障害者福祉に関する動向

2011.1.15作成
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「障害」をどのようにとらえ、障害をもつ人の「福祉」をどのように考えるかということが基本的には大切なわけですが、
人の暮らしという視点でいえば、どのように暮らすか、どのように暮らせるかということは障害の有無には関係なく
誰にとっても重要なことだと思います。

実情を無視した法律を施行すれば当然無理や混乱が生じます。
障害者自立支援法の施行はこれからの障害者福祉を考えるための問題提起をしたともいえるわけです。

障害者自立支援法から障害者総合支援法に至る経緯の検証は「共生社会」の実現を図るという意味においては重要であり、
今後の動向を注視していくことが大切です。






障害者自立支援法「廃止」を巡って
障害者自立支援法から障害者総合支援法へ
障害者権利条約の批准と国内法の整備

社会福祉法人制度改革に向けて
障害者差別解消法の施行
働き方改革

コロナ禍で…







障害者自立支援法「廃止」を巡って

■改正障害者自立支援法が成立
■新法「障害者総合福祉法(仮称)」の骨格に関する提言  
◆自立支援法の廃止見送り

◆障害者自立支援法改正案を閣議決定 公約の「廃止」見送り





 障害者自立支援法は憲法に違反するとして訴訟問題に発展したわけですが、悪法とされた障害者自立支援法の最大の意義は、その法の施行によってこれまでの障害者福祉に関する見方や考え方、取り組み方を根本的なところから見直す機会が設定されたということです。
 障害者自立支援法が成立、施行された背景には、障害者の自立支援や就労支援に関する施策がこれまで講じられてきたにもかかわらず、期待通りの効果が上がらなかったということと支援に要する財源の確保の問題があったといってよいでしょう。

 障害者の自立支援や就労支援の前提として大切なことは、「障害」「自立」「就労」について具体的にどのように考えるかということがあるのですが、その点をなおざりにしたまま「支援」を強調したとしても、肝心な支援の目標や方法が明確にかつ具体的に定まらないままということになります。
 これまでの自立支援や就労支援に関する考え方は障害当事者によるものというよりも、障害のない人の価値観や評価基準に基づくものであり、障害当事者の考えであったとしても、それは比較的理解の得られやすい身体障害を中心にした考え方であり、そのため知的障害や精神障害、発達障害などのことは反映されにくかったといってよいと思います。一般の人々が「障害」について理解するような機会自体が少なかったということもあると思います。




  2010.3 

 2010(平成22)年3月15日発行の週刊「福祉新聞」によれば、厚生労働省は3月4日に障害保健福祉関係主管課長会議を開き、2010年度の事業執行方針の説明で、障害者自立支援法に基づいて進められているサービス事業者の新体系への移行について、長妻厚生労働大臣が2月15日の衆議院予算委員会で「推進する」と答弁したことを説明し、都道府県に対し、移行支援策を積極的に活用して新体系への移行促進を要請したという。
 
 さらに移行支援策として、①報酬上の各種加算や手厚いサービス提供に応じた報酬額の設定②移行前の報酬水準との差額の助成③新体系サービスで必要となる改修・増築工事費の助成―などを継続して行う方針を説明。特に移行が遅れている知的障害者通勤寮や精神障害者生活訓練施設などに対する移行指導の充実を求めたという。

 たしかに障害者自立支援法では、障害福祉サービスの事業者は2012(平成24)年3月末までに法に基づく新事業体系に移行しなければならないことになっている。
 しかし2009(平成21)年10月1日現在の調査では、移行率は平均45.4%にとどまっているという。当然そうした状況を踏まえた上で要請したのであろうが、新政権は、障害者自立支援法は全面的に悪法であると認めたからこそ、法律の改正ではなく「廃止」と明言したのではなかったのか??

 自立支援・就労支援・地域移行などのサービスの利用をしやすくするとしながら、障害程度区分(この障害程度区分自体にも問題がある)や年齢により利用できるサービス内容を制限し、就労支援と称するサービスの利用条件にも問題がある。それを放置したまま、その取り扱いについての説明もないままに、廃止するといいながら廃止にする法律に基づいた事業体系への移行を推進するというのは一体どういう考えなのであろうか。

 法律の廃止とは名ばかりで、抜本的見直しもなく、新事業体系の事業内容の問題点はそのままに、結局はなし崩しにするための方便として、サービス利用料の負担軽減や事業者に対する新事業体系への移行支援策を掲げることで、問題の本質には触れることなく新たに制定する法律は名称だけを改めたものにするということなのであろうか。

 
 厚生労働省:自立支援法のサービスの利用について 平成24年4月版


 障害者自立支援法をめぐる問題


◆自立支援法改正法案可決  2010(平成22)年5月29日付 朝日新聞ニュース
 障害者の福祉サービスの利用に原則1割負担を課す障害者自立支援法の改正法案が28日、衆院厚生労働委員会で、民主と自民、公明など各党の賛成多数で可決した。今国会で成立の見通し。
 改正法案では、1割の自己負担を課す原則を、支払い能力に応じて支払う「応能負担」に転換し、発達障害もサービスの対象とする。グループホーム利用への助成制度も盛り込んだ。

※障害者自立支援法改正法案について、社民党は反対したが、民主党は自公両党と妥協して採決を急いだそうだ。


◆政策ウオッチ 2010(平成22)年6月2日 朝日新聞
 社民党は5月28日の衆院厚生労働委員会で、障害者自立支援法改正案に反対した。民主党が自公両党と妥協して採決を急いだ法案だった。
 重い障害の人ほど原則として負担が増える同法の見直しは、民主党が昨年の衆院選で政権交代のシンボルの1つに掲げた。だが、鳩山内閣が当事者の声を聞くとして設けた会議の議論を待たず修正案は可決され、もとの与党案にあった同法の「廃止」は姿を消した。(南彰)

 

◆自立支援法改正成立目前の廃案 
2010(平成22)年6月17日 朝日新聞
 障害者自立支援法の改正案が、成立を目前にして廃案になった。改正法案は、原則1割の負担を、支払い能力に応じた負担に改めることが柱で、民主、自民、公明の各党が合意して議員立法で提案。5月末に衆院を通過、参院の厚生労働委員会でも可決して、参院本会議での採決を残すのみだった。
 当初は今月2日の参院本会議で成立する予定だったが、鳩山由紀夫前首相の退陣表明で流れた。



◆障害者支援、来夏素案 
2010(平成22)年6月23日 朝日新聞
 障害者自らが制度作りを進める政府の「障がい者制度改革推進会議」の総合福祉部会は22日、障害者自立支援法を廃止した後の新制度についての論点を取りまとめた。来夏をメドに素案をまとめ、2012年の通常国会への法案提出を目指す。新制度を規定するのは、「障がい者総合福祉法」(仮称)。この日は、法の理念・目的や障害の範囲、支援体制など9分野に分けて論点を整理した。

※障害者自立支援法については、障害当事者等が、国を相手取り、サービス利用料の負担を「応益負担」として障害者に課すことなどを違憲とする訴訟を起こした。これに対して、2010(平成22)年1月に「速やかに応益負担制度を廃止し、遅くとも2013(平成25)年8月までに自立支援法を廃止し、新たな法律を実施する」「新法の制定には障害者の参画のもとで十分に議論する」という和解の基本合意が訴訟団と国(厚労省)との間で結ばれた。

 この方針は、政府による「障害者制度改革の推進のための基本的な方向について」において、自立支援法は廃止し、「障害者総合福祉法」(仮称)の法案を平成24年に国会に提出し、平成25年8月までに実施することが、2010(平成22)年6月29日に閣議決定された。

 この実現に向けて、内閣の「障害者制度改革推進本部」の下に、平成22年1月に設置された障害当事者の参加により構成される「障害者制度改革推進会議」の総合福祉部会で議論が進められてきた。
 現時点では新しい法律「障害者総合福祉法」(仮称)の詳細は不明で、平成23年8月ごろには素案が示されるという。


■改正障害者自立支援法が成立 
2010(平成22)年12月3日
  6月の鳩山由紀夫前首相の退陣表明で流れた改正法案が成立した。

 障害者自立支援法は、平成25年8月までには廃止され、廃止後は新しい法律「障害者総合福祉法」(仮称)が実施されることになっているわけで、この改正法はそれまでのつなぎの法律という位置づけだそうだ。正式には、「障がい者制度改革推進本部における検討を踏まえて障害者福祉施策を見直すまでの間において障害者等の地域生活を支援するための関係法律の整備に関する法律」という。
 この改正障害者自立支援法は、新法までのつなぎであり当然問題点の抜本的な見直しに基づくものではないということになる。
 しかしこの改正法の内容は、発達障害も法の対象となることを明確にした。

 発達障害も法の対象にするということは法の趣旨である障害種別にかかわらず必要なサービスを利用しやすくするために、身近な市町村が責任をもって一元的にサービスを提供する仕組みにするということと、サービス利用者に対する障害程度区分の認定問題に大きく関係することになる。そのことが具体的に今後どのように反映されるかという点は注目すべきことだと思う。
 なぜなら障害種別に関係なく一元的にサービスを提供するためには多様な障害の内容やその程度状態とそのニーズに即した対応が可能な基盤整備が必要であるからである。また現在の障害程度区分の審査判定は、介護保険制度の要介護認定に用いる調査項目をベースにしたやり方であり、それでは解決にならないからである。


■新法「障害者総合福祉法(仮称)」の骨格に関する提言
 平成23年8月30日、障害者自立支援法に代わる新法の骨格に関する提言がまとめられた。 提言(PDF)

 平成23年8月30日に、障がい者制度改革推進会議総合福祉部会(第18回)が開催され、障害者自立支援法に代わる新しい法律の素案となる「障害者総合福祉法の骨格に関する総合福祉部会の提言 ―新法の制定を目指して― 」が、部会構成員の合意によりまとめられ、9月5日に公表された。


― 提言の趣旨 ― 

 
提言をまとめるにあたっては、2つの文書を指針に検討作業を行ってきたということが記されています。
 その1つが、平成18(2006)年に国連が採択した障害者の権利条約で、もう1つは、平成22(2010)年1月に国(厚生労働省)と障害者自立支援法訴訟原告ら(71名)との間で結ばれた基本合意文書であり、これらの文書は、障害者総合福祉法(仮称)の骨格に関する提言をまとめるに際し、基本的な方向を指し示す重要な役割を果たしたということです。
 提言では、新しい法律が目指すべきこととして次の6つの目標を最初に掲げています。

<障害者総合福祉法が目指すべき6つのポイント>
 

(1)障害のない市民との平等と公平
 障害は誰にでも起こりうるという前提に立ち、障害があっても市民として尊重され、誇りを持って社会に参加するためには、平等性と公平性の確保が何よりの条件となります。障害者総合福祉法がこれを裏打ちし、障害者にとって、そして障害のない市民にとっても新たな社会の到来を実感できるものとします。
(2)谷間や空白の解消
 障害の種類によっては、障害者福祉施策を受けられない人がたくさんいます。また制度間の空白は、学齢期での学校生活と放課後、卒業後と就労、退院後と地域での生活、働く場と住まい、家庭での子育てや親の介助、消費生活など、いろいろな場面で発生しています。障害の種別間の谷間や制度間の空白の解消を図っていきます。
(3)格差の是正
 障害者のための住まいや働く場、人による支えなどの環境は、地方自治体の財政事情などによって、質量ともに大きく異なっています。また、障害種別間の制度水準についても大きな隔たりがあります。どこで暮らしを築いても一定の水準の支援を受けられるよう、地方自治体間の限度を超えた合理性を欠くような格差についての是正を目指します。
(4)放置できない社会問題の解決
 世界でノーマライゼーションが進むなか、わが国では依然として多くの精神障害者が「社会的入院」を続け、知的や重複の障害者等が地域での支援不足による長期施設入所を余儀なくされています。また、公的サービスの一定の広がりにもかかわらず障害者への介助の大部分を家族に依存している状況が続いています。これらを解決するために地域での支援体制を確立するとともに、効果的な地域移行プログラムを実施します。
(5)本人のニーズにあった支援サービス
 障害の種類や程度、年齢、性別等によって、個々のニーズや支援の水準は一様ではありません。個々の障害とニーズが尊重されるような新たな支援サービスの決定システムを開発していきます。また、支援サービスを決定するときに、本人の希望や意思が表明でき、それが尊重される仕組みにします。
(6)安定した予算の確保
 制度を実質化していくためには財政面の裏打ちが絶対的な条件となります。現在の国・地方の財政状況はきわめて深刻であるため、障害者福祉予算を確保するためには、給付・負担の透明性、納得性、優先順位を明らかにしながら、財源確保について広く国民からの共感を得ることは不可欠です。

 障害者福祉予算の水準を考えていく上での重要な指標となるのが、国際的な比較です。この際に、経済協力開発機構(OECD)各国の社会保障給付体系の中における障害者福祉の位置づけの相違を丁寧に検証し、また高齢化などの要因を考慮した上での国民負担率など、財政状況の比較も行われなければなりません。当面の課題としては、OECD加盟国における平均並みを確保することです。これによって、現状よりはるかに安定した財政基盤を図ることができます。


<改革への新しい一歩として>


 わが国の障害者福祉もすでに長い歴史を有しておりますが、障害者を同じ人格を有する人と捉えるよりも、保護が必要な無力な存在、社会のお荷物、治安の対象とすべき危険な存在などと受け止める考え方が依然として根強く残っています。

 わが国の社会が、障害の有無にかかわらず、個人として尊重され、真の意味で社会の一員として暮らせる共生社会に至るには、まだまだ遠い道のりであるかもしれません。そのような中で総合福祉部会に参集したわたしたちは、障害者本人をはじめ、障害者に関わる様々な立場から、違いを認め合いながらも、それでも共通する思いをここにまとめました。
 
 ここに示された改革の完成には時間を要するかもしれません。協議・調整による支給決定や就労系事業等、試行事業の必要な事項もあります。また、骨格提言に基づく法の策定、実施にあたっては、さらに市町村及び都道府県をはじめとする幅広い関係者の意見を踏まえることが必要です。

 わたしたちのこうした思いが、国民の世論の理解と共感を得て、それが政治を突き動かし、障害者一人ひとりが自身の存在を実感し、様々な人と共に支えあいながら生きていくことの喜びを分かち合える社会への一歩になることを信じて、ここに骨格提言をまとめました。
 今、新法への一歩を踏み出すことが必要です。

                                       平成23(2011)年8月30日 
障がい者制度改革推進会議総合福祉部会



<新法の骨格に関する提言で注目すべき点>


①支援の対象となる障害(者)の範囲を、支援を必要とするすべての人としている。
②介護保険制度との関係については、別個の制度とすべきであるとし、介護保険の対象年齢になった場合でも従来から受けている支援を継続できるものとするとしている。
③障害福祉サービス利用の際に受ける障害程度の認定には、介護保険制度の要介護認定に用いる調査項目をベースにした6段階の「障害程度区分」は使わないとしている。
④サービスの利用者負担については原則無償とし、施設経営にかかわる利用者支援の報酬は原則日払いで、人件費等事業運営にかかる報酬は原則月払いとするとしている。そして人材の確保と養成についても提言している。

◆これらのことは当初から問題にされてきたことであり、特に障害程度区分の認定に関する問題は、障害の実態に即したものではなく、障害の程度を6段階の区分に認定し、その区分により利用するサービスの内容や利用期間などを制限するのは利用者本位のサービスではない。自由に選べるサービスがあり、支援の継続があってこそ、障害者のニーズに即した生活権が確保されるということだと思います。

◆2006(平成18)年12月、第61回国連総会において障害を理由とするあらゆる分野における差別を禁止し、障害者の権利を保障する「障害者の権利に関する条約(障害者の権利条約)」が採択されました。
 日本もこの条約の締結に向けて必要な国内法の整備を行っているところであり、障害者基本法が改正されたことも、障害者自立支援法に代わる新しい法律をどのようなものにするかということもそれと関連しているわけです。したがって新法に関する骨格提言の内容は、きわめて重要なことだと思います。
 

 どのような法律であっても、その法律は確かな理念に裏打ちされたものでなければなりません。障害者自立支援法は、その点が不十分であったといっても過言ではありません。



国の障害者施策の総合的な推進計画

   
 - 基本的枠組み -

 国は、障害者基本法に基づき、障害者施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、「障害者基本計画」を定めています。
 現行の障害者基本計画は、平成15年度から平成24年度までの10年間に講ずべき障害者施策の基本的方向について定めています。この基本計画の後期5年間における諸施策の着実な推進を図るため、平成20年度からの5年間に重点的に取り組むべき課題について、120の施策項目、57の数値目標とその達成期間等を内容とする「重点施策実施5か年計画」を定めています。

 また、内閣に障がい者制度改革推進本部を設置し、平成21年12月から当面5年間を障害者の制度に係る改革の集中期間と位置付け、
「障害者制度改革の推進のための基本的な方向について」(平成22年6月29日閣議決定)等に基づいて、障害者の権利に関する条約(仮称)の締結に必要な国内法の整備を始めとする我が国の障害者に係る制度の集中的な改革の推進を図っています。

内閣府:障害者基本法



文部科学省:児童福祉法等の改正による教育と福祉の連携の一層の推進について 事務連絡 平成24年4月18日



2012(平成24)年2月2日 自立支援法に代わる新法の原案を厚生労働省が示す  

 2012(平成24)年2月7日、障害者自立支援法に代わる新法の原案が厚生労働省より示された。法案は3月中旬に国会に提出する予定とのこと。新聞の報道では詳細は不明であるが、新しい法案ではなく、障害者が起こした「自立支援法は違憲」だとする訴訟の和解協議で政府は自立支援法の廃止を約束したにもかかわらず、廃止ではなく法の改正で対応する内容のようである。また新法に関する骨格提言を尊重したものでもないようで、当然批判が噴出することになると思う。今後を注視。


◆自立支援法の廃止見送り
  民主、厚労省案を一部修正  
2012(平成24)年2月22日 朝日新聞

 新法に向けた提言を受け、厚労省がこれをもとに現行法の改正案を示したものの、自立支援法を廃止し、新法にするのではなく法の改正案であることと、提言内容が反映されていないことから障害者らの反発を受け、新しい障害福祉サービスを議論している民主党の作業チームは21日、将来の見直し規定を盛り込むなど、厚労省案に一部修正を加えた障害者自立支援法改正案をまとめたが、法改正で対応する方針は維持し、公約した同法の廃止は見送る形になった。また、「提言実現を目指す観点から、引き続き段階的・計画的に取り組む」との内容を、法の付則に明記するか、国会で付帯決議する方向だ。
 厚労省は「法の名称や理念も変えるので事実上の廃止だ」と説明している。

 野田政権は自立支援法改正案を3月中旬に閣議決定し、通常国会での成立をめざす。同法を与党として制定した自民・公明両党は、同法の廃止には反対の立場。民主党は、廃止でなく法改正手続きで対応することで、国会審議で自公の協力を引き出したい考えだ。

※法の名称は「障害者総合福祉法」ではなく、「障害者生活総合支援法」となるようだ。


◆障害者自立支援法改正案を閣議決定
    公約の「廃止」見送り   
2012(平成24)年3月13日 朝日新聞夕刊
 野田内閣は13日、障害者福祉サービスを定めた今の障害者自立支援法を改正し、名称も変える「障害者総合支援法」を閣議決定した。新たに障害者の範囲に難病患者を加えることなどが柱。今国会での成立を目指す。

 法案は基本理念として、障害者がどこでだれと生活するかを選択する機会を保障することを明記。対象に難病患者を追加した。今の障害程度に応じた区分など、福祉サービス支給決定の仕組みや障害者支援のあり方を、施行後3年をめどに見直すことにしている。

 今の障害者自立支援法をめぐっては、サービス利用者に1割の定率負担を求める「応益負担」とした点に、障害者らから強い反発が起き、各地で訴訟も起きた。民主党は同法廃止を公約し、政権交代後も新法について検討を進めた。
 ただ、「応益負担」はすでに見直されているうえ、現行法を廃止した場合、自治体が支給手続きをやり直す必要があり、現場が混乱するなどの理由から、廃止を断念した。


※法案の基本理念に「障害者がどこでだれと生活するかを選択する機会を確保することを明記」とあるが、一見もっともらしく思われることであっても、こうした内容を法に盛り込むことは、判断能力に問題のある障害を有する場合を考えると、むしろ弊害もありうることを考慮する必要がある。


障害者自立支援法は改正され、法律名は「障害者総合支援法」に変更し、
2013(平成25)年4月から施行


法の概要(PDF) 
※障害者総合支援法の正式名称は、「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」です。






障害者自立支援法から障害者総合支援法へ


「障害者自立支援法」から「障害者総合支援法」へ
障害者の生活を総合的に支援するということは
障害児教育の義務制の実施と障害者福祉
障害者総合支援法施行3年後の検討規定について

◆障害者総合支援法見直しWGが発足
◆障害福祉事業所介護サービス可





「障害者自立支援法」から「障害者総合支援法」へ

 厚生労働省は、「障害者自立支援法は違憲」とする集団訴訟の原告である障害者らとの和解の合意文書で自立支援法を廃止して新しい法律を制定するとの確約をしました。  
 その後、障害当事者等(55名)で構成される制度改革推進会議の部会によって、和解の合意文書及び障害者権利条約を指針に障害者自立支援法に代わる新法の骨格に関する提言が平成23年8月末にまとめられました。

 この提言の内容は、政府が障害者権利条約の批准に向けて法整備を進めていることとも関連するわけで重要だったはずです。ところが新しい法律案として示されたのは提言を尊重したものではなく、現在の自立支援法の一部を見直し、法律名を「障害者自立支援法」から「障害者総合支援法」に変更し、制度の本格的見直しは先送りにする法の改正案でしかないということから批判が相次ぎました。
 しかし法案は、2012(平成24)年3月13日に国会に提出され、翌月の4月26日に衆議院を通過し、翌々月の6月20日の参議院本会議で、民主、自民、公明各党の賛成多数により可決、成立しました。
 法の公布は同月27日で、法の施行は一部を除き、2013(平成25)年4月からです。

 報道等によれば、厚生労働大臣は、法案の趣旨について、「地域社会での共生の実現に向けて新たな障害保健福祉施策を講ずるためである」との説明を行い、自立支援法の廃止の約束に関する質問には、「法律の名称を自立支援法から総合支援法に変えて、基本理念を新たに掲げ、法の根幹を変えたので廃止になる」とし、法の問題点の先送りについての質問には「一度にはやれないので、計画的に進めたい」と説明したそうです。
 新法だとする法律の内容が提言を尊重したものでなく、問題点を先送りにするようなものであれば、それは新法の制定ということにはならないわけで、国との約束を交わした訴訟団が、「国は約束を守らなくてよいのか」と憤慨するのは至極当然のことだといってよいでしょう。

厚生労働省:障害者自立支援法違憲訴訟に係る基本合意について

障害者自立支援法違憲訴訟原告団・弁護団と国(厚生労働省)との基本合意文書(平成22年1月7日)


厚生労働省「障害者自立支援法の施行前後における利用者の負担等に係る実態調査結果について」(平成21年11月26日公表)




障害者の生活を総合的に支援するということは

 「自立支援法を総合支援法という法律名に変えて、基本理念を新たに掲げたので、自立支援法は廃止になる」という言い分は子供だましのようです。基本理念を新たに掲げたということは、障害者自立支援法は理念なき法律だったということになると思います。

 新たに掲げた基本理念とは、「日常生活又は社会生活の支援は、全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会を実現するため、障害児者が生活を営む上で障壁となるものの除去に資することを旨とし、総合的かつ計画的に行わなければならない」というような内容です。

 確たる理念もないままに法律名に「自立」や「福祉」ということばを使用するのはやめて、共生社会の実現に向けて障害者の生活を総合的に支援する法律に改正したということを強調しているようですが、障害の有無にかかわらず人それぞれの人生があるわけですから、それがかけがいのないものとして尊重されなければ共生社会の実現などありえません。重要なことは一体どのように尊重するのかということです。
 障害児者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するというのであれば、その日その時の目先の支援だけでなく、その大前提として、人の一生をどのように考えるかということがなければなりませんし、それが重要です。




障害児教育の義務制の実施と障害者福祉

 戦後日本の教育・福祉はそれなりに充実発展し、障害児の学校教育も義務制となりました。しかし学校を卒業後の就労や生活、さらにその老後に至る「親亡き後」の暮らしを概観すれば、その道筋は依然として未整備のままの状況が続いています。それは障害の有無にかかわらず人の一生をどのように考えるかという視点が欠けているからだと思います。

 障害をどのように受容し、学校卒業後の生活をどのように見据え、そのための教育をどのように考えるかということが大切なわけですが、そこに教育施策と福祉施策の連携の重要性があり、そのための問題・課題があると思います。




障害者総合支援法施行3年後の検討規定について

 2013(平成25)年4月から施行(法の一部を除く)された障害者総合支援法は、附則に「障害者施策を段階的に講じるため、法の施行後3年を目途に検討する」として、次のことを規定しています。

①常時介護を要する障害者等に対する支援、障害者等の移行の支援、障害者の就労の支援その他の障害福祉サービスの在り方
②障害支援区分の認定を含めた支給決定の在り方
③障害者の意思決定支援の在り方、障害福祉サービスの利用の観点からの成年後見制度の利用促進の在り方
④手話通訳等を行う者の派遣その他の聴覚、言語機能、音声機能その他の障害のため意思疎通を図ることに支障がある障害者等に対する支援の在り方
⑤精神障害者及び高齢の障害者に対する支援の在り方
 ※政府は、前項の検討に当たっては、障害者やその家族その他の関係者の意見を反映させる措置を講ずるものとする。

 検討するというこれらの内容は、現状の障害者支援においてはむろん大切なことです。言い換えれば、当然大切で必要なことがようやく検討段階に入ったということになります。

①の障害者の就労の支援の在り方についていえば、 「就労移行支援事業」「就労継続支援事業(A型・B型)」は実情に即しているとは言い難く、やはり見直しが必要だと思います。特に特別支援学校を毎年度卒業する生徒の実態を踏まえた支援でなければならないと思います。
 なお工賃の倍増計画などは、そうした努力はすべきだとは思いますが、単に工賃を倍増すればよいという問題ではないということも認識すべきだと思います。

②の障害支援区分の認定を含めた支給決定の在り方とは、これまでの障害程度区分を障害支援区分に改めるということですが、そもそもの障害程度区分の認定自体に無理があったわけです。事前の段階で意見の言える専門家は誰もかかわってはいなかったのでしょうか。

③の成年後見制度利用促進の在り方については、措置制度から契約制度への移行時点からの問題です。
 
 厚生労働省:障害者の意思決定支援・成年後見制度の利用促進の在り方について 平成27年3月3日
 成年後見制度の利用促進について

④意思疎通を図ることに障害がある障害者等に対する支援などは、支援の対象が発達障害や難病等も含むものであればいうまでもないことです。

⑤の高齢の障害者に対する支援の在り方は、いわゆる「親亡き後」とも関連する古くからの問題です。介護保険サービスの対象年齢になった場合の支援に関する対応にも問題があります。

 はたして以上のようなことを含めて、法に基づく施策が今後どのように展開していくのか、まずは期待したいと思います。法に対する附帯決議も注目しておくべきことだと思います。



厚生労働省 : 障害者総合支援法が施行されました
  
<法律の概要><衆議院附帯決議><参議院附帯決議>


◆障害者総合支援法見直しWGが発足  2014(平成26)年12月22日 週刊福祉新聞
 障害者総合支援法の付則にある「施行3年後の見直し」に向け、厚生労働省は15日、論点整理をするためのワーキンググループ(WG、座長=佐藤進・埼玉県立大名誉教授)を立ち上げた。来年4月をめどに論点を整理。それを基に社会保障審議会障害者部会で議論する。

 総合支援法には検討規定があり、施行後3年(2016年4月)をめどに見直すこととされている。(見直すこととされている項目は前掲参照)
 有識者7人のWGで議論するには広範囲なため五つのうち「常時介護」「意思疎通支援」「高齢障害者支援」の三つは各作業チームを設けて議論する。ただ、WGが担うのはあくまでも論点整理で、障害者部会に示す前に論点を絞ったり方向付けをしたりすることには踏み込まない。まずは、障害当事者や関係者らにヒアリングし議論する予定だ。

厚生労働省:障害者総合支援法施行3年後の見直しについて(案)
   「社会保障審議会 障害部会 報告書」 平成27年12月14日(PDF)


平成28年5月25日 障害者総合支援法改正法案成立<法律案の概要>(PDF)

 政府は、平成28年3月1日に障害者総合支援法を改正するための法律案を閣議決定し国会に提出。法案には附帯決議として、衆議院で10項目、参議院で17項目が決議され、5月25日に可決・成立。法の施行は一部を除き平成30年4月1日から。 
 この改正法案は、「法の施行3年後の見直し」規定に沿って検討を加えたものということになりますが、障害者関係団体からは、またも「提言」は無視され、改正より改悪に向かっているとして抗議の声明が出された。


◆障害福祉事業所介護サービス可
   厚労省18年度導入目指す
   
2016(平成28)年9月14日 朝日新聞
 高齢になった障害者が通い慣れた障害福祉サービス事業所でも介護サービスを受けられるように、厚生労働省は事業所の指定基準などを見直す方針を固めた。高齢者と障害者向けのサービスを一体化させる「共生型サービス」(仮称)として、2018年度の導入を目指す。
 対象となるのはディサービスやショートステイなど。現行では障害福祉事業所より介護事業所の方が指定基準が厳しく、障害福祉事業所の指定だけでは介護保険のサービスを提供できない。その結果、障害のある人は高齢になると介護事業所に移らないと介護サービスを受けられなくなる。
 一方、 障害のある人が介護事業所でサービスを受ける場合、 市町村長の判断で障害福祉サービスも受けられるが、事業所への報酬額は低い。 共生型サービスではこうしたケースも例外扱いせず利用しやすくする。
 障害者も高齢者も子どもも一体となった地域作りを進める「地域共生社会」の実現に向けた取り組みの一環。 人口減が進む中、別々にサービスを提供するよりも定員の空きが出にくいといったメリットもある。今後、社会保障審議会(厚労省の諮問機関)の介護給付費分科会などで議論する。  

(水戸部六美 河合達郎)







障害者権利条約の批准と国内法の整備

《障害者の権利条約の締結に向けた国内法の整備》






《障害者の権利条約の締結に向けた国内法の整備》



■2013(平成25)年12月4日:
 障害者の権利に関する条約の批准を国会が正式に承認

 2007(平成19)年9月には、日本もこの条約に外務大臣が署名し、批准に向けて国内法令の整備を進めてきたわけですが、条約に署名するということは、条約に賛同し、条約を批准する意思を表明する行為です。 
 条約の批准は、国として条約に拘束されることを正式に同意することであり、国会の承認が必要です。


外務省 : 「障害者の権利に関する条約」の批准書の寄託

1 平成26年1月20日(現地時間)ニューヨークにおいて、我が国は、「障害者の権利に関する条約」(以下「本条約」という。)の批准書を国際連合事務総長に寄託しました。これにより、本条約は、本年2月19日に我が国について効力を生ずることとなります。

2 本条約は、障害者の人権や基本的自由の享有を確保し、障害者の固有の尊厳の尊重を促進するため、障害者の権利を実現するための措置等を規定しています。

3 本条約の締結により、我が国において、障害者の権利の実現に向けた取組が一層強化され、人権尊重についての国際協力が一層推進されることとなります。

 「障害者の権利に関する条約」  

1 平成18年12月13日に国連総会で採択。平成20年5月3日に発効。
2 締約国は140か国及び欧州連合(平成26年1月20日時点)。
3 我が国は、平成25年12月4日に、締結のための国会承認を得た。
本条約が我が国で効力を生ずるのは、本条約の規定に従い、平成26年1月20日の批准書の寄託から30日目の日である平成26年2月19日となる。


外務省:障害者の権利に関する条約  和文/説明書/条約の趣旨と国内の取り組み



《障害者の権利条約の締結に向けた国内法の整備》

改正障害者基本法   障害者基本法の一部を改正する法律 <法律の概要>

障害者虐待防止法 (障害者虐待の防止、障害者の養護者に対する支援等に関する法律)
 平成23年6月17日成立。同6月24日公布・平成24年10月施行<法律の概要>


障害者総合支援法 (障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律):
 平成24年6月20日成立。同6月27日公布・一部を除き、2013(平成25)年4月施行、平成26年4月全面施行


障害者差別解消法 (障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律):
 平成25年6月19日成立。同6月26日公布・平成28年4月施行


※国内法の整備が今後の教育や福祉、就労及び雇用などに具体的にどのようにかかわってくるのかについては注視すべきことです。


厚生労働省:平成26年7月16日 障害児支援の在り方に関する検討会
   今後の障害児支援の在り方について(報告書) ~「発達支援」が必要な子どもの支援はどうあるべきか~ (PDF)
  今後の障害児支援の在り方について(報告書のポイント)


内閣府:障害者基本計画(第4次)平成30年3月
   第4次障害者基本計画 概要

障害者の権利条約と「合理的配慮」について
日本の障害者施策と「障害者権利条約」の批准について





社会福祉法人制度改革に向けて

厚生労働省「社会福祉法人制度の在り方について」
◆退職手当共済 障害福祉分野の助成廃止 社会福祉法人改革で
◆障害者福祉 報酬減額へ
厚生労働省:平成27年度障害福祉サービス等報酬改定の概要
厚生労働省:社会保障審議会福祉部会報告書「社会福祉法人制度改革について」
厚生労働省:社会福祉法人制度改革について

《社会福祉法等の一部を改正する法律案と附帯決議》
《社会福祉法の改正案と社会福祉法人制度改革の主な論点》
《改正社会福祉法の成立と社会福祉法人制度改革の意義と課題》




厚生労働省 : 社会福祉法人の在り方等に関する検討会報告書
     「社会福祉法人制度の在り方について」 平成26年7月4日
(PDF)


◆退職手当共済 障害福祉分野の助成廃止 社会福祉法人改革で  2014(平成26)年12月8日 週刊福祉新聞
 厚生労働省は11月19日、社会福祉施設職員等退職手当共済制度について、障害者施設・事業への公費助成を廃止する考えを社会保障審議会福祉部会に示した。経営主体が多様化し、社会福祉法人にのみ助成する理由が乏しくなったと判断した。委員からは反対する意見があったが、厚労省は社会福祉法人改革の一環として2015年中の法改正を目指す。
 公費助成を廃止すると社会福祉法人の負担する掛け金が増える。厚労省は障害福祉サービスなどの報酬(公定価格)にその負担増分を反映する方針。既加入職員の掛け金には、法改正後も公費助成する経過措置を設ける。


<社会福祉施設職員等退職手当共済制度とは>
 福祉医療機構を実施主体とし、福祉施設を経営する社会福祉法人が任意で加入する。公立の福祉施設職員との待遇格差を埋めるため、1961年に開始。国と都道府県が掛け金の3分の1(14年度は約250億円)ずつ助成し、残り3分の1を法人が負担する。
 公費助成対象の4割を保育所が、3割を障害分野が占める。
 今年4月1日現在の被共済職員数は約78万人。13年度の退職手当支給総額は約942億円。


◆障害者福祉 報酬減額へ 事業者向け1%前後 2015(平成27)年1月7日 朝日新聞

 政府は、障害者への福祉サービスを提供する事業者に対し、主に税金から支払う報酬を2015年度から引き下げる方向で最終調整に入った。介護事業者に支払う「介護報酬」を引き下げるのに合わせ、増え続ける社会保障費の伸びを抑えるねらい。福祉の現場で働く人の賃金にあてる報酬は引き上げる方針だ。

 障害者施設でのサービスや、障害者の自宅でのサービスにかかる費用は、国が定める公定価格の「障害福祉サービス等報酬」に基づき、国や地方自治体が事業者にお金を支払う。所得に応じてサービス利用者が一部を負担する場合もある。

 14年度の国の負担は約9千億円。利用者数は08年の約40万人から14年は70万人近くに増えており、15年度は国の負担も約1兆円に増える見通しだ。財務省や厚生労働省などは事業者向けを1%前後引き下げる方向で調整している。報酬制度が始まった06年以来3年ごとに見直してきたが、マイナスとなるのは初めて。

 財務省によると、事業者が実際にサービスに使っている費用より公定価格の方が高く、事業者の実質的な「もうけ」は過大だという。同省の試算では、障害福祉サービスの事業者では、企業の利益率にあたる「収支差率」が12%程度あり、介護事業者(8.7%)より多い。このお金をサービスの充実や職員の賃金に回せば、事業者への報酬を下げても障害者へのサービス切り下げにはつながらないとみている。


 
一方、現場で働く職員は月額1万円程度の賃上げになるよう、賃金向けの報酬である「処遇改善費」をつける。

◆障害福祉サービス等の報酬改定
 厚生労働省は、「経済財政運営と改革の基本方針2014」において、「平成27年度報酬改定においては、サービス事業者の経営状況等を勘案して見直す」とされていることを踏まえた、サービスの適正実施等の観点からの所要の見直しを行い、 2015年度の障害福祉サービス等報酬改定の概要を平成27年2月12日付で公表した。

 障害者の「生活介護」報酬減 職員給料は改善へ  2015(平成27)年2月13日 朝日新聞
 障害が重い人向けの報酬を手厚くする一方、施設などでの食事や入浴を支援する「生活介護」は基本報酬を引き下げる。
 福祉サービスの報酬は主に税金で賄われ、介護保険サービスの報酬と同じく、ほぼ3年ごとに改定する。2000年以降、増額され続けてきた。15年度の予算編成では、職員の給料が月1万2千円上がるように待遇改善加算を上積みする一方、それ以外の報酬を1.78%分減らし、全体では「据え置き」と決まった。
 報酬を増やすのは、障害が重い人向けのグループホームでのサービスや訪問介護など。退院支援などに新たな加算を設ける。一方、施設などでの食事や入浴を支援する「生活介護」の基本報酬を減らすのは、経営実態調査で企業の利益率にあたる「収支差率」が13.4%と高かったからだ。
 障害福祉の予算は利用者の増加を背景にこの10年間で2倍以上になり、今年度に当初ベースで初めて1兆円を突破した。厚労省の担当者は「基本報酬をここまで幅広く切り下げたのは初めて。これまでのように予算の増額によってサービスの充実を図るのは難しくなっている」と話す。   

         (中村靖三郎)   


厚生労働省:平成27年度障害福祉サービス等報酬改定の概要

 
厚生労働省 : 社会保障審議会福祉部会報告書
   「社会福祉法人制度改革について」 平成27年2月12日(PDF)


厚生労働省:社会福祉法人制度改革について(PDF)



《社会福祉法等の一部を改正する法律案と付帯決議》



■社会福祉法等の一部を改正する法律案平成27年4月3日提出
法律案の概要(PDF)


 社会福祉法等の一部を改正する法律案の提出理由(第189回国会)/内閣法制局

<提出理由>

 閣法第67号
 閣議決定日:平成27年4月3日

 国会提出日:平成27年4月3日

 衆議院

社会福祉法等の一部を改正する法律案

 福祉サービスの供給体制の整備及び充実を図るため、介護福祉士の資格の取得に関する特例等について定め、社会福祉施設職員等退職手当共済の退職手当金の額の算定方法を変更する等社会福祉事業等に従事する者の確保を促進するための措置を講ずるとともに、社会福祉法人に評議員会の設置を義務付ける等社会福祉法人の管理に関する規定を整備し、社会福祉法人が社会福祉事業及び公益事業を行う場合の責務について定める等の措置を講ずる必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。


◆社会福祉法改正案が衆院を通過
 付帯決議は10項目も
  2015(平成27)年8月10日 週刊福祉新聞

 社会福祉法人改革を柱とした社会福祉法改正案が7月31日、衆議院本会議で可決された。2016年度の決算でいわゆる余裕財産のある社会福祉法人には、地域貢献などを盛り込んだ社会福祉充実計画の策定と実施を17年度から義務付ける。参議院に送られ、今国会で成立する見通しだ。
 民主党は修正案を提出したが否決された。一方、経営組織の強化をめぐる小規模法人の負担増を踏まえ、必要な支援をするように政府に求めるなど10項目の付帯決議がついた。


社会福祉法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議 : 衆議院 https://www.shugiin.go.jp/


 政府は、本法の施行に当たり、次の事項について適切な措置を講ずるべきである。

一 社会福祉法人の経営組織のガバナンスを強化するには、評議員、理事等の人材の確保や会計監査人の導入等、新たな負担も懸念される。このため、特に小規模の法人については、今後も安定した活動ができるよう、必要な支援に遺憾なきを期すこと。

二 いわゆる内部留保の一部とされる「社会福祉充実残額」を保有する社会福祉法人が、社会福祉充実計画を作成するに当たっては、他産業の民間企業の従業員の賃金等の水準を踏まえ、社会福祉事業を担う人材の適切な処遇の確保に配慮することの重要性の周知を徹底すること。

三 事業の継続に必要な財産が確保できない、財産の積み立て不足が明らかな法人に対しては、必要な支援について検討すること。

四 地域公益活動の責務化については、待機児童、待機老人への対応など本体事業を優先すべきであり、社会福祉法人の役割と福祉の公的責任の後退を招くことのないようにすること。社会福祉法人設立の主旨である自主性と社会福祉事業の適切な実施に支障を及ぼすような過度の負担を求めるものではないことを周知徹底すること。

五 所轄庁による社会福祉法人に対する指導監督については、一部の地域において独自の取扱いが散見されるとの指摘もあることから、国の基準を一層明確化することで標準化を図ること。

六 現下の社会福祉施設における人材確保が困難な状況に鑑み、介護報酬、障害福祉報酬の改定による影響を注視しながら、職員の処遇の実態を適切に把握した上で、人材確保のための必要な措置について検討を行うこと。

七 社会福祉施設職員等退職手当共済制度の公費助成廃止に当たっては、職員確保の状況及び本共済制度の財務状況の変化を勘案しつつ、法人経営に支障が生じないよう、障害者支援施設等の経営実態等を適切に把握した上で報酬改定を行うなど必要な措置を講ずるよう検討すること。

八 准介護福祉士の国家資格については、フィリピンとの間の経済連携協定との整合を確保する観点にも配慮して暫定的に置かれたものであることから、フィリピン政府と協議を進め、当該協議の状況を勘案し、准介護福祉士の名称、位置付けを含む制度の在り方について検討を行い、所要の措置を講ずること。

九 介護職員の社会的地位の向上のため、介護福祉士の養成施設ルートの国家試験義務付けを確実に進めるとともに、福祉サービスが多様化、高度化、複雑化していることから、介護福祉士が中核的な役割及び機能を果たしていけるよう、引き続き対策を講じること。

十 介護職員の処遇については、正規・非正規、フルタイム・パートタイム等にかかわらず、均等・均衡待遇を確保するよう努めること。 





《社会福祉法の改正案と社会福祉法人制度改革の主な論点》

社会福祉法の改正案と社会福祉法人制度改革の主な論点

①経営組織のガバナンスの強化
 ・議決機関としての評議員を必置
 ・役員、理事会、評議員会の権限及び責任に係る規定及び理事等の選任の制限に係る規定の整備
 ・一定規模以上の法人への会計監査人の導入 等
②事業経営の透明性の向上
 ・閲覧対象書類の拡大と閲覧請求者の国民一般への拡大
 ・財務諸表、現況報告書(役員報酬総額、役員等関係者との取引内容を含む)、役員報酬基準の公開に係る規定の整備 等
③財務規律の整理
 ・適正かつ公正な支出管理の確保
 ・いわゆる内部留保の明確化 
 ・社会福祉事業等への計画的な再投資 
④地域における公益的取組を実施する責務
 ・社会福祉事業又は公益事業を行うに当たり、日常生活又は社会生活上支援を要する者に対する無料又は低額の料金で福祉サービスを提供することを責務として規定
⑤行政の関与の在り方
 ・所轄庁による指導監査の機能強化、国・都道府県・市の連携 等

※「社会福祉法等の一部を改正する法律案」は国会の会期が延長される中で7月31日に衆議院で可決。参議院に送られたが、継続審議となり、国会は9月27日に閉幕となった。


◆社会福祉法改正案が参院で可決 15項目の付帯決議を掲載 2016(平成28)年3月28日 週刊福祉新聞


(参考資料) 厚生労働省:社会福祉法人制度改革について





《改正社会福祉法の成立と社会福祉法人制度改革の意義と課題》

■2016(平成28)年3月31日:改正社会福祉法成立・公布
(施行期日は改正事項によって異なる)


厚生労働省:社会福祉法等の一部を改正する法律の公布について(通知)



《社会福祉法人制度改革に関する厚生労働省の説明についての疑問》


■厚生労働省は、社会福祉法人制度改革に関連して、「地域公益活動の責務化は法人の本旨を明確化したもの」「充実残額の算出を容易にするソフトを開発して配布し、小規模法人を支援する」「充実残額を職員処遇改善に充てる場合は充実計画に位置付けることになる」「大規模法人の会計監査人費用は法人が負担する」などと説明。

■改革はよいとしても、そもそも社会福祉法人制度とは何かということと、福祉サービスの供給体制の整備と充実を図るため、という点においては、確かな見解に基づく改革といえるのかどうか、公的責務の在りようについてなどは矛盾や疑問を伴う改革といえる。

 例えば、厚生労働省は、平成26年5月29日に社会福祉法人は非営利の公益性の高い社会的責任の大きい法人であるということから、「社会福祉法人の認可についての」一部を改正している。これにより現在、社会福祉法人は経営に関する財務諸表等をホームページ等で公表することが義務付けられている。
 したがって一定規模以上の法人への会計監査人の導入については、一見筋が通っているようであるが、そのための手間や費用等のことを考えるとはなはだ不合理なことではないだろうか。
 社会福祉法人は公費を原資として事業を行っているわけであり、財務諸表等をホームページ等で公表することが義務付けられているわけであるから、これまでのように所轄庁による指導監査を効果的・効率的に強化する方向で考えるのが本来ではないだろうか。今後の動向を注視。




■平成30年11月2日:厚生労働省社会・援護福祉基盤課より各都道府県・指定都市・中核市の社会福祉法人担当課(室)宛発出「社会福祉法人における会計監査人に係る調査と平成31年4月の引き下げ延期について(周知)」
 平成31年4月から会計監査人の設置基準を引き下げることは行わないこととしましたので、管内の当該法人に周知をいただくようお願いいたします。(関係団体には厚生労働省から直接連絡しています。)

社会福祉法人を取り巻く現状と課題


■ 改正社会福祉法の施行
  2017(平成29)年4月1日 改正社会福祉法の施行により社会福祉法人制度が大きく変わることになりました。

社会福祉法人制度改革について(PDF)






社会福祉法人制度改革の意義と課題を考えるポイント

①なぜ社会福祉法人制度が創設されたかという点が、今後の社会福祉法人の存続にかかわる問題を考える上で重要だと思います。
 
社会福祉法人の事業経営は、社会福祉法人制度の創設以来、措置委託制度(措置制度)とともにあったわけですが、それはなぜかというところに重要な意味がある。
②社会福祉法人が担ってきた事業内容の特徴を一般的な営利事業との比較においてどのように理解するかという点が重要だと思います。
 
社会福祉法人がこれまで担ってきた事業とはどのようなことか、何のために、なぜ行ってきたのかという点が重要。
③社会福祉法人を取り巻く状況はなぜ、どのように変化してきたか、を考えることが重要だと思います。
 
終戦当時の状況から現在に至るまでの社会的変化についての理解が、社会福祉法人を取り巻く現在の諸問題を考える上できわめて重要であり、そのためには社会福祉基礎構改革の考え方を検証することが重要。
④社会福祉法人の事業経営をめぐってどのようなことが、なぜ問題視されたのか、を考えることが重要だと思います。
⑤社会福祉事業とは何か、を改めて考えてみることだと思います。









障害者差別解消法の施行
《障害者差別解消法の施行と改正法のポイント》

◆バリアフリー教育充実「共生社会」実現目指す
■神奈川県相模原市の障害者施設「津久井やまゆり園」で殺傷事件発生
◆介護・育児・障害者福祉 窓口18年度一元化
◆重症心身障害児向け施設 全市区町村に設置目標 厚労省
■旧優生保護法による強制不妊手術を受けた60代の女性が国賠提訴
■中央省庁、地方自治体の障害者雇用数の水増し発覚






《障害者差別解消法の施行と改正法のポイント》



■2016(平成28)年4月 1日:障害者差別解消法の施行
 平成26年6月、「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(障害者差別解消法)」が制定され、平成28年4月1日から施行。この法律は障害者団体等からの意見を踏まえたもので、法の附則に、「政府は、この法律の施行後3年を経過した場合の状況について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に応じて所要の見直しを行うものとする」という趣旨の検討規定を設けており、これにより政府は、2019年に内閣府の障害者政策委員会において見直しの検討を行い、同法の改正案を2021(令和3)年の通常国会に提出し、同年5月に改正法が成立した。

《障害者差別解消法の改正ポイント》
①国及び地方公共団体の連携協力の責務の追加
 国及び地方公共団体は、障害を理由とする差別の解消の推進に関して必要な施策の効率的かつ効果的な実施が促進されるよう、適切な役割分担を行い、相互に連携を図りながら協力しなければならない。
②事業者による社会的障壁の除去の実施に係る必要かつ合理的な配慮の提供の義務化
 事業者による社会的障壁(障害がある者にとって日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような事物、制度、慣行、観念その他の一切のもの)の除去の実施に係る必要かつ合理的配慮の提供について、現行の努力義務から義務へと改める。
③障害を理由とする差別を解消するための支援措置の強化
 障害を理由とする差別を解消するための支援措置の強化策の実施に関する基本的な事項を追加し、国及び地方公共団体が障害を理由とする相談に対応する人材を育成または確保する責務を明確化する。地方公共団体は、障害を理由とする差別及びその解消のための取り組みに関する情報(事例等)の収集、整理及び提供に務める。
④改正法の施行期日
 公布日(令和3年6月4日)から3年を超えない範囲内において政令で定める日

内閣府:障害を理由とする差別の解消の推進 
日本の障害者施策と「障害者権利条約」の批准について


◆バリアフリー教育充実「共生社会」実現目指す
   東京五輪向け推進
   2016(平成28)年7月15日 朝日新聞
 
政府は2020年東京五輪・パラリンピックに向け、障害のある人もない人も支え合って生きる「共生社会」の実現を目指す計画をまとめた。計画は、東京五輪を「成熟社会における先進的な取り組みを世界に示す契機で、我が国が共生社会に向けた大きな一歩を踏み出すきっかけにしたい」と位置づけた。

内閣府:共生社会政策 
 国民一人一人が豊かな人間性を育み生きる力を身に付けていくとともに、国民皆で子供や若者を育成・支援し、年齢や障害の有無等にかかわりなく安全に安心して暮らせる「共生社会」を実現することが必要です。
 このため、内閣府政策統括官(共生社会政策担当)においては、社会や国民生活に関わる様々な課題について、目指すべきビジョン、目標、施策の方向性を、政府の基本方針(大綱や計画など)として定め、これを政府一体の取組として強力に推進しています。
 


■2016(平成28)年7月26日
神奈川県相模原市の障害者施設「津久井やまゆり園」で殺傷事件発生

 この施設に勤務していた元職員が、平成28年7月26日未明、刃物を持って侵入し、「障害者は生きていてもしょうがない」として、 「意思疎通できぬ人を刺した」という事件で、19人が死亡し、27人が負傷した。この事件では、 亡くなった19人を悼むとともに、 元職員の障害者に対する偏見や優生思想、責任能力や措置入院のこと、再発防止策に関することなどが問題となりました。
相模原市 障害者施設の殺傷事件を考える


◆介護・育児・障害者福祉 窓口18年度一元化 2017(平成29)年2月7日 朝日新聞(1面)

法案きょう決定 障害者向けの福祉サービスを一体で受けられる「地域共生社会」づくりへ、厚生労働省は実現までの道筋を示す工程表をまとめた。2020年代初頭の全面実施を目標に、各制度の縦割りを段階的に排除。18年度から相談窓口を順次一元化し、障害者と高齢者の共通サービスを導入するため、7日に関連法案を閣議決定する。
 
3面=住民の協力カギ 複合的な福祉の課題に対応しやすくするとともに、人口減を見据えた効率化が狙い。希望する事業所が実施する。例えば育児と介護を同時に担う「ダブルケア」をしている人や、障害のある子どもがいる高齢の親などは、サービスを一体で受けやすくなる。障害福祉事業所にいた障害者は高齢になると介護事業所に移る必要があるが、18年度からは指定を受けた事業所ならそのまま利用できる。
 サービスの担い手は地域住民によるボランティアも想定。地域の事情に合ったサービスを進められる一方、サービス縮小への懸念もある。
 看護師や介護福祉士、保育士などの養成課程は21年度に一部共通化も進める。     (水戸部六美)


(3面) 福祉相談 窓口一元化に着手 地域住民の協力 カギ
 福祉の縦割りを排して一体で提供できるようにする「地域共生社会」導入に向けて、厚生労働省は先行して相談窓口の一元化に着手する。すでに実施している自治体では、住民同士の情報共有が進んでサービスが向上した。しかし、主役となる地域住民の理解がなければ実現は難しい。
困り事 自治体と共有
 地域の相談窓口はおおむね国の制度に沿い、介護は「地域包括支援センター」、障害者なら「相談支援事業所」などと分かれている。厚労省は法改正で、福祉サービスを一体的に担える体制づくりを各自治体に求める方針だ。
人材育成・財源 課題
 厚労省がまとめた工程表によると、福祉サービスを一体化させるの「地域住民が世代を超えてつながることで、生きがいのある地域を共につくる」という理念に基づく。
 目的はサービスを一体化するだけではない。例えば高齢者は、子育てを支援することで社会的な役割を持つことができる。子どもは高齢者とかかわることで、健全な成長につながる。こうした効果を期待している。
 課題も多い。住民と自治体をつなぐ専門職が少ない。気軽に相談できるボランティアや、複数の福祉サービスを提供できる人材づくりが必要。ボランティアとしてかかわる住民は精度の主役で、こうした住民の理解がなければ根付かせるのは難しい。職員を増やせば財源も必要になある。

(水戸部六美)


◆重症心身障害児向け施設
  全市区町村に設置目標 厚労省
  2017(平成29)年2月23日 朝日新聞
 重度の肢体不自由と知的障害が併せてある重症心身障害児が通える施設について、厚生労働省は2020年度末までに、すべての市区町村に少なくとも1カ所以上設置する目標を掲げる方針を決めた。3月にまとめる障害児福祉計画の基本指針に盛り込む。身近な場所に通える施設を設けることで、施設に入所することが多い重症心身障害児が自宅で過ごすことができるようになる。家族の負担も軽減される。

 重症心身障害児は医療的なケアが必要な場合もあり、対応できる施設として小学校入学前までの「児童発達支援事業所」や小学校入学後の「放課後等ディサービス事業所」の整備を予定している。
 昨年5月時点で重症心身障害児を受け入れている児童発達支援事業所は248カ所、放課後等ディサービス事業所は354カ所ある。全市区町村にそれぞれ1カ所以上設置して、全自治体数にあたる1700カ所以上にするという目標だ。

 都道府県と市区町村は18年度から、すべての障害者を対象にした障害者地域福祉計画だけでなく、18歳未満向けの福祉計画をつくることが義務づけられる。厚労省は、こうした計画に重症心身障害児が通える施設の整備も盛り込むよう各自治体に求める。

 重症心身障害児 重度の肢体不自由と重度の知的障害を併せ持った子ども。ほとんど寝たきりで食事も自力でできず、たんの吸引など医療サービスが必要な場合が多く、一般の障害児が通う施設では対応が難しい。18歳以上も含めた重症心身障害者は全国に約4万3千人いると推計される。


             
(井上充昌)



■2018(平成30)年1月
 旧優生保護法による強制不妊手術を受けた60代の女性が国賠提訴

 旧優生保護法(1948~96年)による強制不妊手術を受けた宮城県の60代の女性が国に謝罪と賠償を求め、全国で初めて仙台地裁に提訴。強制不妊手術の実態が明らかに。

優生思想と強制不妊手術


■2018(平成30)年8月
 中央省庁、地方自治体の障害者雇用数の水増し発覚

 障害者雇用促進法は、国や自治体、民間企業に一定割合以上の障害者雇用を義務づけているが、国の中央省庁、全国の自治体の多くが障害者雇用数を水増しし、対象外の職員を法定雇用率に算入していたことが明らかとなった。

障害者雇用率 省庁、自治体が水増し 不適切算入








働き方改革

厚生労働省:「働き方改革の実現に向けて

厚生労働白書平成30年版
―障害や病気などと向き合い、全ての人が、活躍できる社会に―






「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」が成立
(平成30年7月6日公布)


厚生労働省:「働き方改革」の実現に向けて

 2019(令和元)年4月より、働き方改革関連法の一部が施行されました。「働き方改革」の実現は、教育や福祉の事業に携わる人材の確保育成にも大きく関係し、障害者の就労支援にも関係することだと思います。
 福祉・介護の事業所で今問題となっているのは、職員の処遇改善加算をめぐる問題です。
 
《福祉人材の処遇改善加算について》
 これは福祉・介護の事業所の実際を本当に理解してのものなのでしょうか。福祉や介護の事業とはいっても、一つの組織として分担職務は多岐にわたります。連携したチームワークが大事です。この処遇改善加算の事務はとても煩雑で、実情を考慮したものとも思えません。そもそも煩雑すぎること自体が問題だと思います。
           
東社協 社会福祉法人経営者協議会調査研究会:
  福祉人材確保・育成・定着に関する調査報告書(令和元年5月)

 社会福祉法人東京都社会福祉協議会(東社協)の社会福祉法人経営者協議会調査研究会が都内に法人本部のある822の社会福祉法人を対象に行った調査結果をまとめた「福祉人材の確保・育成・定着に関する調査分析結果報告書」(令和元年5月)によれば、「処遇改善加算の課題」として、70.0%近い法人が処遇改善加算に対して否定的であることが確認されたとあります。
 その主な理由は、「 処遇改善加算の対象職種が限定されている 」「職種間の給与バランスが崩れる」「加算取得のための事務手続きが煩雑」というもので、具体的には人事異動に支障が出るほか、不公平・格差を解消するための法人の持ち出しは経営を圧迫するということです。こうしたことに対する注目すべき意見として「介護報酬全体を引き上げて、それをどう使うかは法人の裁量にまかせてもらえないか」「基本報酬単価を上げて、即刻廃止すべき」ということを挙げています。

厚生労働省:
  
「福祉・介護職員等特定処遇改善加算に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式の提示について」(令和元年5月17日)
 厚生労働省は、各都道府県、指定都市、中核市の障害福祉主管部(局)長宛通知「福祉・介護職員等特定処遇改善加算に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式の提示について」(令和元年5月17日)を発出しました。

 特定処遇改善加算は、「勤続10年以上の介護福祉士について月額平均8万円相当の処遇改善を行うことを算定根拠に、他の障害福祉人材についても、介護人材と同様の処遇改善を行う」としていますが、加算に関する事務処理は煩雑です。「煩雑であること自体が問題」だという認識がなければ、根本的な処遇改善にはならないと思います。「処遇改善加算」などという言い方がいつまでも続くのも本当の改善ではない。


 福祉・介護人材の処遇改善加算は、根本的な問題の改善や解決にはならず、財源問題の解決にもならない無駄を繰り返しているに過ぎない。それは政治的貧困や歪みによるものだといって過言ではないと思います。こうした無駄を繰り返さない文化国家を目指してほしいと思います。


■2019(令和元)年7月9日
  平成30年版 厚生労働白書が公表されました

 厚生労働省は2019(令和元)年7月9日、「平成30年版 厚生労働白書」を公表しました。この白書には「障害や病気などと向き合い、すべての人が活躍できる社会に」というサブタイトルがついています。
 厚生労働大臣は、白書の刊行に当たって「この白書が、包摂と多様性がもたらす持続的な社会の発展に向けて、理解や議論を深めていただく一助となることを願っています。」と記しています。
 確かに物事を進める上で理解や議論を深めるというのは大切なことだと思います。

厚生労働省:平成30年版 厚生労働白書
  
 ―障害や病気などと向き合い、全ての人が活躍できる社会にー (全体版)

「平成30年版 厚生労働白書」を考える
 
「一億総活躍社会」などという政策標語を掲げ、「全ての人が活躍できる社会に」などとはぐらかすようなことのないまっとうな考え方や取り組みこそがいま求められているはずです。
 ひびきはよくても、問題の本質をはぐらかすような誇大な政策標語だけが先行するようなことのない、社会福祉と社会保障の関係をしっかりと踏まえた文化国家としての確かな政策に期待したいと思います。




厚生労働省:障害者福祉施策の動向について 

(令和元年度: 厚生労働省 社会・援護局 障害保健福祉部 企画課 2019.10.1

厚生労働省:年表

障害者福祉の主な歩み (平成30年版 障害者白書)







コロナ禍で…

◆コロナで失職1万人超
◆2次補正案31兆円 決定 巨額コロナ対策
◆学校に最低100万円支給 感染防止策や家庭学習支援
■コロナ禍〝雑感〟

《東京五輪・パラリンピック、ジェンダー、多様性、共生社会》

◆介護・保育・看護3%賃上げ方針


人材の確保と福祉サービスの質の向上を考える




■2020(令和2)年度は、
 新型コロナウイルス感染拡大防止対策で始まりました。


 中国の武漢市での感染発生は、あっという間に拡大し世界的な脅威となりました。感染拡大の防止には集団感染(クラスター)の抑止が重要だとして安倍首相は、2月27日に、学校の全国一斉休校の要請を表明。
 3月24日には、世界的な流行(パンデミック)への配慮から、東京オリンピック・パラリンピックの来夏への延期が決まり、4月7日には「緊急事態宣言」が7都道府県を対象に発出され、4月16日には全国レベルの宣言となり、2020(令和2)年度は新型コロナウイルス対策で始まりました。

 緊急事態宣言に伴い、店舗等の営業自粛や休業要請があり、各種行事やイベントの中止が相次ぎ、学校の休校や不要不急の外出自粛らの要請は長期化し、5月20に日本高野連は春の選抜大会の中止に続いて夏の甲子園大会の中止を決め、春も夏も中止は戦後で初めてとのことで、これらの影響は、観光業や生産、販売業だけでなく、各分野の経営及び事業の存続そのものに関わる甚大なものとなりました。

 人々の日常生活は否応なく一変し、それは政府が掲げる「働き方改革」のみならず、教育や福祉、医療等に関わる政策的な問題や課題を露呈したともいえます。こうした状況下で、どう対応していけばよいのかということが業種や分野に関係なく問われることになったわけですが、その前提として、やはり国及び各自治体の考え方や姿勢の在り方が重要であることを誰もが改めて感じたのではないでしょうか。

 日常の生活がいとも簡単に一変してしまうということを改めて思い知る一方で、新たな芽吹きやチャンスへの気付きもあり、それがまた新たな歴史の一コマとなっていくとも言えるようです。
 緊急事態宣言は5月25日に解除されましたが、教育・福祉・医療・雇用・「働き方」など今後の社会的状況を注視することはとても重要だと思います。


◆コロナで失職1万人超
 介護施設支援金 全事業所に拡大
  厚労省方針 
  朝日新聞 2020(令和2)年5月23日 (PDF)
 厚生労働省は、新型コロナウイルスに対応する介護事業所の一部に出している支援金について、全ての介護事業所を支給対象にできる枠組みとする方針を固めた。どの事業所も感染予防にお金がかかり、経営が悪化しているためだ。介護分野で2千億円超を来週閣議決定する政府の第2次補正予算案に盛り込むことで調整している。 

 4月の1次補正予算には介護事業所の消毒費用やマスク、手袋といった衛生用品の購入費用などの補助金が盛り込まれたが、対象は都道府県などから休業要請を受けた通所・短期入所系の事業所や、利用者や職員に新型コロナの感染者が発生した事業所や施設などに限られていた。

 2次補正では新型コロナに対応した医療提供体制整備などの都道府県に配る「緊急包括支援交付金」の使える対象に介護と障害分野を加えることで、全事業所を対象にできるようにする。全額を国費で負担する。この交付金からは、新型コロナの感染者が出た病院や介護、障害者施設の職員に最大20万円の手当を支払うことも予定している。

(石川春奈)


◆2次補正案31兆円 決定
 巨額コロナ対策 問われる実効性 
  朝日新聞 2020(令和2)年5月28日(1面)

 政府は27日、新型コロナウイルスへの対策を盛り込んだ総額31兆9114億円の今年度第2次補正予算案を閣議決定した。対策の規模は、第1次補正予算と並ぶ117.1兆円に上る。予算の全額を国の借金である国債発行でまかない、医療や雇用、中小事業者などの支援をさらに手厚くする。今国会に提出し、6月中旬ごろの成立を目指す。

(津阪直樹)

◆対コロナ 読み違え後手
 1次分の不満を穴埋め 
  朝日新聞 2020(令和2)年5月28日(2面)

 当初、政府は2次補正予算で巨額の経費を積むことには消極的だった。減収世帯への30万円給付を取りやめて10万円の一律給付を盛り込んだ1次補正予算案を4月30日に成立させたばかり。早々に大規模な2次補正に乗り出すことは、1次補正の不十分さを自ら認めることにもつながりかねなかった。だが、対策不足との不満は日に日に増した。

(西村圭史、津阪直樹)

遅い給付 いまだ届かず
 政府は第1次補正予算でも困っている人にお金を配ると約束していたのに、まだ届かないケースが目立つ。縦割りで情報を共有せず、緊急時にも手続きにこだわる「役所の論理」が優先されている。

 一律10万円を配る特別定額給付金は、26日時点で1388の市区町村が給付を始めたが、実際に届いた件数はまだ少ないとみられる。マイナンバーカードを使ったオンライン申請では問題が続出。13自治体がオンライン申請をやめている。
 働き手を守るはずの雇用調整助成金でも手続きは大変だ。相談件数は38万件を超えるのに申請は約5万1千件、支給決定は約2万7千件(26日時点)。厚労省は20日にオンライン申請も始めたが、1時間ほどでシステムトラブルがわかり受け付けを停止した。再開のめどはたっていない。

 第2次補正予算では、休業手当をもらえない中小企業の働き手がハローワークに直接申請できるようになる。窓口は人手不足もあって混乱気味で、十分対応できるのか心配される。
 中小企業や個人事業者向けの持続化給付金もスムーズではない。経産省は申請から2週間程度で支払えるとしていたが、多数の企業が手続きを待つ。フリーランス(個人事業主)の一部にも対象が広がるが、システム準備に時間がかかり、受け付け開始は6月中旬の見込み。
 政府系金融機関からの融資を待つ企業も多い。日本政策金融公庫と商工組合中央金庫には、新型コロナ関連で計約52万件の融資の申し込みがあるが、
決定は6割ほどだ。

(岡林佐和、新宅あゆみ、藤崎麻里)


 追加対策で1次補正予算の課題をどう解決?    朝日新聞をもとに作成
 1次補正予算の対策         課題             2次補正予算案の追加対策
 雇用を守る企業に配る雇用調整助成金  企業が休業手当を支払わない   労働者が直接申請できる給付金を創設
金額が足りない            日額上限を1人1万5千円に増額
 中小事業者向け持続化給付金  中小でももらえない例が続出    対象外だった一部のフリーランスやベンチャーにも給付
金額が足りない             家賃負担を支える給付金を新設
 1人10万円の給付金 オンライン申請のトラブルなどで支給に遅れ   オンラインシステムの性能増強
 地方に配る1兆円の
臨時交付金
  金額が足りない           2兆円増額
自治体の医療体制強化のための交付金   金額が足りない           2.2兆円増額

財政悪化 加速懸念
 今回の2次補正の効果について、野村総研の木内登英氏は、国内総生産(GDP)を1.4%押し上げると試算する。1次補正の分と合わせると、2.7%程度になる計算だ。木内氏は、「セーフティーネットの観点では相応の役割を果たしたとしても、景気対策としての効果はかなり小さい」と指摘する。
 経済活動が制約される状況が長引く中、専門家からは注文が相次ぐ。ニッセイ基礎研究所の矢嶋康次氏は「長期戦に向けて手を打ったとは言えるが、政策のスピード感はもっと上げるべきだ。手続きなどのデジタル対応は何よりも急ぐ必要がある」と話す。

 一方、財源の確保が置き去りにされ、財政悪化が加速することへの懸念も強まっている。 国と地方を合わせた長期債務の残高はすでに1100兆円を超える。政府は基礎的財政収支を25年度までに黒字化する目標を掲げてきたが、「見直しは避けられない。事態が落ち着けば、負担増の議論もすべきだ」(大和総研の神田慶司氏)との声が上がる。
 財政健全化が遠のけば、国際市場などで日本への信認が揺らぎかねない。政府は目先の危機対応に追われるが、収束にこぎつけた後には、重い宿題に向き合わざるを得なくなる。

(山本知弘)


◆学校に最低100万円支給 小中校・特別支援学校 3万6000校
 感染防止策や家庭学習支援 
  朝日新聞 2020(令和2)年5月28日

 新型コロナウイルスの影響で休校していた学校の再開にあたり、文部科学省は全国の小中高と特別支援学校約3万6千校に、1校につき最低100万円を支給する。感染防止策や家庭学習支援のためで、公立小中学校に教員3100人を加配する費用などを含め、27日に閣議決定された今年度2次補正予算案に総額約774億円を計上した。

 支給額は地域の感染状況に応じて加算するが、小規模校100万円、大規模校200万円、高校や特別支援学校300万円などを想定している。「3密=密閉・密集・密接」対策のため、換気用のサーキュレーターの購入費や空き教室利用のための備品購入費、消毒液や非接触型体温計などの追加購入費などを計上。
 家庭学習支援には、教材購入費や家庭との連絡体制を強化するための電話機増設などの費用を盛り込んだ。

 教員の加配は、最終学年の小6と中3が、少人数の学級に分かれ、優先的に学べるようにするための措置だ。夏休や放課後の補習にあたる学習指導員の6万1200人、スクールサポート・スタッフ2万600人も追加配置する。
 このほか大学などへの支援として、困窮学生に独自に授業料の軽減などを行う大学や高等専門学校などを支援するため約153億円を計上。遠隔授業のための学生らの通信料負担軽減や、モバイルルーターの整備などに追加で約73億円を盛り込んだ。

(宮崎亮、伊藤和行)


■改正社会福祉法が成立 (令和3年4月施行)
 地域共生社会の実現のための社会福祉法等の一部を改正する法律案(令和2年3月6日提出)
厚生労働省:法律の概要
<改正の趣旨>

 地域共生社会の実現を図るため、地域住民の複雑化・複合化した支援ニーズに対応する包括的な福祉サービス提供体制を整備する観点 から、市町村の包括的な支援体制の構築の支援、地域の特性に応じた認知症施策や介護サービス提供体制の整備等の推進、医療・介護の データ基盤の整備の推進、介護人材確保及び業務効率化の取組の強化、社会福祉連携推進法人制度の創設等の所要の措置を講ずる。
 ※地域共生社会:子供・高齢者・障害者など全ての人々が地域、暮らし、生きがいを共に創り、高め合うことができる社会(ニッポン一億総活躍プラン:平成28年6月2日閣議決定)



■2021(令和3)年1月7日、再度の緊急事態宣言
 昨年4月に続き、新型コロナウイルス対応の特別措置法に基づく宣言が出された
 政府は、東京・神奈川・埼玉・千葉の首都圏4都県知事の要請を受ける形で、新型コロナウイルス対応の再度の緊急事態宣言発出。
《宣言下での主な感染防止策》
●午後8時以降の不要不急の外出自粛の徹底。
●飲食店やバー・カラオケなどの営業は午後8時まで。酒類の提供は午前11時~午後7時までとすることを要請。
●出勤者数の7割削減を目指し、在宅勤務や交代勤務を推進。小中高校・大学、幼稚園・保育園は原則開く。
●イベントの開催、施設の利用制限(飲食を伴わず、「5千人」か「会場の収容率50%以下」のうち少ないほうを上限に)

■2021(令和3)年1月13日、緊急事態宣言 7府県を追加決定
 首都圏1都3県を対象とする緊急事態宣言を決定した時点で、政府は、首都圏以外の宣言に否定的であったが、感染の広がりで、全国知事会の要請もあり、1月13日に7府県(大阪、京都、兵庫の関西3府県と愛知、岐阜の東海2県、栃木、福岡)に対し、緊急事態宣言発出を決定。
 さらに国内の感染状況に加え、英国からの帰国者によるクラスターで新型コロナウイルスの変異が確認されたとして、宣言期間中の外国人の新規入国も一時停止。

■過料50万円以下で調整
 特措法改正政府案 緊急事態下の時短拒否  
朝日新聞 2021(令和3)年1月15日(1面)
 政府は、早期成立をめざす新型コロナウイルス感染症対応の特別措置法改正案について、緊急事態宣言下で事業者が都道府県知事からの休業や営業時間短縮の命令に応じなかった場合、50万円以下の過料を設ける方向で最終調整に入った。
 また、特措法改正案とともに提出予定の感染症法改正案では、入院を拒否した感染者に対する罰則も新設し、刑事罰として「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」とする方向で最終調整している。


■緊急事態宣言 「全国に拡大を」 日医会長、首相に  朝日新聞 2021(令和3)年1月15日(2面)
 菅義偉首相は14日、新型コロナウイスルスの感染拡大をめぐり、日本医師会など医療関係6団体の代表と首相官邸で意見交換。同会の中川俊男会長ら団体側は、緊急事態宣言の全国適用を検討するよう要望。首相は具体的な回答は避けたという。
宣言拡大「慎重に」
 14日の参院内閣委員会で、新型コロナ対策を担当する西村康稔経済再生相は、東北、山陰地方などを例に挙げ、「慎重に考えなければならない」と緊急事態宣言の全国への拡大には慎重な考えを示した。その上で、「感染状況次第では追加もある」と答弁。





■コロナ禍〝雑感〟
《東京五輪・パラリンピック、ジェンダー、多様性、共生社会》
 
 東京五輪は中止すべきとの声が高まり、専門家らも「今の状況でやるというのは普通はない」と開催を危惧する意見を表明するなかで、海外からの一般客の受け入れを断念し、会場を無観客にして強引ともいえる開催となり、五輪期間中と、それに続くパラリンピック開催の直前にも、緊急事態宣言期間の延長や対象区域を拡大する宣言が発せられる事態となりました。東京パラリンピックも全会場が原則無観客の開催となりました。

 開催予定を1年延期し、海外からの一般客の受け入れを断念しての無観客の五輪は史上初だそうです。1年の延期は「完全な形で開催するため」だったはずです。日本政府、東京都、五輪組織関係者、競技選手、一般市民等のそれぞれの思いはおそらく様々であり、簡単に五輪開催の是非を問うわけにはいきませんが、オリンピックとは何かを改めて考える機会にはなったのではないでしょうか。
 外国人の入国を制限し、競技会場を無観客にしての開催は本来の形ではないわけで、当初に掲げた「復興五輪」「コロナに打ち勝った証し」「安全安心な大会」などとは言い難い東京五輪・パラリンピックは歴史上ではどのような評価となるのでしょうか。

 オリンピックのことだけでなく、コロナ禍は、人々の生活に関わる歴史的・社会的に形成されてきたこれまでのものの見方や考え方を見直す機会にもなったと思います。

 東京五輪組織委員会の辞任した前会長の発言が、いわゆる「女は…」「男は…」という性差に関する「ジェンダー」論議を巻き起こしました。また男性から女性へ性別を変更し、女性として重量挙げに出場した選手もいるなど、性の多様性にも目が向けられました。ジェンダー問題は、障害者に対する偏見や差別の問題を考える視点にも通じ、偏見や差別の問題は人権の問題に通じることだと思います。
 多様化の時代といわれ、多様な人々が共に生きる「共生社会の実現」が政策課題に掲げられ、厚生労働省の取り組みの一つに「ダイバーシティの推進」があります。
 ダイバーシティとは、「多様性」を意味し、障害者・病人・若者も年寄りも、女性も男性も関係なく、誰もが多様な働き方の選択が可能な社会を目指す取り組みを推進するということだそうです。これまでの働き方を見直す改革の意義は大いにある思いますが、現実とのギャップは大きな課題だと思います。



◆介護・保育・看護3%賃上げ方針
  政府、来年2月から  
朝日新聞 2021(令和3)年11月13日
 政府は、介護職員や保育士、救命救急センターを設置する医療機関に勤める看護師、幼稚園教諭の賃金について、来年2月から月額約3%にあたる9千~1万2千円引き上げる方針を固めた。児童養護施設や放課後児童クラブ、障害者施設で働く人も同様に賃上げする。
 19日に発表する経済対策で打ち出し、補正予算に交付金を盛り込む。民間企業の平均を下回る介護・保育分野の賃金の底上げを図るねらい。子どもや障害のある人たちの教育や福祉の分野でも低賃金が課題となっている。

 介護、保育、看護の分野はサービスの価格を政府が決める「公的価格」。高齢者施設や保育所、病院といった事業所側の手元に「報酬」として入るが、公的価格を引き上げれば、現場で働く人たちの賃金の水準も上がりやすくなる。
 政府は来年2~9月分は交付金や補助金といった形で、賃上げに必要な予算を確保する。介護と看護の10月分以降については、価格を引き上げる「報酬改定」での対応を検討している。看護は、年末の報酬改定で財源確保を議論する。介護は臨時の改定を行う。
 内閣官房によると、ボーナスなども含めた賃金水準を月額に換算すると、2020年は介護職員が29万3千円、保育士が30万3千円、看護師は39万4千円。介護職員と保育士は、民間平均の35万2千円を下回っている。

(西村圭史、久永隆一、石川友恵)


◆「安倍カラー」内閣官房4分室 廃止
  「一億総活躍」「働き方改革実現」… 朝日新聞 2021(令和3)年11月13日
 政府は12日、複数の省庁にまたがる重要政策の調整を担う内閣官房の分室のうち、4室を廃止すると発表した。松野博一官房長官はこの日の記者会見で「岸田内閣の政策を推進していくため」と説明。
 廃止したのは、安倍政権下で設けた「一億総活躍」「働き方改革実現」「統計改革」「人生100年時代構想」の各推進室。松野氏は会見で「基本的な方針の策定を行ってから期間が経過し、具体的な政策の実施を行っている段階であり廃止した。政策の方向性の修正転換を意図したものではない」と述べた。

 分室は、内閣の重要政策に関する企画立案や総合調整を担う官房副長官補の下に首相の決定で置かれるもので、政権の「カラー」を反映する側面がある。7年8カ月余り続いた安倍政権では、政権発足時の23室から退陣時には40室まで膨張。続く菅義偉政権では一時的に41室となった。岸田政権では「新しい資本主義実現本部事務局」などを新設した。
 一方、業務の効率化などのため、感染症対応にあたってきた「新型インフルエンザ等対策室」と「国際感染症対策調整室」の2室を新型コロナウイルス対策の中心的な役割を担う「新型コロナウイルス感染症対策推進室」に統合した。

(永田大)

 

介護人員基準 緩和を検討
 ロボット活用 
来月にも実証事業   朝日新聞 2022(令和4)年3月19日

 政府は「入居者3人に職員1人」としている介護施設の人員配置の基準を緩和する検討に入った。2022年度に介護ロボットなどを活用した実証事業に取り組み、生産性の向上と人手に関わるデータを集める方針だ。介護事業者から「4人に1人」とする案も提示されるなか、業界には介護の質の低下や職員の負担増への懸念が広がっている。  (石川友恵)

人手不足背景に

 人員配置に関しては、政府の規制改革推進会議の作業部会で議論されてきた。実証事業は厚生労働省が進める予定。3月中に事業者を選び、4月スタートを見込む。
 ベッドから車いすに移るのを助ける介護ロボットや、洗濯や配膳といった補助的な仕事を担う介護助手を活用する。業務の生産性、ケアの質の確保、職員の働き方などへの影響を調べる考え。すでに実証中のセンサーを使った夜間の見守りも対象施設を広げる。

 24年度には3年に1度の介護報酬(政府が決める介護サービスの価格)の改定が控える。これに向けて方向性を検討していく。今回の実証で政府が参考としているのが、全国で有料老人ホームなどを展開する介護事業大手「SOMPOケア」(東京都品川区)の取り組みだ。心拍や呼吸数などが測れるセンサーを使って夜間の見守りをしたり、日々の食事や脈拍など体の状態を記録したデータをもとにケア内容を考えたり、介護にかかった時間を分析しながら自立支援につなげたりしている。

 同社は昨年末の規制改革推進会議の部会で、こうした技術などを生かせば、介護付き有料老人ホームの場合、職員1人で利用者4人に対応できると説明した。
 ロボットや介護助手などを活用し、介護の記録や配膳など身体にふれない「間接介護」の業務量を減らす。22年度中には、20年12月時点の業務量の約1割にまで抑え、補助でおく職員を除き「実質4・1対1」を達成できるという。
 背景にあるのが、厳しい介護の人手不足だ。厚労省の推計によると。介護人材は団塊の世代が全員75歳以上になる25年度に約35万人が、高齢者がほぼピークになる40年度には約60万人が不足するとされる。
 同社は「4対1」の人員配置であれば現状の2倍のマンパワーが創出でき、25年度の不足分を補えるとみる。藤崎基・取締役執行役員は「少しずつ着実にエビデンス(根拠)を積み上げ、24年度以降に条件つきで規制緩和できるよう進めてほしい」と話す。

現場は質低下を懸念
 ただ業界には、人員配置の緩和が職員の負担増や介護の質の低下につながらないか心配する声もある。
 SOMPOケアの提案は介護付き有料老人ホームを想定したもの。だが、介護施設の種類は様々で、より支援の度合いが高い人が入る特別養護老人ホーム(特養)などがある。運営する事業者の規模も異なる。

 2月7日の作業部会では、特養などが加盟する全国老人福祉施設協議会(老施協)が、限られた人材のなかで介護ロボットやITを使った現場の生産性向上は必要としつつ、「現状では配置基準の緩和は困難」との認識を示した。
 食事や排泄を含めて生活すべてに介助が必要な人もいる。職員は介助業務だけでなく、施設の防災や感染症対策などの研修を受ける必要がある。有給休暇の取得なども考慮しないといけない。実際には「2対1」の配置を前提に人員を確保しないと現場を回せない。

 老施協は「3対1」やそれ以上に減らす配置は「相当困難なレベル」で、実現できても条件が整った「特殊な場合」とみる。担当者は「緩和は丁寧で慎重な議論が必要。現時点では想像できない」と話す。
 日本介護福祉士会も「新たな業務負担になったり、利用者の変化に気づきにくくなったりすることはないか」との疑問を提示した。

 こうした議論を踏まえ、規制改革推進会議は2月17日に公表した中間とりまとめに、介護付き有料老人ホームを想定した配置緩和についての考え方を盛り込んだ。作業部会の委員を務める有識者から「一律で基準を変更するのは現実的でない」との指摘も出ており、将来的に特養などに広げるかは今後検討するという。



 老人施設での介護事業を、生産工場での生産品の製造と同じように考えるようであってはならない。ロボットやITの導入や活用はよいとしても、それが人員の配置基準の緩和を目的とするならば、それは人間的な文化にはそぐわないことだと思います。



◆高齢者施設で医師治療
   コロナ対応 厚労省、自治体に要請 朝日新聞 2022(令和4)年4月6日
 新型コロナウイルス感染症の「第6波」で、高齢者施設の入所者の入院が遅れたり、入院できても環境の変化によって急激に衰えたりすることが課題となったことから、厚生労働省は4日、すべての高齢者施設で医師による治療を受けられるように体制を整えることを自治体に求めた。介護と医療の両立が求められており、厚労省幹部は「介護現場の人手不足は深刻で、施設に医療チームが入る方が現実的だ」と話す。

 厚労省によると、施設で感染者が発生した場合、まず自治体が24時間以内に感染者の専門家らによる「感染制御・業務継続支援チーム」を派遣する。全ての施設で医師と看護師の派遣を受けられるように、施設か自治体が協力医療機関を確保する。
 一方、入院が必要な場合に備え、臨時医療施設の介護職員を増やすとともに、医療型の慢性期病院に積極的に入院を受け入れるように促すことも要請した。

(枝松佑樹、石川友恵)

 住み慣れた場所での療養へ 医療と介護 連携が要
 施設や自宅で生活していた高齢者が長期に入院すると、活動量が極端に減り、筋力の衰えや認知機能の低下が進んで、元の場所に戻れなくなることがある。こうした問題は、新型コロナが流行する前からあった。だが、高齢のコロナ感染者は重症化リスクが高い。命を守ることを重視し、感染を広げないための隔離にもなる「原則入院」が続いていた。

 「軽症なら、住み慣れた場所で療養した方が本人にとってよいのではないか」。そうした声が強まり、厚労省にコロナ対応を助言する専門家組織のメンバーらは3月、最適な療養場所を選ぶことが不可欠だと提言していた。
 ただ、クラスタ―(感染者集団)の発生を心配し、入院が必要だと考える施設もいまだに多い。施設側の不安を取り除き、入院すべきかどうかの判断や治療の開始を速やかにすることが重要になる。厚生労働省は施設へ支援チームを派遣する仕組みを強化することで、課題の解消を図ることにした。

 コロナはもはや、危機対応というより、通常の病気への対応に近づきつつある。医療と介護の連携によって、療養場所の選択肢を増やしていくことが、「7波」では求められている。

(編集委員・辻外記子)





人材の確保と福祉サービスの質の向上を考える
令和4年2月から福祉現場で働く職員の賃金を
3%程度(月額9千円)引き上げることについて


 福祉サービスの充実を図るには人材の確保は必須条件です。

 岸田政権は、2022(令和4)年2月から介護や保育、看護、障害福祉の分野の職員の賃金を3%程度(月額9千円)引き上げる方針を公表しました。しかしそれは職員の実質的な待遇改善にも人材の確保にも、よりよいサービスの提供にもつながらないように思います。
 


 障害者施設でのサービスや障害者の自宅でのサービスにかかる費用は、国が定める公定価格「障害福祉サービス等報酬」に基づいて国や地方自治体が事業者に支払うものです。(所得に応じて利用者が一部を負担する場合もあります)

 
 2014(平成26)年度当時の試算で財務省は、事業者に支払う公定価格の「障害福祉サービス等報酬」について、事業者が実際にサービスに使っている費用より公定価格のほうが高く、事業者の「もうけ」は過大で、企業の利益率にあたる「収支差率」が12%程度あり、介護事業者(8.7%)より多いとして、このお金をサービスの充実や職員の賃金に回せば、事業者への報酬を下げても障害者へのサービスの切り下げにはつながらないとして厚生労働省などと、2015(平成27)年度の事業者向け報酬を1%前後引き下げる方向で調整し、一方で、現場で働く職員の給料が月額1万円程度の賃上げになるように「処遇改善費」を付けるということにした経緯があり、現在に至っています。

 福祉・介護等に従事する職員の処遇を改善するとして、「処遇改善加算」「特定処遇改善加算」「処遇改善臨時特例交付金」
という形で続くことになるわけですが、本当に職員の待遇を改善し、人材を確保し、利用者に安定したよりよいサービスを提供するという考えであれば、事業者に支払う基本報酬を引き上げるとともにサービスの利用実績に応じて事業者に報酬を支払う現在の方式である日額制を改めるべきです。また常勤換算方式などという非常勤職員の雇用を前提とするような職員の配置基準も見直すべきです。



 介護職員の三つの処遇改善加算の一本化・簡素化、対象職員の拡大などを求める声が上がっている。6月28日の社会保障審議会介護給付費分科会に2022年度処遇改善等調査の結果が報告され、委員からこうした意見が相次いだ。厚生労働省は2024度介護報酬改定に向けて対応を検討する。 (榎戸新) 週刊福祉新聞 2023(令和5)年7月11日


 障害福祉報酬1.12%増
  
職員賃上げ 地域移行支援 改革案了承  朝日新聞2024(令和6)年2月7日
 障害福祉サービスの公定価格「障害福祉サービス等報酬」について、2024年度から3年間の改定内容が6日、決まった。人材不足を踏まえ、職員の賃上げなどで報酬全体を1.12%引き上げる。病院や施設から地域のグループホーム(GH)などに暮らしの場を移す「地域移行」も重点的に支援。虐待防止などへの対応も強化する。
 厚生労働省が同日、有識者会議に改定案を示し、了承された。

 障害福祉分野の職員の月給は平均29.8万円で、全産業平均より6万円以上低い(22年度)。同年度の経営実態調査によると、全事業所の平均職員数は19年度の前回調査から1.1人減り6.3人と、比較可能な16年度以降で最少だった。
 人材を確保できるよう賃金改善にあてる加算を見直し、対象も拡大。賃金体系を底上げするベースアップは、24年度に2.5%(月7500円)、25年度に2.0%(月6千円)をめざす。

 地域で生活できるようにするための支援も強化する。障害者の地域移行が遅れ、厚労省は26年度末までに22年度比で施設や病院で暮らす障害者を5%以上減らす目標を掲げる。だが、重度障害者や65歳以上の高齢者が増加する中で、地域への移行者数は09~12年度の年5千人前後から、18~21年度は年1500人前後と、減少傾向にある。
 このため改定では、すべての施設入所者に地域移行の意向確認を義務づけるなどの対応を強化。意向確認する担当者の配置など体制が未整備の場合、26年度から1人1日50円を減算する。        (関根慎一)












2022(令和4)年9月9日
国連障害者権利委員会 日本の取り組みを審査、勧告


審査、勧告をどう受け止めるか



 国連障害者権利委員会の審査・勧告について ≪審査、勧告をどう受け止めるか≫




◆障害者 地域への移行 減速の現実 朝日新聞 2022(令和4)年10月3日
 障害者権利条約の取り組み状況について、国連の委員会が初の対面審査を実施し、日本政府への勧告が9月に示された。障害者が施設から地域での生活に移る「地域移行」が進まない現状が課題として指摘され、当事者らから改善を求める声が強まっている。

国連の勧告の主なポイント
地域社会における自立した生活(脱施設化)と、インクルーシブ教育については緊急的な措置をとるべきだ
<強制入院>
障害者の強制入院によって自由の剥奪を認めるすべての法的規定の廃止
<精神科病院のあり方>
隔離・身体拘束、強制投薬など強制治療を正当化する法律への懸念
<脱施設化>
障害児を含む障害者の施設収容の廃止など
<インクルーシブ教育>
分離された特別支援教育をやめるため、すべての障害のある生徒が合理的な配慮と、必要な個別の支援を受けられるようにすることなど


障害者総合支援法等の改正について:厚生労働省
障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律等の一部を改正する法律の概要(令和4年12月10日成立 同月16日公布)




◆障害者入所 5%減目標
 政府 地域移行 想定より進まず 朝日新聞 2023(令和5)年2月28日
 施設や病院で過ごしている障害者数について、厚生労働省は27日、2026年度までに5%以上削減するという目標を決めた。地域での生活に移ってもらい、精神科で長期入院する患者も減らす。ただ、足元では重度や高齢の入所者が増えており、どこまで進められるかは見通せない。
 社会保障審議会(厚労相の諮問機関)の部会で示した。国は3年に1度、障害者へのサービス提供や支援に関する基本指針を見直している。

 今回の基本指針の期間は24~26年度。国連の委員会が昨年9月、日本では障害者の地域移行が進んでいないとし、精神科病院での無期限の入院禁止や地域生活への移行を目指す法的枠組みづくりなどを勧告したことを踏まえ、検討された。
 施設入所者は22年度(推計)に12万5千人。今回の目標では22年度末時点と比べて26年度末時点で5%以上削減する。精神病床での入院は、1年以上の長期入院患者数を20年度時点の約17万1千人から、26年度に約13万8千人に減らすことを見込んで、地域の基盤を整備する。
 施設の入所者数は11年度末の13万7千人から減少傾向が続くが、重度の入所の増加や高齢化が進んでいる。

 手厚い支援が必要な重度障害者は、13年3月時点の約5万人が、22年3月時点では約6万9千人に。65歳以上の高齢者は、同時期の比較で約2万3千人が約3万1千人に増えた。重度や高齢の障害者は、医療的ケアが必要な人も多く、地域で生活できる環境が整っていないところもある。
 こうした事情も背景に地域への移行者数は減少傾向にある。09~12年度は毎年5千人前後だったが、18~21年度は1500人前後。この水準のままだと、21~23年度の移行者の割合は4.1%にとどまる見込み。現行の指針の目標の6%以上も達成できなくなる。

 「精神障害当事者会ポルケ」の山田悠平・代表理事は「新たな指針は、国連の委員会から指摘されたことが反映されているとは思えない」と訴える。精神病床での1年以内の退院率の目標は91%と設定されたが、「これでは10人に1人が長期入院になってしまう。国際的にみると長期入院が多いと指摘された状況を認識してほしい」と話す。

(石川友恵)



厚生労働省:社会保障審議会障害者部会 第135回(R5.2.27) 資料1
 「障害福祉サービス等及び障害児通所支援等 の円滑な実施を確保するための 基本的な指針」改正後 概要(案)









障害福祉分野の最近の動向


厚生労働省
・障害福祉制度をとりまく状況
・令和4年度障害福祉サービス等報酬改定について
・令和3年度障害福祉サービス等報酬改定について
・障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援する ための法律等の一部を改正する法律の概要
・こども家庭庁の創設について

《障害者の就労・雇用に関する動向》
厚生労働省:令和6年以降 障害者の法定雇用率引き上げと支援策の強化について
厚生労働省:障害者の就労支援対策の状況












   教育・福祉の人材育成確保の重要性

   障害者福祉と社会福祉と社会保障


   社会福祉法人制度と障害者福祉の施策

   障害者(観)の変遷と古くて新しい課題

 
  神奈川県相模原市の障害者施設における殺傷事件/障害者施設「津久井やまゆり園」の再建をめぐる問題

   優生思想と強制不妊手術

   障害者雇用率 省庁が水増し 不適切算入





日本の障害児(者)の教育や福祉をめぐる問題、課題を考察し、今後を展望
田研出版 3190円  A5判 316頁














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