

 働く権利は誰にもあり、その働き方もいろいろあると思います。当然、障害の内容やその程度や状態によってもいろいろな働く場や働き方があってよいはずです。そこに障害者の働く権利を保障するための就労支援の果たすべき専門性があると思います。
 
障害者自立支援法(現:障害者総合支援法)の狙いの一つに、「障害者がもっと働ける社会に」ということがあるわけですが、果たして現状はその狙いどおりになっているでしょうか。

 障害者も同じ生活者であり、同じ権利を有する人間であるとしてその権利擁護とともに、現在は、その生活の質という面にも目を向けた支援が重視されようになったわけですが、そこで重要なことは、“生活の質”というものをどのようにとらえるかということです。
 人が働くということは、生活の質(QOL)の問題に大きく関係します。しかし働く場があり、収入を得ることができれば、それで満足や納得のいく働く質や生活の質の確保ができるかとなると、必ずしもそうではないと思います。

 なぜなら働く質とか生活の質の良しあしの問題は、実際に働く人や生活する人自身の主観の問題だからです。つまり同じ条件の下でもそれに満足できる人もいればできない人もいます。それは人が日々の暮しのなかで自らの暮らしをどのように受け止め、どのように感じるかといういわば主観的評価や価値観の問題だからです。

 障害者福祉に関する施策の現状において、「福祉から雇用へ」というような流れがありますが、その方向性はよいとしても、「障害」の内容やその程度や状態の多様性をみたとき、必ずしも一般的な企業就労にのみこだわらない就労の考え方や就労支援のあり方がもっと明確なものとして社会的に位置づけられてよいはずです。そこにいわゆる「福祉的就労(福祉施設等で作業などに従事すること)」の意味があり、そのための施設の存在意義があるはずです。

 福祉的就労と労働法との関係が問題になっていますが、それは障害者福祉及び社会保障のあり方の問題として考えるべきではないかと思います。なぜなら最低賃金法が適用されたとしても、工賃が倍増されたとしても、その生活は厳しいと思います。また生活のための十分な収入を得ることができるということであっても、自らの生活をどのように考え、どのような生活を送るかというところに困難を抱える障害の場合、それは労働法を単に適用すれば解決することではないからです。

 文部科学省の特別支援教育に関する資料によれば、特別支援学校の在籍者の数が増加の傾向にあります。またこれまでの推移を見る限り、義務教育段階の特別支援学校の中学部修了者のほとんどが高等部へ進学し、その後の高等部卒業者の60%以上が福祉施設を利用し、就職者は卒業生の30%前後という状況に大きな変化のないまま現在に至っています。
 したがってこうした状況を直視した施策が求められていることは確かであり、就労支援や日中活動などの場としての施設の整備充実を図っていくことは重要だと考えます。



教育・福祉の人材の育成確保の重要性

 人として生まれたならば、人として育ち、人として生きる権利は障害の有無には関係なく同等です。したがって障害をもつ人の生涯(ライフステージ)に沿った支援制度も当然整備されなければなりません。

 教育の分野では、特別支援学校や特別支援学級に在籍する児童生徒の数が増加の傾向にあります。福祉の分野では、福祉ニーズの多様化と増大があります。教育や福祉の取り組みは文化国家のバロメーターでもあるわけで、それは国民すべての生活のありように関係することです。
 したがってそこにかかわる人材の育成確保は現代日本の最重要課題と言っても過言ではありません。特に今、福祉に関わる人材の確保は、喫緊の課題です。

 日中活動や就労支援等に関わる人材の確保が重要なわけですが、それには福祉系の専門教育を受けた人材だけでなく、いろいろな分野の専門的知識や技術等を身につけた人材がもっと関心をもつようになり、携われるような施策が講じられなければならないと思います。

 「働き方改革」は、教育や福祉に関わる人材の確保育成ということにも関係するだけでなく、障害者総合支援法による就労支援事業や日中活動等の支援のあり方にも関係してくることだと思います。





《コロナ禍》
 2020(令和2)年5月、政府の専門家会議は「新しい生活様式」を公表し、「テレワークやローテーション勤務」などを推奨した。

コロナで失職 1万人超 
 5月7000人増 急速に悪化
 朝日新聞 2020(令和2)年5月23日
 新型コロナウイルスの影響で解雇や雇い止めをされたり、その見通しがあったりする働き手が1万人を超えたことを厚生労働省が22日、明らかにした。5月に入ってから7千人増え、約3倍になっており、雇用情勢が急速に悪化している可能性がある。


コロナ禍 障害者の働く場 揺らぐ 朝日新聞 2020(令和2)年7月15日
 コロナ禍で、働く障害者が働き方で戸惑ったり、収入面で困難に直面したりしています。どんなことが起きているのでしょうか。

(有近隆史、畑山敦子、森本美紀)





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