発達障害者支援法と
障害者自立支援法を考える
作成 2011.1.15
更新 2012.10./ 2014.3./2016.4./2017.4./2018.9.
発達障害者支援法と障害者自立支援法が施行されたことについて考えてみたいと思います。
発達障害者の支援の前提として重要なことは、人の発達には個人差があるということ、障害の内容やその程度や状態は多様であることを理解することだと思います。
障害者の自立支援の前提として重要なことは、人の「自立」をどのように考えるかということだと思います。
発達障害者支援法について
発達障害者支援法は、2005(平成17)年4月に施行されました。
発達障害者支援法でいう発達障害とは、「自閉症、アスペルガー症候群、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するもの」と定義されています。
この発達障害者支援法は発達障害の領域に含まれるところの精神遅滞(知的障害)、脳性まひ、てんかんなどは掲げていません。それは、知的障害とその周辺の障害、脳性まひ(肢体不自由)などについては児童福祉法や知的障害者福祉法、身体障害者福祉法の対象としてすでに対応してきたという経緯があるからです。
したがってこの発達障害者支援法が定義するところの発達障害とは、これまでの法制度による施策の谷間に置かれていたために、十分な対応がなされてこなかった障害のことを意味します。
換言すれば、これまでの法制度の対象外とされてきた障害(者)に対応するために発達障害者支援法は制定されたのです。
この法律の附則には、「政府は、この法律の施行後3年を経過した場合において、この法律の施行状況について検討を加え、その結果に基づいて必要な見直しを行なう」とあります。
発達障害者支援法の施行について
17文科初第16号 各 指 定 都 市 市 長 各都道府県教育委員会教育長 各指定都市教育委員会教育長 殿 各 国 公 私 立 大 学 長 各国公私立高等専門学校長 文部科学事務次官
「発達障害者支援法(平成16年法律第167号)」(以下、「法」という。)は平成16年12月10日に公布された。また、本日、法に基づき「発達障害者支援法施行令(平成17年政令第150号)」(以下、「令」という。)が、令に基づき「発達障害者支援法施行規則(平成17年厚生労働省令第81号)」(以下、「規則」という。)が公布され、いずれも本日から施行されるところである。 法の趣旨及び概要は下記のとおりですので、管下区市町村・教育委員会・関係団体等にその周知徹底を図るとともに、必要な指導、助言又は援助を行い、本法の運用に遺憾のないようにご配意願いたい。 なお、法の施行に基づいて新たに発出される関係通知については、別途通知することとする。
発達障害の症状の発現後、できるだけ早期に発達支援を行うことが特に重要であることにかんがみ、発達障害を早期に発見し、発達支援を行うことに関する国及び地方公共団体の責務を明らかにするとともに、学校教育における発達障害者への支援、発達障害者の就労支援、発達障害者支援センターの指定等について定めることにより、発達障害者の自立及び社会参加に資するようその生活全般にわたる支援を図り、もってその福祉の増進に寄与することを目的とするものであること。(法第1条関係) 第2 法の概要 (1)定義について 「発達障害」の定義については、法第2条第1項において「自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるものをいう」とされていること。また、法第2条第1項の政令で定める障害は、令第1条において「脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するもののうち、言語の障害、協調運動の障害その他厚生労働省令で定める障害」とされていること。さらに、令第1条の規則で定める障害は、「心理的発達の障害並びに行動及び情緒の障害(自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害、言語の障害及び協調運動の障害を除く。)」とされていること。 これらの規定により想定される、法の対象となる障害は、脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するもののうち、ICD-10(疾病及び関連保健問題の国際統計分類)における「心理的発達の障害(F80-F89)」及び「小児<児童>期及び青年期に通常発症する行動及び情緒の障害(F90-F98)」に含まれる障害であること。 なお、てんかんなどの中枢神経系の疾患、脳外傷や脳血管障害の後遺症が、上記の障害を伴うものである場合においても、法の対象とするものである。(法第2条関係) (2)国及び地方公共団体の責務について 国、都道府県及び市町村は、発達障害児に対しては、発達障害の症状の発現後できるだけ早期に発達支援を行うことが重要であることから、発達障害の早期発見のため必要な措置を講じること。また、その者の状況に応じて適切に、就学前の発達支援、学校における発達支援その他の発達支援、発達障害者に対する就労、地域における生活等に関する支援及び発達障害者の家族に対する支援が行われるよう、必要な措置を講じること。発達障害を早期に発見することは、その後の支援を効果的・継続的に行っていくためのものであること。(法第3条第1項・第2項関係) 支援等の施策を講じるに当たっては、発達障害者及び発達障害児の保護者(親権を行う者、未成年後見人その他の者で、児童を現に監護するものをいう。以下同じ。)の意思ができる限り尊重されなければならないこと。その際、本人や保護者に対して支援の内容等について十分な説明を行い、理解を得ることが重要であること。(法第3条第3項関係) (3)関係機関の連携について 発達障害者の支援等の施策を講じるに当たっては、医療、保健、福祉、教育及び労働に関する業務を担当する部局の相互の緊密な連携を確保するとともに、犯罪等により発達障害者が被害を受けること等を防止するため、これらの部局と消費生活に関する業務を担当する部局その他の関係機関との必要な協力体制の整備を行うこと。(法第3条第4項関係) (4)国民の責務について 国民は、発達障害者の福祉について理解を深めるとともに、社会連帯の理念に基づき、発達障害者が社会経済活動に参加しようとする努力に対し、協力するように努めなければならないこと。(法第4条) (5)児童の発達障害の早期発見及び早期の発達支援について 児童の発達障害の早期発見のために、市町村は、母子保健法(昭和40年法律第141号)第12条及び第13条に規定する健康診査及び学校保健法(昭和33年法律第56号)第4条に規定する健康診断を行うにあたり十分留意するとともに、発達障害の疑いのある児童に対し、継続的な相談を行うよう努め、当該児童の保護者に対し、医療機関等の紹介、助言を行うこと。 また、発達障害児が早期の発達支援を受けることができるよう、発達障害児の保護者に対し、相談、助言その他適切な措置を講じること。 都道府県において、発達障害児の早期の発達支援のために必要な体制の整備を行うとともに、発達障害児に対して行われる発達支援の専門性を確保するため必要な措置を講じること。(法第5条・第6条関係) (6)保育、放課後児童健全育成事業の利用及び地域での生活支援について 市町村が、保育、放課後児童健全育成事業の利用、地域での生活支援のために適切な配慮、必要な支援等を行うものとすること。(法第7条・第9条・第11条関係) (7)教育について 国、都道府県及び市町村が、発達障害児(18歳以上の発達障害者であって高等学校、中等教育学校、盲学校、聾(ろう)学校及び養護学校に在学する者を含む。)がその障害の状態に応じ、十分な教育を受けられるようにするため、適切な教育的支援、支援体制の整備その他の必要な措置を講じるものとすること。 また、大学及び高等専門学校は、発達障害者の障害の状態に応じ、適切な教育上の配慮をするものとすること。(法第8条関係) (8)就労の支援について 都道府県は、発達障害者の就労を支援するため必要な体制の整備に努めるとともに、公共職業安定所等の相互の連携を確保しつつ、発達障害者の特性に応じた適切な就労の機会の確保に努めるものとすること。 また、都道府県及び市町村は、必要に応じ、発達障害者が就労のための準備を適切に行えるようにするための支援が学校において行われるよう必要な措置を講じるものとすること。(法第10条関係) (9)権利擁護について 国、都道府県及び市町村は、発達障害者が、その発達障害のために差別されること等権利利益を害されることがないようにするため、権利擁護のために必要な支援を行うものとすること。(法第12条関係) (10)発達障害者の家族に対する支援について 都道府県及び市町村は、発達障害者の支援に際しては、家族も重要な援助者であるという観点から、発達障害者の家族を支援していくことが重要である。 特に、家族の障害受容、発達支援の方法などについては、相談及び助言など、十分配慮された支援を行うこと。 また、家族に対する支援に際しては、父母のみならず兄弟姉妹、祖父母等の支援も重要であることに配慮すること。(法第13条関係) (11)発達障害者支援センターについて 平成14年度より、「自閉症・発達障害支援センター運営事業(平成14年9月10日障発第0910001号厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長通知)」が実施されてきたところである。今般、法の成立により発達障害者支援センターが本法に位置づけられ、都道府県等は「自閉症・発達障害支援センター」を「発達障害者支援センター」として指定することとなる。 発達障害者支援センターの業務内容については、従来の「自閉症・発達障害支援センター」と同一のものであるが、センターにおける支援の対象者については、法における発達障害の範囲が学習障害や注意欠陥多動性障害なども含み、これまでよりも拡大することとなることから、その十分な対応を行うこと。(法第14条関係) また、発達障害者支援センターは、都道府県知事等により指定されるところとなり、職員の秘密保持、業務状況に関する報告の徴収、業務の改善に関する必要な措置、指定の取り消しが定められているため、その責務について十分認識の上、支援にあたること。(法第15条・第16条・第17条・第18条関係) (12)病院や診療所など専門的な医療機関の確保について 国、都道府県及び市町村は、発達障害の専門的な診断及び発達支援を行うことのできる病院又は診療所を地域に確保し、日頃から地域の住民に情報提供を行うこと等により、医療機関による支援体制の整備に努めること。(法第19条関係) (13)民間団体の活動の活性化への配慮について 国、都道府県及び市町村は、発達障害者を支援するためのさまざまな団体の活動の活性化を図ることは重要であり、その際、家族のみならず発達障害者当事者の団体の活動が活性化されるよう配慮すること。(法第20条関係) (14)国民に対する普及及び啓発について 国、都道府県及び市町村は、発達障害については、障害を有していることが理解されずに困難を抱えている場合が多いことなどから、発達障害者についての理解を深めることなどを国民の責務(第4条関係)と規定していることと併せて、具体的に発達障害に関する国民の理解を深めるための必要な広報及びその他の啓発活動を行うこと。(法第21条関係) (15)医療又は保険の業務に従事する者に対する知識の普及び啓発について 国、都道府県及び市町村は、医療又は保健の業務に従事する者に対し、発達障害の発見のため必要な知識の普及及び啓発に努めなければならないこと。(法第22条関係) (16)専門的知識を有する人材の確保等について 国、都道府県及び市町村は、発達障害者への適切な支援を確保していくため、医療、保健、福祉、教育、労働等の分野において発達障害に関する専門的知識を有する人材を確保することが重要な課題であること。 そのため、国においては医師については国立精神・神経センターにおいて、また、行政担当者、保健師、保育士等については国立秩父学園において、教員等については、独立行政法人国立特殊教育総合研究所において、研修を実施することとしており、都道府県等においても専門的知識を有する人材の確保に積極的に努めること。(法第23条関係) (17)調査研究について 国は、発達障害者の実態の把握に努めるとともに、発達障害の原因の究明、発達障害の診断及び治療、発達支援の方法等に関する必要な調査研究を行うものとすること。そのため、独立行政法人国立特殊教育総合研究所においては、学校における発達支援の方法等に関する調査研究活動を行っている。(法第24条関係) (18)大都市等の特例について 法において、都道府県が処理することとされている事務のうち、法第6条第3項、法第10条第1項及び第2項、法第13条、法第14条第1項、法第16条、法第17条、法第18条並びに法第19条第1項の事務については、令第3条に定めるとおり、地方自治法 (昭和22年法律第67号) 第252条の19第1項により指定都市(以下「指定都市」という。)が処理するものとすること。(法第25条関係) |
障害者自立支援法について
障害者自立支援法は、2005(平成17)年10月に制定され、2006(平成18)年4月から一部施行、同年10月から完全実施されました。
障害者自立支援法でいう「障害者」とは、身体障害者福祉法に規定する身体障害者、知的障害者福祉法にいう知的障害者、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律に規定する精神障害者と定義されています。
そしてこの障害者自立支援法の施行により、身体障害・知的障害・精神障害の障害種別ごとの施策の一元化が図られました。
この法律の附則には、「政府は、この法律の施行後3年を目途として、この法律及び障害者等の福祉に関する他の法律の施行状況、障害児の児童福祉施設への入所に係る実施主体の在り方を勘案して、この法律の規定について、障害者等の範囲を含め検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。」「政府は、障害者等の福祉に関する施策の状況、障害者等の経済的な状況等を踏まえ、就労の支援を含めた障害者等の所得の確保に係る施策のあり方について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。」とあります。
障害者自立支援法の概要
厚生労働省
障害者自立支援法の概要
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