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障害者の就労支援を考える
2020.8.21/2020.11.8/2021.7.25/2024.5.31
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「障害者の雇用の促進等に関する法律(略称:障害者雇用促進法)」は、企業等に対して障害者の雇用を義務付け、雇用する労働者に占める障害者の割合が一定率以上になるように障害者雇用率(「法定雇用率」という。)を定めています。
この障害者雇用率制度は、企業の障害者雇用を促進する上で有効なものといえます。しかし雇用義務のある民間企業のうち、法定雇用率を達成している企業は半数に満たないという状況が続いています。
それは民間企業にとって法定雇用率の達成には課題も多いということだと思います。またこの雇用率の数字からは、就労している障害者の勤続状況(職場への定着状況)を知ることはできません。
障害者の法定雇用率制度について
民間企業における障害者雇用率の達成状況について
障害者の就労支援に関する現状
障害者の就労支援で留意すべき点
“働く質” と “生活の質 ”について
障害者の就労支援に向けた考え方
障害者の法定雇用率制度について
法定雇用率とは、労働者(失業中の人を含む)の総数に占める障害者である労働者(失業中の人を含む)の総数の割合で、その割合を基準に設定するもので、少なくとも5年ごとに、その割合の推移を考慮して政令で定めることになっています。
特殊法人、国及び地方公共団体における障害者雇用率については、一般の民間企業の障害者雇用率を下回らない率をもって定めることとされています。
平成30年4月1日から障害者雇用率は次のように改定されました。
<民間企業> 一般の民間企業2.2% 特殊法人等2.5%
<国及び地方公共団体>国、地方公共団体2.5% 都道府県等の教育委員会2.4%
この改定により、障害者を雇用しなければならない事業主の範囲が、従業員50人以上規模の事業主から45.5人以上規模の事業主に変わりました。また該当する事業主には次のような義務があります。
①毎年6月1日時点の障害者雇用状況をハローワークに報告しなければならない。
②「障害者雇用推進者」 を選任するよう努めなければならない。
※障害者雇用推進者の業務
・ 障害者の雇用の促進と継続を図るために必要な施設・設備の設置や整備
・ 障害者雇用状況の報告
・ 障害者を雇用した場合のハローワークへの届け出
行政の指導にもかかわらず障害者雇用に適正に取り組まなかった企業については、その旨を厚生労働大臣が公表します。
<法定雇用率の改定>
事業主区分 |
法定雇用率 |
改定前 |
平成25年4月~ |
平成30年4月~ |
平成33年4月までに |
民間企業
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一般の民間企業 |
1.8% ⇒ |
2.0% ⇒
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2.2% ⇒ |
2.3% |
特殊法人 |
2.1% ⇒ |
2.3% ⇒ |
2.5% ⇒ |
2.6% |
国、地方公共団体等 |
2.1% ⇒ |
2.3% ⇒ |
2.5% ⇒ |
2.6% |
都道府県等の教育委員会 |
2.0% ⇒ |
2.2% ⇒ |
2.4% ⇒ |
2.5% |
※法定雇用率制度は障害者の就労支援において有効なものといえます。雇用率の改定も必要だと思います。しかし雇用率を引き上げることが雇用を促進することになるとはいえないという理解認識が大切だと思います。
障害者雇用促進法制度の変遷
厚生労働省:障害者雇用率制度
民間企業における障害者雇用率の達成状況について
障害者白書の資料によれば、障害者の雇用義務のある一般の民間企業のうち、雇用率を達成した企業の割合は、平成20年44.9%、平成22年47.0%、平成24年46.8%、平成25年42.7%、平成26年44.7%、平成27年47.2%、平成28年48.8%というように、障害者の雇用は微増傾向にありますが、雇用義務のある民間企業で雇用率を達成している企業は半数に満たない状況が続いてきたことになります。こうした状況をどう見るかが重要です。注1)注2)注3)
注1)一般の民間企業の法定雇用率は、平成25年4月から2.0%に改定された。改定前は1.8%。
注2)平成30年版「障害者白書」の平成29(2017)年障害者雇用状況報告には、「法定雇用率を達成した企業の割合は、50.0%を超えた。なお、雇用されている障害者数については、全ての企業規模で前年の報告より増加した。」とある。
注3)平成30年8月、国の中央省庁や全国の自治体の多くが障害者の雇用数を水増し、法定雇用率への不適切な算入を行っていたことが発覚した。
企業に対して法的に障害者雇用を義務付け、毎年、雇用率の達成状況を公表し、障害者の就労支援策を講じているにもかかわらず、雇用義務のある企業で雇用率を達成しているのは半数に満たないという状況が続いてきたのはなぜでしょうか。
その原因はいろいろ考えられますが、障害者の雇用自体がむずかしい業種や経営形態もあるでしょうし、障害当事者の事情という問題もあると思います。そうした問題を考えるには、就労する側と雇用する側の両者の立場で考えるということが大切だと思います。
なぜなら障害者にとっては、就労が働く喜びや生活の充実につながるものでなければ意味がありませんし、企業にとっては、障害者の雇用が経営的にマイナスであっては困るはずだからです。
また障害者の法定雇用率の未達成状況が問題にされますが、障害者の雇用率を示す数字からは、障害者の職場への定着状況はわかりません。
障害者の就労・雇用には社会経済状況が大きく影響します。さらにその障害の状態にもよりますが、職場への定着がむずかしい現実もあるはずです。
◆企業の障害者雇用 7.9%増
18年 最多更新53万4千人 朝日新聞 2019(平成31)年4月10日
厚生労働省は9日、2018年に民間企業で働く障害者の人数が53万4769.5人になったと発表。前年よりも7.9%増え、15年連続で過去最多を更新した。18年4月から雇用が義務化された精神障害者が前年比34.7%増と高い伸びを示した。
厚労省が10万586社を対象に昨年6月1日現在で集計した。18年4月に企業の法定雇用率が2.0%から2.2%へと引き上げられた影響もあり、法定雇用率を達成した企業の割合は前年よりも4.1ポイント減少し、45.9%だった。一方、企業全体での雇用率は同0.08ポイント上昇の2.05%と、7年連続で最高を更新した。
(松浦祐子)
中央省庁・地方自治体が障害者雇用数を水増し
障害者の就労支援に関する現状
◆障害者の事業所 相次ぐ閉鎖 5カ所225人 突然失職 朝日新聞 2017(平成29)年10月2日(PDF)
障害者たちの働く場となる事業所で、経営が行き詰まって閉鎖される事態が相次いでいる。「助成金頼み」になりかねない構造が背景にある可能性もあり、厚生労働省が対応に乗り出した。
助成多い「A型」急増 国、監督強化 求められる経営努力
厚生労働省:就労継続支援A型事業所の経営改善計画書の提出状況等を公表します(平成30年3月14日)
厚生労働省は、障害者と雇用契約を結んで障害者の就労を支援する「就労継続支援A型事業所」の約7割が、清掃作業やパンの製造等による生産活動収支だけでは最低賃金を支払えず、サービス事業所の指定基準に違反していることを発表した。職員の人件費などに充てるための障害報酬(自立支援給付)から捻出して賃金を支払う事業所の例が多い。
厚労省が把握した事業所3036カ所のうち、71%の2157カ所で賃金が生産活動収支を上回る。こうした事業所に厚労省は経営改善計画書の提出を求めていたが、改善計画書の提出は1769カ所だけだ。
改善計画の提出を求められた2157カ所の事業所うちの61.4%が営利法人で、社会福祉法人は11.5%(249カ所)とある。
A型事業所は障害者と雇用契約を結び、最低賃金を支払う必要があるが、最低賃金を確保するだけの生産活動を維持するのは容易ではなく、事業所の閉鎖や障害者の大量解雇という問題が生じている。
◆障害者事業所7割 減収も
報酬改定受け経営調査 朝日新聞 2018(平成30)年4月24日
4月の障害福祉サービス報酬の改定を受け、事業所団体「きょうされん」が、事業所の経営に与える影響に関する調査結果を発表した。一般就労が難しい人を対象とする「就労継続支援B型」を手がける事業所351のうち、約7割の246が減収となる見込みという。今回の改定は全体では0.47%の増額。ただ、就労支援では一般就労への定着実績に応じた報酬体系の導入など、事業所の努力を促す内容も盛り込まれた。
小野浩常任理事は「成果主義的な改定で、精神障害で長時間働けないなど、障害の程度が重い人を支える事業所ほど苦しくなる」と主張。国に激変緩和などの措置を求めた。きょうされんは全国の事業所に改定の影響を尋ね、630事業所から回答を得た。事業所が行う761事業のうち、減収見込みは402事業だったという。
(佐藤啓介)
◆障害者就労支援 課税に戸惑い 朝日新聞 2018(平成30)年3月6日
NPO法人による障害者向けの就労支援について、国税庁が「原則、収益事業で納税義務がある」との見解を示した。全国の小規模作業所に不安が広がり、課税を不服として争う法人もある。作業所などの全国団体「きょうされん」(事務局・東京)は近く、国税庁長官に撤回を求める。
<NPO法人と課税>
特定非営利活動促進法により設立されたNPO法人は株式会社と違い、毎年の利益や解散するときの残余財産を構成員に分配できないが、利益を上げる事業は行える。
法人税は所得に課税するので赤字のNPO法人は課税されない。所得が年800万円以下のNPO法人の税率は中小企業と同じ15%。 |
国税庁は平成29年7月見解を発表。こうしたNPO法人は障害者と契約して役務を提供し、利用料を受け取る「請負業」との判断を示した。税法上、収益事業は請負のほか物品販売、製造など34業種に限られる。
国税庁の担当者は「NPO法人の障害福祉サービスは以前から収益事業だが、複数の税務署から相談があり、見解を示した」。
広島市の「つくしんぼ作業所」は国などの給付を受け、就労困難な知的障害者に働く場を提供。19~46歳の男女18人がクッキーを作るなどしている。2007年にNPO法人となった際、税務署から「収益事業でない」と説明を受けた。だが15年に一転して収益事業と指摘され、法人税や無申告課税など過去3年分で計約200万円を課された。
昨年4月、「運営はボランティアの支えもあり、福祉が目的で収益事業ではない」と、広島国税不服審判所に税の取り消しを求めて審査請求した。
◆障害者就労支援「課税適法」 朝日新聞 2018(平成30)年4月6日
障害者の就労を支援する広島市のNPO法人が、法人税の取り消しを求めた審判請求について、広島国税不服審判所は「(税務署長の)課税は適法」と請求を棄却した。NPOは提訴するか検討するとしている。裁決は3月29日付。
審判でNPOは「福祉目的で収益事業でない」と主張した。審判所は「収益事業の請負業」と判断し、収益事業から除外されるには「利益の相当部分から給与などととして支給することが必要」と指摘した。NPO代理人の税理士は「国などから障害者を経てNPOに入る福祉サービスの利用料は給与などの工賃にあててはならず、裁決は不当」としている。
厚生労働省:障害者の就労支援対策の状況<平成28年度平均工賃(賃金)月額の実績について>
障害者の就労支援で留意すべき点
障害があっても、就労支援により就職でき、相応の賃金が得られるようになればよいのですが、実際的にはそれがむずかしい場合もあり得るということも考えなければなりませ。それは就労する側と雇用する側の双方が妥協点を見いだしにくい事情を抱えているからです。
障害者の就労支援において留意すべき大切な点は、就労の意味を一般的な就労形態 (「企業就労」または「一般就労」という)の枠に当てはめた考え方だけでは無理が生じるということです。
障害があるから無理が生じるというのが不適切な言い方だとするならば、無理が生じるから障害があるということではないでしょうか。無理が生じないのであれば、障害はないということだと思います。
障害の内容やその程度状態によって就労の不利や制約を受けることは当然あり得ます。しかし人は誰もが個々人のさまざまな事情によって、あるいは職種によっては向き不向きがあるわけで、それと同じように
障害者の場合も考えなければならないと思います。
障害の内容によっては、働くということ自体よりもむしろ複雑な人間関係を伴う就労環境に問題がある場合も多いようです。したがってそうしたことに配慮した就労支援と職場環境を整えるということも大切です。
障害者の就労支援では、障害の内容やその程度状態に配慮する必要があるわけですが、働く権利は誰にもあり、その働き方にもいろいろな働き方があると思います。したがって、障害の内容やその程度や状態によってもいろいろな働き方があってよいはずです。そこに障害者の働く権利を保障するための就労支援の果たすべき専門性があり、いわゆる「福祉的就労」の場の果たす意味があると思います。
現状の就労支援に関する考え方は、「障害」を一括りにして、知的障害の場合などの障害の多様性を理解しているとは言い難い。むしろ理解しようとはしないといっても過言ではないようです。また一般的な企業就労に価値を置く
「就労」の考え方を一新し、いわゆる「福祉的就労」の意義や価値を尊重するような意識改革も必要ではないかと思います。
いずれにしても現在の障害者総合支援法による就労支援の考え方や支援の仕組みは実情に即しているとは言い難い。
“働く質” と “生活の質 ”について
働く場があるかどうか、生活に必要な収入を得ることができるかどうかは重要な問題です。しかし人が働くという意味には、単に働く場があり、収入が得られればそれでよいというだけではないものがあるはずです。そうした認識が障害者の就労支援では特に大切ではないかと思います。
人が働くとは、いわゆる生活の質(QOL)にかかわることです。
「生活の質」とは、人それぞれの生活習慣や価値観、人生観に基づくものであり、本来的には他人がその質のよしあしを推し測り評価するものではないと思います。あくまでもその人にとっての生活の質がどうかということが問題なわけですが、それは働く質の問題とも大きく関係するというところに障害者の就労を支援する大切な意味があると思います。
例えば職業的自立ということを働く質の問題として考えた場合、何よりもまず就労の場の確保が大切です。しかしそこでイヤイヤながら苦痛な思いで働くことを強いられるとしたら、果たしてそれは生活の質という面で職業的に自立した生活の実現といえるでしょうか。
経済的自立ということを働く質の問題として考えた場合、生活費として必要な収入を確保できることが大切です。しかし生活に足る収入が得られるとしても、その収入金額に不平不満を抱く日々であったり、計画的な金銭処理がむずかしいために無駄遣いを重ねるような日々を送るとしたら、果たしてそれは生活の質という面で経済的に自立した生活の実現といえるでしょうか。
障害者の働く権利と「福祉的就労」の意義
障害者の就労支援に向けた考え方
①就労する側と雇用する側の両者の立場で考える。
②就労は「生活の質」にかかわることであるが、就労の場があり、得られる賃金が多ければ、生活の質が向上するとは限らない。
③多様な職種があり、多様な雇用形態・就労形態があってよい。
④就労・雇用の継続性と安定性の確保を図るには、いわゆる「福祉的就労」「保護的就労」を含めた就労概念の拡大とその明確な社会的位置づけ及びそれに対する人々の理解を得るための啓発活動が重要となる。
⑤障害者総合支援法による就労支援事業の就労継続支援B型を利用希望する場合に必要な「就労アセスメント」の考え方はよいとしても、就労アセスメントの対象者の約7割は特別支援学校在学者であり、そのうち約9割が知的障害者であるという現状を考えれば、実効性のある円滑な支援のためにはもっと柔軟な仕組みにすべきである。注)
⑥障害者の就労に関する問題は基本的人権にかかわる問題であり、それは社会保障の問題である。福祉的就労と労働法との関係が問題となっているが、それは社会福祉及び社会保障の問題として考える。
注)
就労系障害福祉サービスにおける教育と福祉の連携の一層の推進について:文部科学省 事務連絡(平成29年4月25日)に次のようにある。
(抜粋)
1就労アセスメントの趣旨
就労継続支援B型は、年齢や体力の面で一般企業に雇用されることが困難となった者など雇用契約に基づく就労が困難である者に対するサービスであることから、特別支援学校等在学者が卒業後すぐに利用する場合には、就労移行支援事業者等によるアセスメントにより、就労面に係る課題等の把握が行われている者を対象としているところです。
そのため、特別支援学校等卒業後すぐに就労継続支援B型の利用を希望する場合(他の進路に就労継続支援B型も含めて検討している場合を含む。)、特別支援学校等在学中に就労アセスメントを受けた上で、最も適した進路に円滑に移行できるようにするとともに、就労継続支援B型を利用する場合には、一般就労への移行の可能性も視野に入れ支援を行うなど就労アセスメントにより長期的な就労面に関するニーズや課題等を把握した上で、卒業後個々の状況に応じた支援が受けられるよう、円滑な移行を図っていくことが重要です。
従って、就労アセスメントは就労継続支援B型の利用の適否を判断するものではありません。
2 実効性のある就労アセスメントの実施
平成28年4月に厚生労働省が全自治体に行った調査結果によれば、就労アセスメントの対象者の約7割は特別支援学校在学者であり、そのうち約9割が知的障害者となっており、障害のある生徒の多くが活用しています。
一方、就労継続支援B型の利用について、既に進路又は意向が決まった後に形式的なアセスメントを実施している事例など、アセスメントの趣旨が理解されていない取扱いがみられるところです。
各自治体、教育委員会及び特別支援学校等におかれては、実効性のあるアセスメントが行われるよう、就労移行支援事業者等と特別支援学校等が十分に連携し、その趣旨を踏まえて、卒業年次よりも前の年次も含め適切な時期に計画的に実施することを推進してくださるようお願いします。
3 アセスメント実施機関の拡大について
就労アセスメント実施機関は、就労移行支援事業所及び障害者就業・生活支援センターとしていますが、就労移行支援事業所に通所が困難など負担となる場合には、就労移行支援の施設外支援を活用して、特別支援学校等の校内等通所しやすい場所で実施することが可能となっています。
4 特別支援学校等における実習によるアセスメント
平成29年度から、特別支援学校等の高等部等の在学中に、一般企業や就労移行支援事業所における実習が行われ、特別支援学校等から本人、保護者、自治体や相談支援事業所にアセスメント結果が提供された場合、就労アセスメントを受けたとみなすことができることとしました。
5 留意事項
(2) 特別支援学校等における就労アセスメントの取扱い
就労アセスメントについては、例えば、特別支援学校の高等部における作業学習や校内実習を行動観察する場合のように、学習指導要領に定める各教科等の目標に基づき学校の定める指導計画に沿って、学校の教員の指導の下に行われるなど、学校の教育課程の中に位置づけられる場合には、同一の活動を授業及び就労アセスメントの双方として実施することも可能です。
平成28年4月1日
障害者の雇用の促進等に関する法律の改正法が施行されました
《改正内容》
1 障害者の権利に関する条約の批准に向けた対応
2 法定雇用率の算定基礎の見直し
3 障害者の範囲の明確化その他の所要の措置を講ずる
《公布日:平成25年6月19日》
施行期日:平成28年4月1日(ただし、法定雇用率の算定基礎の見直しは平成30年4月1日、障害者の範囲の明確化は公布日)
《改正法の概要》
雇用の分野における障害者に対する差別の禁止及び障害者が職場で働くに当たっての支障を改善する ための措置(合理的配慮の提供義務)を定めるとともに、障害者の雇用に関する状況に鑑み、精神障害者
を法定雇用率の算定基礎に加える等の措置を講ずる。
1.障害者の権利に関する条約の批准に向けた対応
(1)障害者に対する差別の禁止
雇用の分野における障害を理由とする差別的取扱いを禁止する。
(2)合理的配慮の提供義務
事業主に、障害者が職場で働くに当たっての支障を改善するための措置を講ずることを義務付ける。 ただし、当該措置が事業主に対して過重な負担を及ぼすこととなる場合を除く。
(想定される例)
・ 車いすを利用する方に合わせて、机や作業台の高さを調整すること
・ 知的障害を持つ方に合わせて、口頭だけでなく分かりやすい文書・絵図を用いて説明すること
→(1)(2)については、公労使障の四者で構成される労働政策審議会の意見を聴いて定める「指針」において 具体的な事例を示す。
(3)苦情処理・紛争解決援助
① 事業主に対して、(1)(2)に係るその雇用する障害者からの苦情を自主的に解決することを努力義務化。
② (1)(2)に係る紛争について、個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律の特例(紛争調整委員会による調停 や都道府県労働局長による勧告等)を整備。
2.法定雇用率の算定基礎の見直し
法定雇用率の算定基礎に精神障害者を加える。ただし、施行(H30)後5年間に限り、精神障害者を法定雇用率の算定 基礎に加えることに伴う法定雇用率の引上げ分について、本来の計算式で算定した率よりも低くすることを可能とする。
3.その他
障害者の範囲の明確化その他の所要の措置を講ずる。
施行期日:平成28年4月1日(ただし、2は平成30年4月1日、 3(障害者の範囲の明確化に限る。)は公布日(平成25年6月19日)
① 障害者に対する差別の禁止及び合理的配慮の提供義務について
◎ 障害者に対する差別禁止※1、合理的配慮の提供義務※2 を規定 【施行期日 平成28年4月1日】 。
※1 不当な差別的取り扱いを禁止。このため、職業能力等を適正に評価した結果といった合理的な理由による異なる取扱いが禁止されるものではない。
※2 事業主に対して過重な負担を及ぼすときは提供義務を負わない。
◎ 必要があると認めるときは、厚生労働大臣から事業主に対し、助言、指導又は勧告を実施。
今後、労働政策審議会障害者雇用分科会の意見を聴いて、具体的な内容は指針を策定。 なお、禁止される差別や合理的配慮の内容として、以下のものなどが想定される。
【差別の主な具体例】
募集・採用の機会
○ 身体障害、知的障害、精神障害、車いすの利用、人工呼吸器の使用などを理由として採用を 拒否すること など
賃金の決定、教育訓練の 実施、福利厚生施設の利用など、障害者であることを理由として、以下のような不当な差別的取扱いを行うこと
○ 賃金を引き下げること、低い賃金を設定すること、昇給をさせないこと
○ 研修、現場実習をうけさせないこと
○ 食堂や休憩室の利用を認めない など
【合理的配慮の主な具体例】
募集・採用の配慮
○ 問題用紙を点訳・音訳すること・試験などで拡大読書器を利用できるようにすること・試験の回答 時間を延長すること・回答方法を工夫すること など
施設の整備、援助を行う 者の配置など
○ 車いすを利用する方に合わせて、机や作業台の高さを調整すること
○ 文字だけでなく口頭での説明を行うこと・口頭だけでなくわかりやすい文書・絵図を用いて説明 すること・筆談ができるようにすること
○ 手話通訳者・要約筆記者を配置・派遣すること、雇用主との間で調整する相談員を置くこと
○ 通勤時のラッシュを避けるため勤務時間を変更すること など
② 苦情処理・紛争解決援助について
◎ 事業主は、障害者に対する差別や合理的配慮の提供に係る事項について、障害者である 労働者から苦情の申出を受けたときは、その自主的な解決を図るよう努める。
◎ 当該事項に係る紛争は、個別労働紛争解決促進法の特例を設け、都道府県労働局長が 必要な助言、指導又は勧告をすることができるものとするとともに、新たに創設する調停制度の対象とする。
* 必要があると認めるときは、当事者又は障害者の医療等に 関する専門的知識を有する者などの意見を聴くことが可能
③ 法定雇用率の算定基礎の見直しについて
◎ 法定雇用率の算定基礎の対象に、新たに精神障害者を追加 【施行期日 平成30年4月1日】。
◎ 法定雇用率は原則5年ごとに見直し。
⇒ 施行後5年間(平成30年4月1日~平成35年3月31日まで)は猶予期間とし、精神障害者の 追加に係る法定雇用率の引き上げ分は、計算式どおりに引き上げないことも可能。
※ 具体的な引上げ幅は、障害者の雇用状況や行政の支援状況等を踏まえ、労働政策審議会障害者雇用分科会で議論。
【法定雇用率の算定式】
身体障害者、知的障害者及び精神障害者である常用労働者の数 + 失業している身体障害者、知的障害者及び精神障害者の数/常用労働者数 - 除外率相当労働者数 + 失業者数 = 法定雇用率
【激変緩和措置の内容】
○ 平成25年4月1日~平成30年3月31日 身体障害者・知的障害者を算定基礎として計算した率(2.0%)
○ 平成30年4月1日~平成35年3月31日 身体障害者・知的障害者を算定基礎として計算した率と 身体障害者・知的障害者・精神障害者を算定基礎として計算した率との間で政令で定める率
○ 平成35年4月1日以降 身体障害者・知的障害者・精神障害者を算定基礎として計算した率
厚生労働省:改正法の概要(PDF)
◆障害者の就労支援議論 朝日新聞 2020(令和2)年11月7日
障害のある人がより働きやすい環境づくりを、雇用政策と福祉政策の両面から議論する検討会が6日、厚生労働省でスタートした。
重度障害者が働こうとすると介助を受けられなくなるといった問題など、障害者の就労の「壁」をどう取り除いていくかを議論する。
食事やトイレなど、生活全般の介護費の大半を公費でまかなう行政サービス「重度訪問介護」の利用は私生活に限られ、通勤を含めて働く時は対象外になっている。こうした雇用と福祉の制度のはざまで十分対応できていない問題や、障害者の就労を支える人材の不足などの課題についても議論。必要な法改正につなげる方針だ。
令和3年3月1日から
障害者の法定雇用率が引き上げになります
厚生労働省・都道府県労働局・ハローワーク:令和3年3月1日から 障害者の法定雇用率が引き上げになります。
<事業主区分>令和3年3月1日以降の法定雇用率の引き上げ
民間企業 2.2% ⇒ 2.3%
国、地方公共団体等 2.5% ⇒ 2.6%
都道府県等の教育委員会 2.4% ⇒ 2.5%
<対象となる事業主の範囲> 従業員43.5人以上に広がります
今回の法定雇用率の変更に伴い、障害者を雇用しなければならない民間企業の事業主の範囲が、 従業員45.5人以上から43.5人以上に変わります。
事業主には、以下の義務があります。
◆ 毎年6月1日時点の障害者雇用状況をハローワークに報告しなければなりません。
◆ 障害者の雇用の促進と継続を図るための「障害者雇用推進者」を選任するよう努めなければ なりません。
<参考>
◇令和5年 障害者雇用状況の集計結果 PDF
◇障害者の賃上げへ「脱福祉」の工場 朝日新聞2024(令和6)年3月20日
《障害者の就労・雇用に関する動向》
厚生労働省:令和6年以降 障害者の法定雇用率引き上げと支援策の強化について
厚生労働省:障害者の就労支援対策の状況
厚生労働省:障害者の就労支援について 平成27年7月14日 (PDF)
厚生労働省:障害者雇用対策
障害者の権利条約と「合理的配慮」について
知的障害と就労について
発達障害と障害者雇用制度
障害児者に関する相談窓口
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日本の障害児(者)の教育や福祉をめぐる問題、課題を考察し、今後を展望
田研出版 3190円 A5判 316頁
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