29文科初第236号
平成29年4月28日
各都道府県教育委員会教育長
各指定都市教育委員会教育長
各 都 道 府 県 知 事 殿
附属学校を置く各国立大学法人学長
構造改革特別区域法第12条第1項の
認定を受けた各地方公共団体の長
文部科学事務次官
戸 谷 一 夫
(印影印刷)
学校教育法施行規則の一部を改正する省令の制定並びに
特別支援学校幼稚部教育要領の全部を改正する告示及び
特別支援学校小学部・中学部学習指導要領の全部を改正
する告示の公示について(通知)
このたび,平成29年文部科学省令第27号をもって,別添1のとおり学校教育法施行 規則の一部を改正する省令(以下「改正省令」という。)が制定され,また,平成29年文部科学省告示第72号及び第73号をもって,それぞれ別添2のとおり,特別支援学校幼稚部教育要領の全部を改正する告示(以下「新幼稚部教育要領」という。)及び特別支援学校小学部・中学部学習指導要領の全部を改正する告示(以下「新小学部・中学部学習
指導要領」という。)が公示されました。
新幼稚部教育要領は平成30年4月1日から,改正省令及び新小学部・中学部学習指導要領は小学部については平成32年4月1日から,中学部については平成33年4月1日から施行されます。
今回の改正は,平成28年12月21日の中央教育審議会答申「幼稚園,小学校,中学 校,高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策等について」(以下「答申」という。)を踏まえ,特別支援学校の幼稚部並びに特別支援学校の小学部及び中学部の教育課程の基準の改善を図ったものです。本改正の概要及び留意事項は下記のと
おりですので,十分に御了知いただき,改正省令,新幼稚部教育要領,新小学部・中学部 学習指導要領(以下「新学習指導要領等」という。)に基づく適切な教育課程の編成・実施及びこれらに伴い必要となる教育条件の整備を行うようお願いします。
また,都道府県教育委員会におかれては,所管の学校及び域内の市町村教育委員会その他の教育機関に対して,指定都市教育委員会におかれては,所管の学校その他の教育機関に対して,都道府県知事及び構造改革特別区域法(平成14年法律第189号)第12条 第1項の認定を受けた地方公共団体の長におかれては,所轄の学校及び学校法人等に対して,附属学校を置く国立大学法人学長におかれては,その管下の学校に対して,本改正の 内容について周知を図るとともに,必要な指導等をお願いします。
なお,本通知については,関係資料と併せて文部科学省のホームページに掲載すること としておりますので,御参照ください。
記
1.改正の概要
(1)幼稚部,小学部及び中学部の教育課程の基準の改善の基本的な考え方
・ 教育基本法,学校教育法などを踏まえ,我が国のこれまでの教育実践の蓄積を活かし,豊かな創造性を備え持続可能な社会の創り手となることが期待される子供た
ちが急速に変化し予測不可能な未来社会において自立的に生き,社会の形成に参画するための資質・能力を一層確実に育成することとしたこと。その際,子供たちに求められる資質・能力とは何かを社会と共有し,連携する「社会に開かれた教育課程」を重視したこと。
・ 知識及び技能の習得と思考力,判断力,表現力等の育成のバランスを重視する現行学習指導要領の枠組みや教育内容を維持した上で,知識の理解の質をさらに高め, 確かな学力を育成することとしたこと。
・ 先行する特別教科化など道徳教育の充実や体験活動の重視,体育・健康に関する指導の充実により,豊かな心や健やかな体を育成することとしたこと。また,自立活動の指導の充実により,障害による学習上又は生活上の困難を改善・克服し自立して社会に参加する資質を養うこととしたこと。
・ 障害のある子供たちの学びの場の柔軟な選択を踏まえ,幼稚園,小・中・高等学 校の教育課程との連続性を重視したこと。
・ 障害の重度・重複化,多様化への対応と卒業後の自立と社会参加に向けた充実を図ったこと。
・ 新たに「前文」を設け,新学習指導要領等を定めるに当たっての考え方を,明確に示したこと。
(2)知識の理解の質を高め資質・能力を育む「主体的・対話的で深い学び」の実現
○「何ができるようになるか」を明確化
・ 子供たちに育む「生きる力」を資質・能力として具体化し,「何のために学ぶのか」という学習の意義を共有しながら,授業の創意工夫や教科書等の教材の改善を
引き出していけるよう,各教科等の目標及び内容を,①知識及び技能,②思考力, 判断力,表現力等,③学びに向かう力,人間性等の三つの柱で再整理したこと。
○主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善
・ 我が国のこれまでの教育実践の蓄積に基づく授業改善の活性化により,児童生徒 の知識の理解の質の向上を図り,これからの時代に求められる資質・能力を育んで
いくことが重要であること。そのため,小学部及び中学部においては,これまでの教育実践の蓄積をしっかりと引き継ぎ,子供たちの実態や教科等の学習内容等に応じた指導の工夫改善を図ること。
・ 上記の資質・能力の三つの柱が,偏りなく実現されるよう,単元や題材など内容や時間のまとまりを見通しながら,子供たちの主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善を行うこととしたこと。
(3)各学校におけるカリキュラム・マネジメントの確立
・ 教科等の目標や内容を見渡し,特に学習の基盤となる資質・能力(言語能力,情報活用能力,問題発見・解決能力等)や豊かな人生の実現や災害等を乗り越えて次 代の社会を形成することに向けた現代的な諸課題に対応して求められる資質・能力の育成のためには,教科等横断的な学習を充実する必要があること。
また,主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善については,1単位時間の授業の中で全てが実現できるものではなく,単元など内容や時間のまとまりの中で,習得・活用・探究のバランスを工夫することが重要であるとしたこと。その
際,障害の状態や特性及び心身の発達の段階等並びに学習の進度等を考慮して,個別の指導計画に基づき,基礎的・基本的な事項に重点を置くなど,指導方法や指導体制の工夫改善に努めることとしたこと。
・ そのため,学校全体として,子供たちや学校,地域の実態を適切に把握し,教育内容や時間の適切な配分,必要な人的・物的体制の確保,実施状況に基づく改善などを通して,教育課程に基づく教育活動の質を向上させ,学習の効果の最大化を図
るカリキュラム・マネジメントに努めるものとしたこと。特に,個別の指導計画の実施状況の評価と改善を,教育課程の評価と改善につなげていくよう努めるものと
したこと。
(4)幼稚部における主な改善事項
・ 幼稚部教育要領においては,幼稚部における教育において育みたい資質・能力 (「知識及び技能の基礎」,「思考力,判断力,表現力等の基礎」,「学びに向かう力,人間性等」)を明確にしたこと。
・ 5歳児修了時までに育ってほしい具体的な姿を「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」として明確にしたこと。(「健康な心と体」「自立心」「協同性」「道徳性・
規範意識の芽生え」「社会生活との関わり」「思考力の芽生え」「自然との関わり・ 生命尊重」「数量や図形,標識や文字などへの関心・感覚」「言葉による伝え合い」
「豊かな感性と表現」)
・ 「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」は,幼児の障害の状態や特性及び発達の程度等に応じて,指導を行う際に考慮するものとしたこと。
(5)小学部・中学部における主な改善事項
① 小・中学校の教育内容の改善に準じた主な改善事項 小学校学習指導要領(平成29年3月31日文部科学省告示第63号)及び中学校教育要領(平成29年3月31日文部科学省告示第64号)の改善に準じた改善を行ったこと。
ア 言語能力の確実な育成
・ 発達の段階に応じた,語彙の確実な習得,意見と根拠,具体と抽象を押さえて考えるなど情報を正確に理解し適切に表現する力の育成を図ることとしたこと。
・ 学習の基盤としての各教科等における言語活動(実験レポートの作成,立場や根拠を明確にして議論することなど)を充実させたこと。
イ 情報活用能力の育成
・ コンピュータや情報通信ネットワークなどの情報手段を活用するために必要な 環境を整え,これらを適切に活用した学習活動の充実を図ることとしたこと。
・ 小学部においては,各教科等の特質に応じて,コンピュータでの文字入力等の習得,プログラミング的思考の育成のための学習活動を実施することとしたこと。
ウ 理数教育の充実
・ 前回改訂において充実させた内容を今回も維持した上で,日常生活等から問題を見いだす活動や見通しをもった観察・実験などを充実させたこと。
・ 必要なデータを収集・分析し,その傾向を踏まえて課題を解決するための統計教育や自然災害に関する内容を充実させたこと。
エ 伝統や文化に関する教育の充実
・ 古典など我が国の言語文化や,県内の主な文化財や年中行事の理解,我が国や郷土の音楽,和楽器,武道,和食や和服などの指導を充実させたこと。
オ 体験活動の充実
・ 生命の有限性や自然の大切さ,挑戦や他者との協働の重要性を実感するため, 体験活動を充実させ,自然の中での集団宿泊体験活動や職場体験を重視したこと。
カ 外国語教育の充実
・ 視覚障害者,聴覚障害者,肢体不自由者及び病弱者(以下「視覚障害者等」と いう。)である児童に対する教育を行う特別支援学校の小学部において,中学年 で「外国語活動」を,高学年で「外国語科」を導入したこと。(なお,外国語教育の充実に当たっては,新教材の整備,研修,外部人材の活用などの条件整備を行い支援することとしている。)
・ 小・中・高等部一貫した学びを重視し,外国語能力の向上を図る目標を設定するとともに,国語教育との連携を図り日本語の特徴や言語の豊かさに気付く指導を充実させたこと。
② 道徳教育の充実
・ 平成27年3月27日付け26文科初1339号「学校教育法施行規則の一部 を改正する省令の制定,小学校学習指導要領の一部を改正する告示,中学校学習
指導要領の一部を改正する告示及び特別支援学校小学部・中学部学習指導要領の一部を改正する告示の公示並びに移行措置等について(通知)」により既にお伝えしたとおりであり,小学部で平成30年4月1日から,中学部で平成31年4
月1日から施行される内容に変更はないこと。なお,知的障害者である児童生徒に対する教育を行う特別支援学校において,内容の指導に当たっての配慮事項の一部を加えたこと。
平成27年の一部改正の内容は,道徳の時間を教育課程上,特別の教科である道徳(以下「道徳科」という。)として新たに位置付け,発達の段階に応じ,答えが一つではない課題を一人一人の児童生徒が道徳的な問題と捉え向き合う「考える道徳」,「議論する道徳」へと転換を図るものであること。
・道徳科の内容項目について,いじめ問題への対応の充実や発達の段階をより一 層踏まえた体系的なものに見直すとともに,問題解決的な学習や体験的な学習な
どを取り入れ,指導方法の工夫を行うことについて示したこと。
・ 道徳科における学習状況及び道徳性に係る成長の様子を継続的に把握し,指導の改善に生かすこと。ただし,数値による評価は行わないこと。
具体的には,平成28年7月29日付け28文科初第604号「学習指導要領の一部改正に伴う小学校,中学校及び特別支援学校小学部・中学部における児童
生徒の学習評価及び指導要録の改善等について(通知)」(以下「道徳科の学習評 価及び指導要録の改善通知」という。)においてお知らせしたとおり,他の児童
生徒との比較ではなく,児童生徒がいかに成長したかを積極的に受け止めて認め, 励ます個人内評価として記述により行うこと。
③ 学びの連続性を重視した対応
ア 「重複障害者等に関する教育課程の取扱い」について,児童生徒の学びの連続性 を確保する視点から,基本的な考え方を規定したこと。
イ 知的障害者である児童生徒のための各教科等の目標や内容について,育成を目指す資質・能力の三つの柱に基づき整理するとともに,各部や各段階,幼稚園や小・
中学校とのつながりに留意し,次の点を充実したこと。
・ 中学部に二つの段階を新設するとともに,小・中学部の各段階に目標を設定し, 段階ごとの内容を充実したこと。
・ 小学部の教育課程に外国語活動を設けることができることを規定したこと。
・ 知的障害の程度や学習状況等の個人差が大きいことを踏まえ,小学部に就学する児童のうち,小学部の3段階に示す各教科又は外国語活動の内容を習得し目標を達成している者又は中学部に就学する生徒のうち,中学部の2段階に示す各教科の内容を習得し目標を達成している者については,相当する学校段階までの小
学校等の学習指導要領の各教科及び外国語活動の目標及び内容の一部を取り入れることができるよう規定したこと。
④ 一人一人に応じた指導の充実
・ 視覚障害者等である児童生徒に対する教育を行う特別支援学校において,児童生徒の障害の状態や特性及び心身の発達の段階等を十分考慮し,育成を目指す資質・能力を育むため,障害の特性等に応じた指導上の配慮を充実したこと。
【視覚障害】 空間や時間の概念形成の充実
【聴覚障害】 音声,文字,手話,指文字等を活用した意思の相互伝達の充実
【肢体不自由】 体験的な活動を通した的確な言語概念等の形成
【病弱】 間接体験,疑似体験等を取り入れた指導方法の工夫
・ 発達障害を含む多様な障害に応じた指導を充実するため,自立活動の内容として,「障害の特性の理解と生活環境の調整に関すること」などを規定したこと。
⑤ 自立と社会参加に向けた教育の充実
・ 卒業後の視点を大切にしたカリキュラム・マネジメントを計画的・組織的に行 うことを規定したこと。
・ 小学部,中学部段階からのキャリア教育の充実を図ることを規定したこと。また,幼稚部においても,「自立心」,「協同性」,「社会生活との関わり」といった 幼児期の終わりまでに育ってほしい姿を示したこと。
・ 生涯学習への意欲を高めることや,生涯を通じてスポーツや芸術文化活動に親しみ,豊かな生活を営むことができるよう配慮することを規定したこと。
・ 障害のない子供との交流及び共同学習の機会を設け,共に尊重し合いながら協 働して生活していく態度を育むことを明らかにしたこと。
・ 日常生活に必要な国語の特徴や使い方〔国語〕,数学を学習や生活で生かすこと 〔算数,数学〕,身近な生活に関する制度〔社会〕,働くことの意義,消費生活と環 境〔職業・家庭〕など,知的障害者である児童生徒のための各教科の内容を充実し たこと。
⑥ その他の改善事項
・ 初等中等教育の一貫した学びを充実させるため,小学部入学当初における生活科を中心とした「スタートカリキュラム」を充実させるとともに,幼小,小中,中高といった学部段階間及び学校段階間の円滑な接続や教科等横断的な学習を重 視したこと。
・ 児童生徒一人一人の調和的な発達を支える観点から,学級経営や生徒指導,キ ャリア教育の充実と教育課程の関係について,小学部及び中学部を通して明記し たこと。
・ 日本語の習得に困難のある児童生徒への教育課程,夜間その他の特別の時間に授業を行う課程について定めたこと。
・ 部活動については,教育課程外の学校教育活動として教育課程との関連を留意 し,社会教育関係団体等との連携による持続可能な運営体制について定めたこと。
2.留意事項
(1)移行措置期間の特例
平成30年4月1日から平成33年3月31日までの間における現行の小学部・中学 部学習指導要領(平成21年文部科学省告示第62号)の必要な特例については,追ってこれを告示し,別途通知する予定であること。
(2)特別支援学校教諭等免許状の早期取得促進
平成27年12月の中央教育審議会答申「これからの学校教育を担う教員の資質能力 の向上について」において,平成32年までにおおむね全ての特別支援学校教員が当該
学校教諭等免許状を保有することを目指すとされたことを踏まえ,特別支援学校教諭等免許状保有者の特別支援学校への採用・配置,同免許状を保有しない特別支援学校教員に対する免許法認定講習の受講促進など,計画的な同免許状保有率向上の取組を進め,
特別支援学校教員の専門性向上に引き続き努めること。
(3)新学習指導要領等の実施に必要な諸条件の整備
答申において指摘されているとおり,新学習指導要領等の実現のためには,これからの学校教育の在り方に関わる諸改革との連携を図るとともに,教員の授業改善や子供と向き合う時間を確保するなど,教員一人一人が力を発揮できるような教育条件の整備に努める必要があること。
具体的には,平成29年4月から施行された教育公務員特例法等の改正を受け,教員養成・採用・研修を一体として,教員の資質・能力の向上を図ること。子供一人一人の学びを充実させるためのきめ細かな指導など新学習指導要領等における指導や業務の在り方に対応する指導体制の充実を図ること。教職員の業務の見直しや部活動の運営の適正化などによる業務の適正化を図ること。学校図書館の充実やICT環境の整備など教材や教育環境の整備・充実を図ること。
特に,特別支援学校において教室不足が生じている状況を踏まえ,各設置者において,その解消計画を策定・更新するとともに,新設校の設置,校舎の増築,分校・分教室による対応,廃校・余裕教室等の既存施設の活用等により,引き続き教室不足解消のため
の取組を進めること。
(4)新学習指導要領等の周知・徹底
新学習指導要領等の理念が各学校において実現するためには,各学校の教職員が新学習指導要領等の理念や内容についての理解を深める必要がある。このため,文部科学省
としては平成29年度に新学習指導要領等に関する説明会を開催するとともに,一人一 人の教職員が直接利用できる各種の広報媒体を通じて,周知・徹底を図ることとしており,各教育委員会等においても,新学習指導要領等に関する研修会を開催,教職員への周知・徹底を図ること。
また,学習指導要領は大綱的な基準であることから,その記述の意味や解釈などの詳細については,文部科学省が作成・公表する学習指導要領解説において説明することを予定している。このため,学習指導要領解説を活用して,教職員が学習指導要領についての理解を深められるよう周知・徹底を図ること。
(5)家庭・地域等との連携・協働の推進
学校がその目的を達成するため,各教育委員会等においては,学校や地域の実態等に応じ,教育活動の実施に必要な人的又は物的な体制を家庭や地域の人々の協力を得ながら整えるなど,家庭や地域社会との連携及び協働を深めること。また,高齢者や異年齢の子供など,地域における世代を越えた交流の機会を設けること。
〔参考〕文部科学省ホームページアドレス
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/
本件担当: 文部科学省 電話:03(5253)4111(代表)
初等中等教育局 特別支援教育課(内線2003
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